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音楽と認知機能。聴くもよし、奏でるもよし

📖 文献情報 と 抄録和訳

中高年者における音楽への関与とエピソード記憶。全国規模の横断的な分析

Rouse, Hillary J., et al. "Music Engagement and Episodic Memory among Middle-Aged and Older Adults: A National Cross-Sectional Analysis." The Journals of gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences 2022 Mar 3;77(3):558-566.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 音楽鑑賞が中高年のエピソード記憶課題の成績に影響を与えるかどうかを明らかにすること。

[方法] 本研究では,2016 Health and Retirement Studyの認知的に健康な成人のサンプル(N = 4,592)の二次データ分析を用いた。多変量回帰モデルを用いて、音楽を聴く参加者(N = 3,659)、歌や楽器を演奏する参加者(N = 989)のエピソード記憶のタスクにおけるパフォーマンスの断面差を分析した。

[結果] 参加者は平均して、20個の単語のうち10.3個を想起していた。回帰分析の結果、音楽を聴くことと、歌や楽器を演奏することは、それぞれ独立して、有意に優れたエピソード記憶と関連することが示された。音楽を聴いていると答えた回答者は、そうでない回答者に比べて、エピソード記憶課題で平均0.443語多く思い出し(p = .002)、歌ったり楽器を演奏したりすると答えた回答者は、そうでない回答者に比べて平均0.396語多く思い出した(p = 0.006)。感度分析の結果、音楽を聴くことと楽器を演奏することの両方を行った参加者は、どちらも行わなかった参加者に比べて、エピソード記憶課題において平均0.809語多く想起することがわかった(p < 0.001)。

[考察] 今回の結果は、中高年者において、音楽活動がエピソード記憶の向上と関連していることを、初めて集団ベースで証明したものである。今後の研究では、音楽活動とエピソード記憶の関係が他の集団でも再現されるかどうか、また縦断的研究においてその関係が持続するかどうかを検討する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

音楽の威力。音楽は楽しい、悲しい、切ない、怒り・・・、たくさんの感情を一瞬で想起させる、すごい代物だ。
まことに、匂いと音楽は、感情との間に反射弓を形成している
思考という、まごまごした愚鈍者を介さず、直に感情にアクセスする。
そして、感情が揺り動かされるということは、思考が動くということでもある。まず感情、次に思考、という感じなのかもしれない。
病態レベルの仕組みとしては、感情は大能基底核とリンクしていて、大能基底核は前頭前野(認知ループ)とリンクしている(🌍参考サイト >>> site.)。
よって、感情は大脳基底核を駆動し、大脳基底核は思考を駆動すると思われる。

音楽は、感情-大脳基底核-前頭前野の歯車を円滑に回すための潤滑油かもしれない。
繋がった!!!
だからこそ、パーキンソン病には音楽がとても有効に働くわけだ(以下note & YouTubeは絶対見て欲しい❗️)。

そして、聴くだけより、奏でるだけより、聴いて奏でることで、その威力はおおよそ2倍になるらしい。
娘のピアニカが、いま、目の前に、ある。

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