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こう言う文章は生成AIでは書けないだろうなぁ:読書録「さよなら、愛しい人」

こう言う文章は生成AIでは書けないだろうなぁ:読書録「さよなら、愛しい人」

・さよなら、愛しい人
著者:レイモンド・チャンドラー、訳:村上春樹
ナレーター:古屋敷悠
出版:早川書房(audible版)

「さよなら、愛しい人」
「さらば愛しき女よ」
…まあでも、
「Farewell,My Lovely」
には勝てませんな。

村上春樹訳では三度目?
もちろんオーディオブックでは初めてです。
オーディオブックで聴いて、
「いやぁ、この描写や表現はスゴいわ」
と改めて感心させ

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「子育て刑事」シリーズとかになるのかなw:読書録「育休刑事(諸事情により育休延長中)」

「子育て刑事」シリーズとかになるのかなw:読書録「育休刑事(諸事情により育休延長中)」

・育休刑事(諸事情により育休延長中)
著者:似鳥鶏
出版:角川文庫

妻が警察庁のキャリア課長。
夫は巡査部長で、夫の方が育休を取得して1歳の息子の面倒を見ている。
…という設定の連作ミステリー。(4篇収録)
法医学者をやってる夫の姉がナカナカ飛んだキャラで楽しいです。

ミステリーはミステリーでしっかりしてるんですが、作品のテーマは
「日本における子育ての厳しさ」
にある感じかな?
そもそも作者

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入門+α…くらいかな?:読書録「AI  DRIVEN」

入門+α…くらいかな?:読書録「AI DRIVEN」

・AI  DRIVEN   AIで進化する人類の働き方
著者:伊藤穰一
出版:SBクリエイティブ(Kindle版)

伊藤穰一さんのPodcast「JOI ITO変革への道」でChatGPTを取り上げてるパート(2023年4月)が面白かったので、ちょうどタイミングよく発売された本書を購入。
伊藤さんの話は分かりやすくて、全体の概念図を頭の中に入れるのにちょうどいいんですよね。
先端のところもチャン

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「自分」を縛るのは「自分」:読書録「コメンテーター」

「自分」を縛るのは「自分」:読書録「コメンテーター」

・コメンテーター
著者:奥田英朗
出版:文藝春秋

「トンデモ精神科医・伊良部一郎」シリーズ、17年ぶりの新刊。
…ですが、内容は相変わらず。
楽しませてもらいました。

基本的、精神科医としての伊良部は「知識と経験はある」。
彼のところに通ってくる患者たちは、「自分で自分に枠をはめてしまっている」ところがあってそれが症状の原因にもなっている。
その「枠」を意識させ、外すことが治療になるんだけど、

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2041年には76歳。さて、こう言う社会を楽しめるかな?:読書録「AI2041」

2041年には76歳。さて、こう言う社会を楽しめるかな?:読書録「AI2041」

・AI2041  人工知能が変える20年後の世界
著者:カイフー・リン、チェン・チウファン  訳:中原尚哉
出版:文藝春秋(Kindle版)

Googleの中国社長だった投資家「カイフー・リン」と、中国の新鋭SF作家「チェン・チウファン」が、現時点の技術革新の状況を踏まえて「20年後(2041年)」の社会を考察した作品。
10篇の短編を収められていて、その解説を含めて読むことで、技術革新の向こう

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久しぶりに読むと、やはりその「上手さ」に感心させられます:読書録「ぼんぼん彩句」

久しぶりに読むと、やはりその「上手さ」に感心させられます:読書録「ぼんぼん彩句」

・ぼんぼん彩句
著者:宮部みゆき
出版:角川書店

宮部みゆきさんが友人と作っている「BBK」という会で句会をするようになって、そこで披露された作品をベースに「短編小説」を書いてみた…という作品。
「BBK」はもともと「ボケ防止カラオケ」でカラオケをする会だったのが、今は「ボケ防止句会」にもなってるそうですw。

収められている作品は12篇。
それぞれ20〜30ページ程度の短編になっています。

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あの「上野千鶴子祝辞」を聞いた東大生たち…と言うのが興味深いw:読書録「東大生、教育格差を学ぶ」

あの「上野千鶴子祝辞」を聞いた東大生たち…と言うのが興味深いw:読書録「東大生、教育格差を学ぶ」

・東大生、教育格差を学ぶ
編著:松岡亮二、高橋史子、中村高康
出版:光文社新書(Kindle版)

コロナ禍になって、個人的に「格差」の問題は気になるテーマになっています。
ある程度のことは知識としてあると自負していたのですが、現実はもっと厳しいのだと言うことを、ニュース・報道だけではなく、痛感させられることもあって…。
個人のアクションとしてはNPO法人への寄付くらいしかできていないのですが、知

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個人的に大河ドラマ(どうする家康)の副読本になってます:読書録「足軽小頭仁義」

個人的に大河ドラマ(どうする家康)の副読本になってます:読書録「足軽小頭仁義」

・三河雑兵心得3 足軽小頭仁義
著者:井原忠政 ナレーター:柏野昌俊
出版:双葉文庫(audible版)

大河ドラマ「どうする家康」の先々週・先週放映で三方ヶ原合戦が描かれました。
夏目広次の死には泣かされた〜。
…と言うわけで、家康の部下が足軽から成り上がる姿を描くこのシリーズの「三方ヶ原合戦」のパートをaudibleで聴きました。

一言坂の戦〜二俣城の合戦〜三方原の合戦〜犀ヶ崖の戦い
…ま

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寡作な作者さんのようで、全然知らなかったんですが、かなりレベル高いです:読書録「残月記」

寡作な作者さんのようで、全然知らなかったんですが、かなりレベル高いです:読書録「残月記」

・残月記
著者:小田雅久仁 ナレーター:岡井カツノリ
出版:双葉社(audible版)

少し前に評判になったSF作品。(吉川英治文学新人賞、日本SF大賞受賞)
「月」をテーマにした短編集…というか、短編2篇と中編1篇ですね。それぞれ独立した作品になっています。
なんだろ〜な〜。
「SF」なんだけど、「純文学」寄り
って感じでしょうか。
良い作品でした。

1作目は「そして月がふりかえる」。
満ち

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志は高い本だし、岡田さんのスタンスは買います:読書録「教室を生きのびる政治学」

志は高い本だし、岡田さんのスタンスは買います:読書録「教室を生きのびる政治学」

・教室を生きのびる政治学
著者:岡田憲治
出版:晶文社

「なぜリベラルは敗け続けるのか?」「政治学者、PTA会長になる」の岡田憲治さんの最新作。
バリバリ「リベラル」の岡田さんですが、立憲のテイタラクに悩んで書いたと思われる「なぜリベラルは〜」では「リベラル」の課題について論じ、「PTA会長になる」では、自分が主体的に関与したPTA活動の中から、組織活動の現状や課題について具体的に論じています。

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「ミステリー」の部分は弱いけど、そこを楽しむ作品じゃないか:読書録「15歳のテロリスト」

「ミステリー」の部分は弱いけど、そこを楽しむ作品じゃないか:読書録「15歳のテロリスト」

・15歳のテロリスト
著者:松村涼哉 ナレーター:岩端卓也
出版:KADOKAWA(audible版)

「少年法」の厳罰化をテーマに展開するミステリー。
祖母と妹を殺された少年
兄が殺人を犯した少女
恋人を殺された記者
少年と記者の視点から交互に描かれるスタイルとなっていて、15歳の少年が「爆破テロ」を予告/実施する展開となります。
少年パートが「回想メイン」で、被害者家族である少年が<復讐>を

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リアル本で読むのがオススメw:読書録「ふしぎな中国」

リアル本で読むのがオススメw:読書録「ふしぎな中国」

・ふしぎな中国
著者:近藤大介 ナレーター:住谷哲栄
出版:講談社現代新書(audible版)

講談社の記者(一時期、講談社の中国の子会社のトップだったりもするけど)が中国の「今」を紹介する作品。
天安門事件以降、中国にこだわって追いかけてきた方のようです。
小泉訪朝に同行なんかもされてるようですから、ポジション的には保守寄りなんでしょうね。
ただ内容は「反中」「嫌中」ではなくて、結構フラット。

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まだ日本はここまで極端なことになってはいないと思いたいけど:読書録「『傷つきました』戦争 超過激世代のデスロード」

まだ日本はここまで極端なことになってはいないと思いたいけど:読書録「『傷つきました』戦争 超過激世代のデスロード」

・「傷つきました」戦争 超過激世代のデスロード
著者:カロリーヌ・フレスト 訳:堀茂樹
出版:中央公論新社(Kindle版)

岩田健太郎さんがFBで紹介されてたのを見かけて購入した作品。
「アイデンティティ至上主義」や「犠牲者至上主義」に対する強い危惧と批判を展開した作品です。
アイデンティティ至上主義・犠牲者至上主義
まあ、「マイノリティ」の立場や、「社会的不利益を被っている立場」を、その<立

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端正な描写力とどんでん返しの連続:読書録「黛家の兄弟」

端正な描写力とどんでん返しの連続:読書録「黛家の兄弟」

・黛家の兄弟
著者:砂原浩太朗 ナレーター:家中宏
出版:講談社(audible版)

前作「高瀬庄左衛門御留書」はナカナカ雰囲気のある作品だったと記憶してるんですが、こちらもまた…。

筆頭家老の黛家の三兄弟。
後継の長男、やや自分を持て余し、身を持ち崩した雰囲気を持つ次兄、大目付・黒沢家に婿に入る三男。
主君の後継者争いと、藩政の主導権争いの中、次席家老・漆原内記の陰謀に兄弟は過酷な決断を迫ら

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