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退院時点のADL自立度。病院と自宅における違い


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中生存者における入院リハビリテーション施設と自宅での日常活動能力の違い

📕Somerville, Emily, et al. "Differences in daily activity performance between inpatient rehabilitation facility and home among stroke survivors." Neurorehabilitation and neural repair 38.6 (2024): 403-412. https://doi.org/10.1177/15459683241246266
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, PMC (Full text)
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[背景・目的] 脳卒中患者はリハビリテーションサービスの最大の利用者グループの一つである。入院中のリハビリは日常生活動作が改善するものの、退院後の自宅での日常生活動作は困難な場合が多い。標準的な臨床環境と自宅でのパフォーマンスの違いはあまり理解されていない。目的:入院リハビリテーション施設(IRF)から在宅への移行期における活動パフォーマンスの違いをよりよく理解するために、我々は、同じ時点(退院)における2つの異なる環境(IRFと在宅)の日常活動パフォーマンススコアを調査した。

[方法] 無作為化比較試験のベースラインデータを用いた横断的解析である。参加者はIRFから自宅退院を予定している50歳以上の脳卒中生存者であった。機能的自立度測定とセクションGGコード(いずれも国際機能分類、障害、健康スコアに換算)をプロトコールに従い、まず自宅で、次に退院時にIRFで実施した(3日以内の間隔、順序はランダム化せず)。

[結果] 57人の参加者のうち、自宅での活動スコアはIRF退院時のスコアより有意に悪かった。40%以上の参加者の退院時スコアは、シャワー/浴槽移動、歩行、階段の昇り降りについて、障害なし~軽度であったが、自宅訪問時のスコアは、これらの活動について中等度~完全な障害を示していた。スコアに最も差があったのは、シャワー/浴槽移動(中央値差1.5、95%CI 1.00-2.00)と階段昇降(中央値差1.50、95%CI 1.00-2.00)であった。

図は、ICF(国際生活機能分類)スコアを用いて、入院リハビリテーション施設(IRF)での評価と退院後の自宅での評価を比較したボックスプロットである。各活動におけるICFスコアは、自宅評価時の方がIRF退院時よりも有意に高く、すべての活動でP ≤ 0.001の統計的有意差が見られたことを示している。

[結論] この結果は、リハビリテーション施設内での評価が、実際の生活環境での機能パフォーマンスを完全には反映していないことを示している。自宅環境では、環境要因や家庭内の障壁が影響し、活動の独立性が低下することが多いことがわかる。この知見は、退院後の支援計画やリハビリテーション戦略の改善に役立つであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

“生活混乱期” という言葉があり、覚えておきたい言葉である。

✅ 生活混乱期とは? 
・病院を退院後の生活期の中でも,退院直後はとくに生活混乱期と呼ばれる。
・この時期は,病院と在宅との環境の違いにより,転倒や活動性の低下が起こりやすく,機能レベルは変わらないが,日常生活レベルは低下するものが多いため,在宅生活への環境適応を考えながら生活する時期である。

📗小笠原正:プランニングとモニタリング, [新版] 訪問リハビリテーション実践テキスト. 一般社団法人 日本訪問リハビリテーション協会 (編), 青海社, 東京, 2016, pp. 155-158.

実際、僕たちの研究グループの調査において、退院直後が最も危険なタイムポイントであることが明らかとなった。

✅ 退院直後は転倒にとって最も危険なタイムポイント
- 後方視的に転倒,福祉用具貸与,住宅改修の有無を退院から180日まで30日毎に調査し,各時期の比較を行った.
- その結果、転倒件(42.9%),福祉用具貸与(72,.2%),住宅改修(61.5%)ともに退院から30日以内に最も件数が多く、その後漸減、後半90日間では発生件数が極端に少なくなった。

📕海津陽一, 他. 生活混乱期における訪問リハビリテーションの役割と効果: 転倒, ADL 自立度, 活動性に着目して. 地域リハビリテーション 15.2 (2020): 117-122. >>> site.

今回の抄読研究は、ほぼ同時点で評価したにも関わらず、病院内のADLと比較して、自宅でのADLが有意に低くなることを明らかにした。
退院直後は、まさに、“生活混乱期” と呼ぶに相応しい時期である。
この時期において、リスクの高い患者に対しては、間髪置かない介護サービスの利用が求められる。
「帰ってから考えます」、そんな悠長なことを言っている場合ではない、かもしれない。

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