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認知症研究のプライオリティ。次の優先領域はどこだ?

📖 文献情報 と 抄録和訳

認知症研究の国際的な優先順位を比較する

📕Logan, Monica, et al. "Comparing international dementia research priorities—Systematic review." International Journal of Geriatric Psychiatry 37.12 (2022). https://doi.org/10.1002/gps.5836
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[背景・目的] 研究の優先順位付けは、利害関係者の意見を集約して、最も緊急性の高い研究課題を決定することを目的としています。優先順位設定は、研究費、開発、政策に関わる意思決定に影響を与える。我々は、国際的な医療制度で公表されている認知症研究の優先順位設定作業を比較した。

[方法] 学際的で国際的な4つの電子データベースを用いて、関連する研究を検索した(2010年から2021年まで)。優先順位を抽出し、主題分析によりコード化し、カテゴリーに分類した。9CTGP(Nine Common Themes of Good Practice)とREPRISE(Reporting guideline for priority setting of health research)のチェックリストを用いて、方法論と報告の質をそれぞれ評価した。

[結果] 265のタイトルから、10の優先度を検討した研究(参加者1179名、優先度147)が含まれた。研究は4大陸にまたがり、大多数は認知症の人とその介護者を優先順位設定プロセスに含んでいた(68%)。ベストプラクティスの指標をすべて満たしている論文は 1 つだけであった。また、9つの論文において、優先事項の参加、実施、評価に関する問題が明らかにされています。

✅ このレビューにおける認知症研究の優先順位
🥇介護者(25%、n=37)
🥈支援(24%、n=35)
🥉認識・教育(16%、n=24)
④薬剤・介入(14%、n=21)
⑤診断(8%、n=12)
⑥病理(6%、n=9)
⑦研究デザイン(5%、n=7)
⑧予防(1%、n=2)

優先順位は地域によって異なり、低・中所得国では認識・教育の優先順位が高く、高所得国では介護・支援に優先順位が高かった。

[結論] 最も重要であると考えられるテーマについて、いくつかの共通点があり、主要な優先事項が特定された。優先順位設定のプロセスと報告を改善する余地がある。優先順位は文脈によって異なるため、ある医療環境に特有の優先順位が他の医療環境に適用されるとは限りません。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

さて、問題。
臨床研究は、『誰のためのもの』か?
・・・。
いろいろと答え方はあるだろうと思う。
教科書的には、『学術体系(理学療法士なら医学界とか理学療法界とかのこと)』のためだ。
例を考えてみよう。
・自分がとある治療法Aの劇的な効果を発見した
・学術体系において、まだ治療法Aの効果は報告されていない
以上のようなとき、臨床研究をして論文を発表することは、全然自分のためではない。
なぜなら、自分自身はすでにその治療法Aの劇的な効果を知っていて、使い続けることができるから。
でも、それじゃ職人だ。
自分1個の人生が終わったとき、その治療法Aの劇的な効果、を知るものはいなくなる。
そこで、臨床研究、論文だ。
科学的な方法で治療法Aの効果が証明され、論文として公表されたとする。
すると、隣の席に座っている同僚から、ブラジルの理学療法士に至るまで、その治療法Aの劇的な効果について知ることになる。
すると、世界中で治療法Aの劇的な効果が生かされる。
さらに凄いことには、論文は『時間』を超越する。
一度発表された論文は、100年後にもそのまんまの形で、読者の手に届く。
2022年の現在、1922年の論文が簡単に読めるように。
つまり、臨床研究や論文とは、とても広く言えば世の中のため、世の中を変えるためのもの。
そして、その考え方でいけば、世の中に用いられなければ意味のないものだ。

そういった理由から、臨床研究のテーマは、世の中で注目されることや、需要の高い領域で行われる必要がある。
その研究テーマが優れたものかどうかを確認するチェックリストに『FINER』がある。

その5項目リストの中で、新規性(Novel)、切実さ(Relevant)、興味深さ(Interesting)は世の中の需要に関する項目で、それらは一言でいえば、研究の『必要性』だ。
そして、これが重要なことなのだが、必要性は移ろう。
主に技術進歩と、巨人の肩の漸進、によって。
いま、技術はグングン進歩し、電話だけではなくビデオ会話など遠隔医療が発達してきた。
これが、介護者との良質なコミュニケーションを可能とし、介入可能性も高まっている。
そして、認知症者にとって介護者が重要で、かつ独立した存在としてもメンタル不調などの問題を有することがわかってきた。
だからこそ、『介護者』が研究テーマとして、いま輝きを放っている。
臨床的な経験からも、介護者はとても重要な存在である。
そもそも、彼らがどう思っているかが、在宅復帰するか否かの岐路だ。
認知症高齢者の退院後の舵を握っているのは、ほとんど介護者だと思う。そうならざるを得ない。
そこに何ができるか、何をしていくべきか。
せっかく研究という莫大なる労力を費やすのだ。
どうせなら、意義の大きな舞台の上で、力を尽くしたい。

苦労する身は何いとわねど 
苦労し甲斐のあるように

高杉晋作

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