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3世代の80代高齢者。認知症発症率の違い


📖 文献情報 と 抄録和訳

八十代高齢者における認知症の発生率と有病率の低下

📕Wetterberg, Hanna, et al. "Decreasing Incidence and Prevalence of Dementia Among Octogenarians: A Population-Based Study on 3 Cohorts Born 30 Years Apart." The Journals of Gerontology: Series A 78.6 (2023): 1069-1077. https://doi.org/10.1093/gerona/glad071
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 最近の研究では、認知症の年齢別発症率および有病率が低下していることが示唆されている。しかし、八十代高齢者の動向に関しては、結果はまちまちである。我々は、85~90歳を対象とした3つの集団ベースのコホートにおいて、認知症の有病率と発症率の時間的傾向を調査した。また、男女で時間的傾向が異なるかどうかも検討した。

[方法] 1901-02年、1923-24年、1930年生まれの85歳(N = 1481)および88歳(N = 840)のヨーテボリH70出生コホート研究における集団ベースの出生コホートを調査した。最初の2つのコホートは90歳(N = 450)でも調査された。ベースライン時に認知症でなかった1,109人について、88歳時の検査情報または登録データを用いて発症率を調べた。3つのコホートはすべて同じ方法で調査された。

[結果] 認知症の有病率は、85歳では1986-87年の29.8%から2008-10年の21.5%、2015-16年の24.5%に、88歳では1989-90年の41.9%から2011-12年の28.0%、2018-19年の21.7%に、90歳では1991-92年の41.5%から2013-14年の37.2%に減少した。この減少は女性で最も顕著であった。85歳から89歳までの1,000リスク年当たりの認知症発症率は、1901-02年生まれの48.8%から、1923-24年生まれの37.9%1930年生まれの22.5%へと減少した。

[結論] 認知症の有病率および発症率は、八十代高齢者において30年間で大幅に減少した。このことは、今後数十年間の八十代高齢者の増加によって予想される認知症患者の増加を遅らせる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

似たような研究デザインで、ADL/IADL障害について調査した研究がAge and Ageing誌で報告された。

その結果は「近年の高齢者の方が、ADL/IADL障害が少ない」だった。
その文献抄読の考察が好きだったので、以下にほぼ引用する。

世界は、少しずつ良くなっているのだ、着実に。
だが、ちょっと考えて欲しいのだが、「あなたはそう思っていますか?」。
世界が良くなっていることを実感し、幸福感を得られているだろうか。
人間には、ネガティブ本能がある。
簡単にいえば、「青信号は気にならない、赤信号はとても気になる」本能である。

✅ ネガティブ本能とは?
人々が「世界はどんどん悪くなっている」という思い込みから、なかなか抜け出せない原因は「ネガティブ本能」にある。ネガティブ本能とは、物事のポジティブな面よりもネガティブな面に気づきやすいという本能だ。ネガティブ本能を刺激する要因は3つある。
(1) あやふやな過去の記憶
(2) ジャーナリストや活動家による偏った報道
(3) 状況がまだ悪いときに「以前に比べたら良くなっている」と言いづらい空気

ハンス・ロスリング, FACFULLNESSより引用

課題ばかりが溢れかえり、達成が軽視される世の中だ。
「大丈夫だ、世界は少しずつ前に進んでいる」
その1つのエビデンスを確立した本研究は、干天の慈雨だ。
漸進に光を当てながら、進もう。
光を当てた部分が、栄養され、生長してゆくのだから。

自分を肯定的に評価するためには、自分の成し遂げたことに注目することだ
デニス・ウェイトリー

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