脳卒中後の膝関節過伸展4つのパターンとその要因
📖 文献情報 と 抄録和訳
慢性脳卒中患者の片麻痺歩行における膝過伸展パターンの分類と関連障害の検討
[背景・目的] 脳卒中後の片麻痺歩行では、動作パターンや筋活動にかなりのばらつきが見られ、特に立脚相における膝の過伸展が顕著である。既存の研究では、主に関節角度やモーメントに求心性がある。しかし、その根本的な原因は不明なままである。そこで、膝関節過伸展の原因について、時間的・持続的要因に基づく新たな視点から検討した。
■ 研究課題:膝関節過伸展の有無の時間的・持続的な差は、特定の運動機能の低下に起因するのか?
[方法] 3次元カメラシステムを用いて、快適な速度での裸足歩行を撮影した。膝関節過伸展のスコアは、4つの立脚相(第1ダブルサポート、DS1;早期片脚立脚、ESS;後期片脚立脚、LSS;第2ダブルサポート、DS2)それぞれにおける膝関節過伸展の有無の時間-持続時間因子を指標とした。
これらのスコアはクラスター分析に用いられた。各膝過伸展クラスターを特徴づける分類および回帰木分析では、下肢および体幹の運動機能、筋力、痙縮の臨床的測定値を説明変数として用いた。
[結果] 歩行時に膝過伸展を示す片麻痺性慢性脳卒中患者30名を対象とした。
■ 4つの膝関節過伸展パターン
4つの膝過伸展クラスタが示された: Momentary(ほとんど過伸展なし)ESS-LSS、ESS-DS2、Continuous(DS1-DS2)。
■ 膝関節過伸展パターンと分類回帰木(CART)モデル
膝関節屈曲筋力は、過伸展時間が短い群(ESS-LSSとMomentary)に比べ、長い群(ContinuousとESS-DS2)では低かった。
[結論] 本研究は、膝関節過伸展を伴う4つの片麻痺性歩行パターンを時間-持続時間因子に基づいて分類することに成功し、特定の機能的身体障害を理解し対処するための貴重な視点を提供した。これらの知見は、膝関節過伸展を伴う歩行の改善を目指す際に、関連する身体機能に着目するための指針を提供し、治療方針の決定の参考となることが期待される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
膝関節過伸展、膝ロッキング、これは主に脳卒中者の歩行においてみられる代表的な跛行の1つである。
そして、この膝過伸展は、歩行速度を低下させ、歩行効率を低下させ、歩行時のエネルギー消費を増大させ、膝関節痛を引き起こす可能性があり、さらに歩行が非対称になるため、外見に影響を及ぼす可能性がある(📕Geerars, 2022 >>> doi.)。
すなわち、この跛行は問題であると解釈される。
今回の抄読研究は、この膝関節過伸展のパターン、そしてその機能上の要因を調査した。
その結果、4つの膝関節過伸展パターンが明らかとなり、膝関節屈曲MMT、足底屈の痙縮(MAS)、体幹機能(TIS)によって膝関節過伸展の出現パターンが異なることを示した。
この結果により、膝関節過伸展と機能上のリンクの一部が明らかとなり、臨床思考に大いに役立つことだろう。
そして、個人的に気になるところとしては、この先の部分で、『その跛行を修正すべきか否か』である。
例えば、膝関節伸展筋力や足関節底屈筋力が極端に低下している患者において、膝関節ロッキングを外すということは、すなわち『膝折れ』を示し、転倒という膝ロッキングを呈していることにより生じる問題より、更に大きなリスクに見舞われることになる。
この場合には、膝ロッキングは外さないほうがいい、という判断になるだろう。
この判断基準を、どのような機能評価結果に置くか、ここは気になるところである。
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