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視力低下と転倒リスク


📖 文献情報 と 抄録和訳

一般的に健康で活動的な高齢者における視力と将来の転倒リスクとの関連:3年間のDO-HEALTH研究

📕Wieczorek, Maud, et al. "Association between visual acuity and prospective fall risk in generally healthy and active older adults: the 3-year DO-HEALTH Study." Journal of the American Medical Directors Association 25.5 (2024): 789-795. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2024.03.005
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[背景・目的] 加齢は視力(visual acuity, VA)と転倒に強い影響を及ぼすが、一般的に健康な高齢者における両者の相互作用は十分に研究されていない。本研究の目的は、一般的に健康な地域在住の高齢者において、ベースラインのVAが3年間の全転倒および傷害を伴う転倒のリスク増加と関連するかどうか、またどの程度関連するかを検討することである。

[方法] デザイン:二重盲検ランダム化比較試験DO-HEALTHの観察的解析。設定および参加者欧州7施設による多施設試験: チューリッヒ、バーゼル、ジュネーブ(スイス)、ベルリン(ドイツ)、インスブルック(オーストリア)、トゥールーズ(フランス)、コインブラ(ポルトガル)の欧州7施設で、登録前5年間に重大な健康イベントがなく、十分な運動能力を有し、認知状態が良好であった70歳以上の地域在住成人2157人を対象とした。調査方法:すべての転倒と傷害を伴う転倒の回数を、3ヵ月ごとの日記と対面評価により前向きに記録した。ベースライン時のVA低下は、両眼VAが1.0未満と定義した。全転倒と傷害性転倒について、年齢、性別、転倒歴、治療割り付け、試験施設、ベースラインの肥満度、歩行補助具の使用で調整した負の二項回帰モデルを適用した。

[結果] 本解析に組み入れられた2131人の参加者(平均年齢74.9歳、女性61.7%、少なくとも中等度の身体活動82.6%)のうち、1464人(68.7%)にVAの低下が認められた。3年間で、2116件の傷害を伴う転倒を含む3290件の転倒が記録された。ベースライン時のVAの低下は、すべての転倒の発生率22%増加[調整後発生率比(aIRR)=1.22、95%CI 1.07、1.38、P=0.003]、および傷害を伴う転倒の発生率20%増加(aIRR=1.20、95%CI 1.05、1.37、P=0.007)と関連していた。

図は、視力が低下している群と正常な視力を持つ群における転倒の頻度を示している。
視力低下群では、転倒回数が多い人の割合が比較的高いことが示されている。
これは、視力が低下している人が転倒しやすいことを示唆している。

[結論] 我々の知見は、VAの低下は、すべての転倒および傷害を伴う転倒のリスクを約20%増加させる独立した予測因子であることを示唆しており、一般的に健康で活動的な高齢者であっても、転倒予防のための定期的な眼科検査とVA測定の重要性を強調している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

視力低下による転倒。これには大きく2つのメカニズムが考えられる。
まず、視力低下によって障壁に気が付きにくくなる。
例えば、ちょっとした段差に気がつかなくて、転んでしまうというように。
2つ目に、目をつぶると視覚情報が遮断され、バランスが取りにくくなる。
このメカニズムから、バランスを崩してしまい、転んでしまう。
どちらにせよ、視力低下によって転倒リスクが増す、ということには合点がいく。

今回の抄読研究は、視力低下による転倒リスクの増大が「どのくらい?」なのかを明らかにした。
その結果、全転倒では22%、傷害を伴う転倒では20%リスクが増大することが明らかになった。
以前の文献抄読によれば、高齢者の72%が視力低下を認めているらしい。

つまり、ほとんどの高齢者に対して、視力低下による転倒リスクの予防は適応になりそうだ。
視力低下による2つの転倒メカニズムに対して、有効な介入方法を模索していきたい。

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