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視空間無視の回復軌跡

📖 文献情報 と 抄録和訳

標準治療による視空間無視の回復:系統的レビューとメタ分析

📕Overman, Margot Juliëtte, et al. "Recovery of Visuospatial Neglect With Standard Treatment: A Systematic Review and Meta-Analysis." Stroke (2024). https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.124.046760
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[背景・目的] 視空間無視は脳卒中の一般的な後遺症であり、対側空間への注意の障害を特徴とする。現在のところ、無視からの回復の程度と時間経過は明確に確立されていない。この系統的レビューとメタアナリシスは、脳卒中後無視の標準治療による回復の軌跡を明らかにすることを目的とした。

[方法] PsycInfo、Embase、MEDLINEで脳卒中後の無視の回復率を報告した論文を検索した。脳卒中からの期間は、早期(0~3ヵ月)、中期(3~6ヵ月)、後期(6ヵ月以上)の回復期に分類した。プールされた有病率のランダム効果モデルを各相について作成し、潜在的な異質性の原因をメタ回帰を用いて探索した。各研究の方法論的質はJoanna Briggs Instituteのチェックリストを用いて評価し、感度分析では質の低い研究は除外した。

✅回復率の算出方法
・各研究で、視空間無視と診断された患者のうち、追跡調査時点で「回復した」と判断された患者数を算出する。
・回復率(%) = (回復した患者数 / 追跡調査時点の全患者数) × 100
・各研究では、視空間無視の回復を評価するために異なる評価基準やテスト(例:行の消去、線分二等分テスト、図形の模写など)が使用されており、それに基づいて患者が「回復した」と見なされたかどうかが判断される。

[結果] 重複を含む4130件の論文が検索され、111件のフルテキストレビューが実施された。ネグレクトを有する脳卒中生存者839人のデータを報告した合計27件の研究がレビューの対象となった。

■ 視空間無視患者の回復軌跡
・早期回復(0–3ヶ月):この時期に最も多くの回復が見られ、回復率は平均して42%に達する。
・中期回復(3–6ヶ月):回復のペースは遅くなるが、追加の回復が見られ、回復率は平均して53%に上昇する。
・後期回復(6ヶ月以降):この時期にはほとんど追加の回復は見られず、回復率は56%でほぼ安定する。

この図は、脳卒中後に標準治療を受けた視空間無視患者の回復過程を示している。横軸は脳卒中発症後の時間(月単位)を示し、縦軸は回復率(%)を示す。各線は異なる研究の回復データを示し、点の大きさは各研究のサンプルサイズを表している。灰色の領域と破線は、ローカル回帰(LOESS)により推定された回復の平均的な傾向と95%信頼区間を示している。

研究の異質性は、回復の3段階すべてにおいて高かった(I2>75%)。推定値は感度分析に対して頑健であった。メタ進行は、左半球病変を有する患者を含む研究で有意に大きな回復を示した(β=0.275、P<0.05、I2=84%)。

[結論] 視空間無視からの回復のほとんどは最初の3ヵ月で起こるが、脳卒中後6ヵ月まではさらなる回復が期待できる。ネグレクトから回復する患者の割合は多いが、40%以上は症状が持続している。効果的なリハビリテーション介入、特に慢性視空間無視のリスクが最も高い患者に焦点を当てた、さらなる研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『比例回復モデル』という考え方がある。

✅ 前提知識:比例回復モデルとは・・・?
・比例回復の法則とは、脳卒中発症3ヶ月の時点で、患者は最大回復力の約70%を取り戻すべきだというものである(📕 Krakauer, 2015 >>> doi.)。
・比例回復モデルの例:図. ベイジアン混合モデリングによって識別された 5 つのグループが異なる色で示され、モデルが指数関数に適合することを示す曲線。患者のパフォーマンスは、Fugl-Meyer 上肢 (FM-UE) スケールで測定される。これらの 5 つのグループは 3 つにまとめられ、括弧で示され、良い、中程度、悪いと名付けられた(📕 Bowman, 2021 >>> doi.)。

今回の抄読研究は、脳卒中における視空間無視の回復軌跡を明らかにした。
その結果、視空間無視の最大の回復(今回の最終回復56%)に対して、最初の3ヶ月(42%)に75%の回復を示していた。
これは、個人内での回復度合いを示しているわけではないので、解釈は難しいところだが、比例回復に近い回復軌跡の曲線を示した。
視空間無視に関しても、『最初の3ヶ月は最も大切』の考え方は尊重した方が良さそうだ。

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