視空間無視の回復軌跡
📖 文献情報 と 抄録和訳
標準治療による視空間無視の回復:系統的レビューとメタ分析
[背景・目的] 視空間無視は脳卒中の一般的な後遺症であり、対側空間への注意の障害を特徴とする。現在のところ、無視からの回復の程度と時間経過は明確に確立されていない。この系統的レビューとメタアナリシスは、脳卒中後無視の標準治療による回復の軌跡を明らかにすることを目的とした。
[方法] PsycInfo、Embase、MEDLINEで脳卒中後の無視の回復率を報告した論文を検索した。脳卒中からの期間は、早期(0~3ヵ月)、中期(3~6ヵ月)、後期(6ヵ月以上)の回復期に分類した。プールされた有病率のランダム効果モデルを各相について作成し、潜在的な異質性の原因をメタ回帰を用いて探索した。各研究の方法論的質はJoanna Briggs Instituteのチェックリストを用いて評価し、感度分析では質の低い研究は除外した。
[結果] 重複を含む4130件の論文が検索され、111件のフルテキストレビューが実施された。ネグレクトを有する脳卒中生存者839人のデータを報告した合計27件の研究がレビューの対象となった。
■ 視空間無視患者の回復軌跡
・早期回復(0–3ヶ月):この時期に最も多くの回復が見られ、回復率は平均して42%に達する。
・中期回復(3–6ヶ月):回復のペースは遅くなるが、追加の回復が見られ、回復率は平均して53%に上昇する。
・後期回復(6ヶ月以降):この時期にはほとんど追加の回復は見られず、回復率は56%でほぼ安定する。
研究の異質性は、回復の3段階すべてにおいて高かった(I2>75%)。推定値は感度分析に対して頑健であった。メタ進行は、左半球病変を有する患者を含む研究で有意に大きな回復を示した(β=0.275、P<0.05、I2=84%)。
[結論] 視空間無視からの回復のほとんどは最初の3ヵ月で起こるが、脳卒中後6ヵ月まではさらなる回復が期待できる。ネグレクトから回復する患者の割合は多いが、40%以上は症状が持続している。効果的なリハビリテーション介入、特に慢性視空間無視のリスクが最も高い患者に焦点を当てた、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
『比例回復モデル』という考え方がある。
今回の抄読研究は、脳卒中における視空間無視の回復軌跡を明らかにした。
その結果、視空間無視の最大の回復(今回の最終回復56%)に対して、最初の3ヶ月(42%)に75%の回復を示していた。
これは、個人内での回復度合いを示しているわけではないので、解釈は難しいところだが、比例回復に近い回復軌跡の曲線を示した。
視空間無視に関しても、『最初の3ヶ月は最も大切』の考え方は尊重した方が良さそうだ。
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