「バトンタッチ」

会社に向かっていた。体が重い。当然だ。連日残業続き。

 退勤してから十時間も経ってない。なんだこれは。

 睡眠も睡眠といえない。仮眠だ。目を閉じて少し経ったらグッドモーニングだ。くそったれ。

 愚痴を吐いているうちに会社が見えて来た。嫌だ。マジで嫌だ。

 すると会社の出口から誰か出て来た。社員だ。夜勤担当だからか、一二回しか会った事がない。

 彼は僕に気がついたのか、会釈をしてきた。

 僕は頭を下げた。

 彼の疲労具合は顔色や歩き方から想像出来た。

 人間は基本的に夜に活動することには向いていない。そんな時間帯に彼は働いていたのだ。

 日中働けている僕なんてまだまだだ。燃えかす同然と化していた心に火が灯った。

 あとは任せろ。

 僕は心の底でそう言って会社の扉を潜った。

 やっぱ眠いし、仕事したくない。

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