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生態学的モデルで,フレイル要因を整理しよう


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者のフレイルと環境属性:生態学的モデルからの洞察

📕Uemura, Kazuki, Tsukasa Kamitani, and Minoru Yamada. "Frailty and Environmental Attributes in Older Adults: Insight from an Ecological Model." Physical Therapy Research 26.3 (2023): 71-77. https://doi.org/10.1298/ptr.R0027
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[レビュー概要] フレイルに関する多くの研究は、主に人口統計やライフスタイルといった個人レベルの危険因子に焦点を当てている。フレイルマネジメントのガイドラインでは個人の生活習慣の改善が推奨されているが、生活行動は周囲の環境に大きく影響される。近年、複数の要因がフレイルに関連する健康状態や行動に影響を及ぼすというエビデンスが増加した結果、フレイルと環境属性との関連が注目されている。これらの知見は、個人の行動に影響を及ぼす5つのレベル、すなわち、個人内/個人レベル(年齢、教育、態度)、対人レベル(人と集団)、組織/組織レベル(組織と職場)、地域レベル(自然環境、建築物、社会環境)、システム/公共政策レベル(地域から国までの公共政策)を含む生態学的モデルに基づいて整理することができる

✅ 生態学的モデルと各レベルにおけるフレイルの要因
■ 個人(Intrapersonal)レベル

・個人レベルでは、社会人口統計学的(高齢、女性、社会経済的地位の低さ)、臨床的(肥満、慢性疾患)、ライフスタイル(食事、身体活動)、生物学的(炎症、内分泌因子)など、フレイル発症や進行の危険因子が幅広く知られている。

■ 対人(Interpersonal)レベル
・社会的孤立や孤独などの社会的要因は、フレイル発症や進行のリスクを高め、頑健性への改善の可能性を低下させる。
・中高年の健康行動の変化(身体活動や禁煙など)は、配偶者の行動の変化と正の相関があるなど、フレイル予防のための健康行動は、対人関係を通じて広まる可能性がある。

■ 組織(Organization)レベル
・職業的危険因子
・職場での健康増進

■ コミュニティ(Community)レベル
・建築物や社会的環境といったコミュニティレベルの要因は、個人の健康行動やフレイルと関連している。

■ 政策(Policy)レベル
・システムレベルの目標に焦点を当てた介入
・フレイル分野における政策やシステムレベルの目標に焦点を当てた研究は限られており、既存の文献のほとんどは個人レベルの目標に焦点を当てたものである

本研究では、生態学的モデルの各レベルにおいて、フレイルの発症とその進行に関連する可能性のある因子と、フレイル予防に関するそれらの意味について検討した。また、日本におけるフレイル予防のための政策レベルのアプローチとして、「かよいの場」と呼ばれる地域の居場所やグループへの参加を通じて住民の地域社会への参加を促すアプローチを紹介し、政府の報告書からその状況を集計した。このようなコミュニティ形成の視点は、エコロジカルモデルの概念に合致する。しかし、政策やシステムレベルのアプローチが、障害やフレイル予防にどのような効果をもたらすのか検証した研究はほとんどない。フレイル予防のためのマルチレベル介入を充実させるためには、生態学的視点からのさらなる研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

近年、フレイルに関する要因を明らかにする研究、介入研究が急増していることを感じる。
その中で、頭の中は『パニック状態』である。
調査された関連要因の数がどんどん増えていき、どのように整理したらいいかも分からない。

そんな中で、本研究はそれら膨大な研究たちを整理する『棚』を与えてくれる論文と言えるかもしれない。
フレイル要因(介入レベル)について5つのレベルとその定義、報告されている研究を紹介してくれている。
このような棚ができることで、圧倒的に情報が整理されやすくなるし、思考の速度も上がる。
とても有用な情報を提供してくれた著者らに、感謝したい。

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