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フレイル表現型と障害累積フレイル指数


📖 文献情報 と 抄録和訳

介入の上流ターゲットとしてのフレイル:後期高齢者の健康、機能、疾患の軌跡に介入するための統一的アプローチ

📕Callahan, Kathryn E., and George A. Kuchel. "Frailty as an upstream target for intervention: A unifying approach to intervening in the trajectories of health, function, and disease in late life." Journal of the American Geriatrics Society (2024). https://doi.org/10.1111/jgs.18864
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✅ 前提知識:フレイル表現型と障害累積フレイル指数とは?

<Frailty Phenotype(フレイル表現型)>
● 評価指標と評価方法

Frailty PhenotypeはFriedらによって提唱された評価方法で、以下の5つの基準によって評価される。
①体重減少、②筋力低下、③疲労感、④歩行速度の低下、⑤身体活動の低下
これらの基準のうち、3つ以上を満たす場合に「フレイル」とされる。2つの場合は「前フレイル」、1つ以下は「非フレイル」とされる。

● 原典の書誌情報:Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(3) https://doi.org/10.1093/gerona/56.3.M146

<The Deficit-Accumulation Frailty Index(障害累積フレイル指数)>
● 評価指標と評価方法

The Deficit-Accumulation Frailty Indexは、Mitnitskiらによって提唱された評価方法で、多数の健康障害(疾患、身体機能の低下、社会的・心理的要因など)を累積的に評価する。一般的に30〜40の項目を使用し、それぞれの障害が存在するかを評価し、その割合を算出する。
具体的には、次のように評価する:
①健康状態の欠損リスト:高血圧、糖尿病、関節炎、視力障害、聴力障害などの疾患
②日常生活活動(ADL)の評価:食事、入浴、着替えなどの自立度
③精神・社会的健康:抑うつ状態、孤独感など
→各欠損項目を二値化(有無)し、欠損の割合(欠損数/総項目数)を算出して指数化する。

● 原典の書誌情報:Mitnitski AB, Mogilner AJ, Rockwood K. Accumulation of deficits as a proxy measure of aging. ScientificWorldJournal. 2001 Aug 8;1:323-36. https://doi.org/10.1100/tsw.2001.58

[Editorial概要]
■ フレイルと老年症候群の病態生理を示した図

・図の中心には、「脆弱性」と「老年症候群(例:せん妄)」があり、それらがどのようにして生じるかを説明している。
1. フレイルの要因:生物学的老化とライフスパンの経験が基礎的脆弱性要因となる。生物学的老化には、ランダムな確率的イベント(例:DNA変異)や特定のメカニズム(例:mTORシグナル経路の調節)が含まれる。一方、ライフスパンの経験には、予想されるイベントと予想外のイベントの両方が含まれる。
2. フレイルの評価方法:脆弱性の評価には、「フレイル表現型」と「障害累積フレイル指数」の2つの方法がある。フレイル表現型は、定義された基準に基づいて脆弱性の特定の状態を示し、障害累積フレイル指数は、特定の欠陥の数に基づいてランダムな確率的イベントを反映する。
3. 発病のプロセス:これらの基礎的脆弱性要因が存在する個人が、何らかの「誘因(precipitating factors)」や「侵害(insults)」にさらされると、せん妄や他の多因子性老年症候群が発症する。図の右側には、介入の機会として、誘因や侵害の予防、生活習慣介入、老化を標的とした治療法(gerotherapeutics)などが示されている。
4. 介入のアプローチ:図では、介入のアプローチとして、誘因や侵害の予防や、老化に基づく脆弱性要因の軽減が示されている。これにより、機能や独立性の促進が図られる。
この図は、老年症候群の発症メカニズムを理解し、適切な介入方法を考える上で重要なフレームワークを提供している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

このEditorialには、以下の𝕏ポストから出会った。

このポストを目にしたとき、僕の頭のなかには『?』がふわふわと浮かんでいた。
そして、人間には知らないものを、好きではないもの、面白くないものとして判断してしまうバイアスがある。
例に漏れず、ぼくもこのポストを自分にとって面白くないものとして、スルーしかけていた。
が、そのときに、『チャリティの原則』を思い出した。

✅ チャリティの原則とは?
好意的解釈を念頭に置こうというもので、
・相手が正しい事を言っているものとして話を聞く
・相手が不条理な事を述べていたら、まずは自分の解釈の方を変える
といった考え方のこと

🌍 参考サイト >>> site.

要は、「何か知らないこと・分からないこと・不合理と思ったことを、相手のせいにして終わるのではなく、自分自身に疑いの目を向けたり、自分自身を変えたりしようよ」、という考え方と転用解釈している。
僕たちは、自分が知らないもの → 面白くないものと即断しやすい。
だが、そもそもの前提に立ち返りたい。
勉強とは、知らないものを知り、自分を拡大していく営みではないか?
だとすれば、自分が知らないものこそ、面白そうなものとして、ダイブして、勉強して、血肉にしていくべきではないか。
少なくも、最新の論文を抄読するうえで、『チャリティの原則』は必須だ。
なぜなら、最新の論文とは、これまでの未開に一歩、二歩と踏み込んでいるもので、知らなくて当然のものばかりだから。
すでに知っているもの探す、というスタンスでは何も引っかからない。
未知に拒否反応が出るのは、それがコストだからだ、面倒だからだ。
もちろん、労苦から逃げていては生長はおぼつかない。

今回、チャリティ原則にのっとり勇猛果敢に攻め入った結果、『フレイル表現型』『障害累積フレイル指数』について理解できたし、上村先生のつぶやきを120%血肉化できたと思っている。
上村先生のつぶやきを、自分にとって興味のないものとしてスルーしなくて、ほんとうによかった。

未解決な問題について、解答を探し求めるのは不合理だ。
もし求めている解答を知っているのなら、初めから問題など存在しなかったことになる。
もし探し求めているものが何かを知らないなら、問題を見出し、解答を期待することすらできまい。

~プラトン「メノン」~

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