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脳卒中後の疼痛。痛みの性質で予後予測が可能かも


📖 文献情報 と 抄録和訳

リハビリ中の脳卒中後の痛みの予後は痛みの質に依存する

📕Uragami, Shinji, et al. "Prognosis of Pain after Stroke during Rehabilitation Depends on the Pain Quality." Physical Therapy (2024): pzae055. https://doi.org/10.1093/ptj/pzae055
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 脳卒中後の痛みは日常生活やリハビリテーションの妨げとなる。本研究は、痛みの質に関するデータを用いて、脳卒中後の痛みを有する患者のサブグループにおける痛みの予後を明らかにすることを目的とした。

[方法] 本研究では、運動ベースのリハビリテーションを受けている脳卒中後の疼痛患者85名を対象とした。Neuropathic Pain Symptom Inventory(NPSI)の項目を使用し、脳卒中後の疼痛患者をNPSIのスコアによってクラス分けした。身体的・心理的状態などのその他の臨床的評価は、面接や質問票によって評価し、横断的分析でサブグループ間で比較した。脳卒中後12週間における各サブグループの痛みの強さを経時的に記録し、患者の痛みの予後をサブグループ間で比較した。

[結果] クラスター1(冷感誘発痛)、クラスター2(しびれのみ)、クラスター3(圧覚誘発痛)、クラスター4(圧迫感を伴う深部筋痛)の4つのサブグループに分類された。横断的分析では、サブグループ間で臨床症状が異なり、関節痛、可動域制限、体性感覚障害、アロディニアの有病率に差がみられた。ベースライン時の痛みの強さは、サブグループ間で有意差はなかった。縦断的解析では、サブグループ間で疼痛強度の予後が異なることが示された。クラスター4の疼痛強度は有意に緩和され、従来の運動ベースのリハビリテーションにより筋骨格系の疼痛が軽減されることが示唆された。しかし、クラスター1と2の患者の疼痛強度は12週間以上持続した。

[結論] 本研究は、痛みの質に関するデータを用いて患者を臨床的に意味のあるサブグループに分類し、痛みの予後に関する知見を提供した。この知見は、疼痛管理のための個別化されたリハビリテーション戦略の指針として有用であろう。インパクト脳卒中後の疼痛患者における痛みの質の評価は、疼痛管理のための個別化リハビリテーションにつながる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「先生、この痛みって良くなりますか?」

臨床上、しばしば投げかけられる質問であり、非常に難しい質問だ。
特に、脳卒中後の痛みの場合には、困ってしまう。
その痛みの予後について、知っている情報が非常に限られるからだ。
さらに、脳卒中後の疼痛の場合、単に侵害受容性の疼痛ではないことも多いため、余計に複雑だ。

今回の抄読研究は、そんな難解な質問に光を与える研究だった。
臨床上、聴取可能な疼痛の性質から、12週間後の疼痛強度の予後予測が可能であることを示した。
具体的には、冷たい刺激が痛い、痺れが強い場合には、疼痛が良くなりにくい。
一方で、圧痛が強い、深部の筋痛が強い場合には、疼痛が良くなる可能性が高い。
これまでは、ほとんど不明だった部分に、1つの判断基準を与えてくれた。
脳卒中後の疼痛について考える際に、疼痛の種類を評価することは、予後予測をする上で重要なことかもしれない。

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