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機械学習によるフレイル予測モデル


📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住の中高年における将来のフレイルを予測する機械学習モデル:ELSAコホート研究

📕Leme, Daniel Eduardo da Cunha, and Cesar De Oliveira. "Machine Learning Models to Predict Future Frailty in Community-Dwelling Middle-Aged and Older Adults: The ELSA Cohort Study." The Journals of Gerontology: Series A 78.11 (2023): 2176-2184. https://doi.org/10.1093/gerona/glad127
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[背景・目的] 機械学習(ML)モデルは、地域社会における将来のフレイルを予測するために用いることができる。しかし、フレイルのような疫学的データセットの結果変数は、通常、カテゴリー間で不均衡がある、すなわち、フレイルと分類される人の数がフレイルでない人の数よりはるかに少ないため、この症候群を予測する際にMLモデルの性能に悪影響を及ぼす。

[方法] English Longitudinal Study of Ageingの参加者(50歳以上)を対象とした後方視的コホート研究で、ベースライン時(2008~2009年)にノンフレイルであり、4年間の追跡時(2012~2013年)にフレイルの表現型を再評価した。社会的、臨床的、心理社会的ベースライン予測因子を選択し、様々な統計パッケージによるMLモデル(Logistic Regression、Random Forest [RF]、Support Vector Machine、Neural Network、K-nearest neighbor、Naive Bayes分類器)で追跡調査時のフレイルを予測した。

[結果] ベースライン時にフレイルでなかった4,378人の参加者のうち、347人が追跡調査時にフレイルとなった。アンバランスなデータを調整するために提案されたオーバーサンプリングとアンダーサンプリングを組み合わせた方法は、モデルの性能を向上させ、RFは、バランスのとれたデータに対して、AUC (ROC)が0.92、AUC (precision-recall curve)が0.97、特異度が0.83、感度が0.88、バランス精度が85.5%となり、最高の性能を示した。年齢、椅子立ち上がり試験、自己評価による健康状態、家庭の裕福さ、バランスは、バランスデータで訓練されたほとんどのモデルにおいて最も重要なフレイル予測因子であった。

[結論] MLは、時間の経過とともにフレイルになる個人を同定するのに有用であることが証明され、この結果はデータセットのバランスをとることによって可能となった。本研究は、フレイルの早期発見に有用な因子を浮き彫りにした。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

近年、機械学習、AIという言葉をよく耳にする。
だが、「そもそも、機械学習ってなぜ必要なんだっけ?」ということを考えたことがあるだろうか。
フレイルの予測因子を明らかにするなら、多変量解析だけでいいじゃないか。
両者は、いったい何が違うというのか?
その解析のイメージは以下のようなものだ。

✅ 機械学習と統計学(多変量解析)の違い
・機械学習手法は精度追求型:機械学習手法は徹底的に精度を追い求める。高いパフォーマンスを出せば出すほど良い。そのため、アルゴリズムが複雑で中身がブラックボックスであったとしても問題ない。出てきた結果に対して解釈の余地を与えられないことが多い。
・統計学的手法は解釈追求型:統計学的アプローチは現状のデータの構造を可視化し、解釈を与えることの意味を見出す。なるべくアルゴリズムは単純かつ分かりやすいモノを好む。

🌍 参考サイト >>> site.

機械学習は解釈を犠牲にして、精度を求める。
すなわち、今回明らかになった機械学習のフレイル予測モデルは、精度の側面からフレイルリスクを高める予測因子だ。
年齢、椅子立ち上がり試験、自己評価による健康状態、家計の豊かさ、バランス。
この5つの予測因子は、偶然にも解釈的見ても納得できる、そして有用性の高そうな5項目だった。
RFによるAUC、特異度、感度は高いものだった。
地域におけるフレイル予測において、この5項目の把握は必要かもしれない。

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