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扁平足の歴史


📖 文献情報 と 抄録和訳

数世紀にわたる扁平足の歴史:現在の保存療法と手術療法の背景

📕Biz, Carlo, et al. "Flatfoot over the centuries: The background of current conservative and operative treatments." International Orthopaedics (2023): 1-12. https://doi.org/10.1007/s00264-023-05837-3
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■ 二足歩行を獲得した366万年前;ヒトだけが縦アーチをもつ
・2016年ハタラらは鮮新世のヒトが二足歩行を獲得したと仮定し、1977年にタンザニアのレトリで発見された足跡の研究に基づいた結論を発表した(📕Hatara, 2016 >>> doi.)。これらの足跡は約366万年前にさかのぼり、アウストラロピテクス・アファレンシスによるものと広く考えられている。
・現生人類の足の骨は、二足歩行を可能にするために体重を支えることができる強い構造である。チンパンジーなどすべての霊長類は横アーチを持つが、ヒトだけが縦アーチを持つため、ヒト以外の霊長類は解剖学的にも機能的にも扁平足であることが認識されている 。

■ 320万年前の扁平足:ルーシーの化石
・1974年、ドナルド・ヨハンソンによってエチオピアのハダル遺跡で発見された "ルーシー"の部分骨格。
・この骨格の年代は約320万年前で、頭蓋骨は小さく、高さは1.07m、体重はおそらく29kgから45kgであった。
・このルーシーの化石は、アディス・アババにあるエチオピア国立博物館に保管されている。
・アウストラロピテクス・アファレンシスの骨について行われた研究によって、「ルーシー」は扁平足であることが判明した(📕DeSilva, 2010 >>> doi.)

■ 紀元前1世紀の扁平足:歴史上最も古い扁平足の表象のひとつ
・紀元1世紀、トラヤヌス帝(イタリカ紀元53年~セリヌンテ紀元117年)の治世にエフェソスの町で、大理石の道に扁平足の絵文字が刻まれた足跡が発見された
・この道は、アルテミス神殿へと続く神聖な道の一部として、大劇場とケルスス図書館へと続いていた
・私たちの知る限り、この刻まれたピクトグラムは、おそらく歴史上最も古い扁平足の表象のひとつである
・同じ時代、ヒポクラテスに次ぐ古代ギリシアで最も有名な医師であったガレンは、扁平足について、正常な足の解剖学的構造からの逸脱として初めて記述し、患者を「λειοποδες(リオポテス)」(滑らかな足を持つ人々)と特徴づけた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「扁平足で足が疲れちゃって」

よく聞く訴えの1つである。
もしかしたら、300万年以上も前から、同じ訴えがあったかもしれない。
今回抄読した論文には、そのような歴史的な背景が綴ってあった。

月をみて、ときどき思うことがある。

この月を、たとえば戦国時代の武将たちも見ていたんだ。
いまのぼくと同じように。同じような見え方で。地上の様子(建物、電気など)は変わってしまっていたとしても、見上げるこの夜空は、ほとんど変わらない見え方で。
そして、この同じ景色を見ている、という共通点によって、信長と、秀吉と、家康と、名も知れぬ名将とリンクしている気がする。彼らは、いったいどんな気持ちでこの月を眺めていたのだろう。もしかしたら、明日死ぬやもしれぬ決戦の前に、見ていたかもしれない。世界は、横断的にも、縦断的にも、無限に広がっていて、自分自身のこの限定的な人生というのは、本当に些細なものだなぁ。

という感じで。
歴史を振り返るというのは、どういう意味があるだろう。
科学的発展の軌跡、巨人の肩の理解、新たなアイデアの創出…、色々ある。
でも、ぼくは思うのだが、単純にロマンがある。
300万年以上も前の人たちだって、扁平足と向き合い、戦っていたかもしれない。
そう思うだけで、心に風が吹き抜けるように感じるのだ。
歴史の窓を開け放ちたい。

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