手術と手袋の歴史。この100年でこう変わった
📖 文献情報 と 抄録和訳
整形外科手術における手術用手袋の不思議な歴史(その1):手袋なし、手洗いなしから整形外科手術における綿手袋の導入に至るまで
[背景・目的] 18世紀、19世紀、20世紀初頭の手術用手袋の出現を評価することが目的である。
[方法] 資料と方法まず図面や絵画を用い、次に1830年(写真発見日)以降の書籍や外科・麻酔科医の医学報告書に掲載された歴史的写真を使用した。リスターとパスツールが提唱した無菌・防腐技術の理解の変化に対応した時代の手袋の有無を写真で確認した。
[結果] 手袋の材質には変遷があったが、外科医は長期にわたって手袋に大きな抵抗感を抱いていた。材質については、グッドイヤー社によるラテックス導入以前は、羊の盲腸、綿、絹、皮、生ゴムが使用されていた。外科医の場合、手袋は当初、劇場スタッフや外科医の手を感染から守るために導入されたのであって、患者を守るためではなかった。多くの外科医が手術用手袋の進化に貢献し、手袋の使用は発見というよりむしろ進化の過程であった。外科医が写真に手袋をしている確率は、
■ 1860-1870年(リスターとパスツールの時代)には0%
■ 1890年には5%
■ 1900年には28%
■ 1910年には42%
■ 1920年には48%
■ 1930年には58%
■ 第二次世界大戦中には75%
■ そして1950年にのみ100%に達した。
[結論] 1920年には手袋の使用が日常化したとする報告もあるが、実際には1939年まで外傷外科医の約30%が手袋を着用していなかったという。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
熟練の外科医は、レントゲン画像を見たときに、病巣や重要な箇所が浮かび上がって見えるという。
もちろん、実際にレントゲンがそのようになっているというわけではない。
それまでの経験や知識に裏打ちされたデフォルメ(強調)画像が、その外科医にだけは見えているのだ。
このように、現実への意味づけが、現実の見え方に汎化されることを『理論負荷』と呼んだりする。
感染や衛生観念について、この100年で劇的に変わった。
それが、この手袋の歴史を学ぶことで感じ取ることができる。
何せ、100年前は何もしていなかった、0%だ。
それが、1950年には100%となり、現在に至るまで、手袋の材質や使い捨てに関する観念も変わってきている。
まさに、目に見えないミクロな感染物質を、理論負荷によって見える化してきた歴史とも言える。
そして、今。
『マスク』の側面においても、劇的に世の中は変わってきた。
数年前まで、常時マスクをしている医療者は、少なかった。
今では、一般市民までもが、常時マスクをすることがデフォルトになった。
そして、それによって防がれている感染があることは事実だ。
嫌だから、怖いから、目を背ける?
否。
嫌なものほど、怖いものほど、真正面から見ろ、知り抜け。
そして、自らの、人類の血肉(理論負荷)にするのだ。
これまでだって、そうやってきたんだから。
力強く生きたい。
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