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高齢者の施設入所の関連要因


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者の施設入所と関連する要因: ドイツにおける老年期(D80+)」の全国代表調査に基づく結果

📕Hajek, André, Razak M. Gyasi, and Hans‐Helmut König. "Factors associated with institutionalization among the oldest old: Results based on the nationally representative study ‘old age in Germany (D80+)’." International journal of geriatric psychiatry 39.5 (2024): e6099. https://doi.org/10.1002/gps.6099
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[背景・目的] ドイツの80歳以上の高齢者(全標本および性別による層別化)における施設入所と関連する因子を検討すること。

[方法] デザイン:ドイツの80歳以上の個人を含む全国代表的な'Old Age in Germany (D80+)'(分析標本:n = 9572人)のデータを使用した。施設入所(民間生活と施設入所の比較)がアウトカム指標となった。書面面接では、2020年11月から2021年4月にかけてデータ収集が行われた。サンプル全体(性別でも層別化)の多重ロジスティック回帰を適用した。

[結果] 分析標本では、参加者の10.2%(95%信頼区間:9.2%~11.3%)が施設入所者であった。
■ 高齢者の施設入所の関連要因
女性であること(OR:2.02、95%CI:1.08~3.80)
90歳以上であること(80~84歳と比較、OR:1.67、95%CI:1.17~2.40)
結婚していないこと(例えば、結婚していることと比較して独身であること: OR:14.06、95%CI:6.73~29.37)
高学歴(例:低学歴に比べて高学歴: OR:1.88、95%CI:1.25~2.84)
より良好な自己評価による健康状態(OR:1.32、95%CI:1.07~1.62)
より大きな機能障害(OR:15.34、95%CI:11.91~19.74)

性で層別化した回帰も行ったが、ほとんどが同様の結果を得た。

[結論] 本研究は、ドイツの高齢者における施設入所のリスクについて、いくつかの社会人口統計学的因子(特に、独身などの婚姻状況)と機能障害の役割を強調した。この研究は、機能低下が施設入所と関連する主な要因であるという、より若いサンプルでの研究結果を裏付けるものである。機能低下は修正可能かもしれないので、機能的能力を維持するための努力が重要かもしれない。この知見は、早期介入や予防努力の指針となり、医療資源を効果的に配分し、自立した生活を支援する政策を形成するのに役立つ可能性があるため、関連するグループ(臨床医や政策立案者など)にとって重要である。縦断的データを用いたさらなる洞察が望まれる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ドイツにおける高齢者の施設入所の関連要因6つが明らかとなった。
この関連要因が、どうして施設入所の理由となるのか。
本文の考察を以下にまとめてみた。

■ 女性であること
・女性が高齢者施設に入所する確率が高い理由は、再婚率が低く、夫に先立たれることが多いためである。
・また、女性は家族に負担をかけたくないという感情が強く、私的な介護を受けるよりも施設に入所することを選びやすい。

■ 90歳以上であること
・90歳以上の高齢者は、健康状態の悪化や自立した生活が困難になることが多いため、施設に入所する確率が高い。
・さらに、この年齢層では施設入所が一般的な生活形態と見なされることが多く、抵抗感が少ないことも要因となる。

■ 結婚していないこと
・独身者は結婚している人に比べて社会的ネットワークが弱く、家族からの私的な介護を受ける可能性が低いため、施設入所のリスクが高い。
・特に男性の独身者はこの傾向が強い。

■ 高学歴
・高学歴の人は、経済的に安定していることが多く、質の高い施設での生活を選びやすい。
・また、長期的な介護の準備が整っていることが多く、施設入所を前もって計画している場合が多い。

■ より良好な自己評価による健康状態
・自己評価が良好な高齢者は、自立していると感じ、健康問題の認識が遅れることがある。
・このため、突然の健康悪化に対応できず、結果として施設入所することが多い。
・また、自己評価が良好な女性は、家族に負担をかけたくないという理由で早めに施設入所を選ぶことがある。

■ より大きな機能障害
・機能障害が大きい高齢者は、日常生活を自立して行うことが困難であり、介護が必要となるため、施設入所のリスクが非常に高い。

この考察から考えるに、施設入所の適応が高い方が、例えば低学歴であるために適切な施設入所に向けた計画立てが難しい場合や、経済的な理由によって施設入所が困難になっていることが考えられる。
それらの場合には、医療従事者や介護保険のサポートのもと、適切な住居選択をすることで、さまざまな負担が軽減されるかもしれない。
病院に勤める僕としては、これらの因子に当てはまる患者さんの退院支援には注意を払いたい。

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