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体重変動と認知症。±10%以上で3倍リスク増大(“APOE ɛ4” 遺伝子の介在)

📖 文献情報 と 抄録和訳

後期高齢者の体重変化と認知症との関連性。集団ベースのコホート研究

📕Guo, Jie, et al. "Association between late-life weight change and dementia: A population-based cohort study." The Journals of Gerontology: Series A (2022). https://doi.org/10.1093/gerona/glac157
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✅ 前提知識:“APOE ɛ4” とは?
・APOEε4は、その保有者がアルツハイマー病発症のリスクが約3.9倍になると言われる「遺伝子型」
・アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は、アミロイドベータペブチドという老廃物が脳に蓄積し、 神経細胞に障害を与えることが原因で発症することがわかっている
・アミロイドベータペブチドの蓄積や凝集に関わる物質のひとつが、アポリポタンパク質E。それを司るAPOE(アポイー)遺伝子には、主にε(イプシロン)2、ε3、ε4の3種類あり、 2つ一組で遺伝子型を構成している。
・ε4の有無とアルツハイマー病発症との関係を調べると、ε4を全く持たない遺伝子型に対して、 ε4を1つないし2つ持っている遺伝子型のアルツハイマ一病発症リスクは、約3倍~12倍高くなると言われている。

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[背景・目的] 晩年の体重変化が認知症発症に及ぼす影響については不明である。我々は、肥満度(body mass index, BMI)および体重変化と認知症との関連を調べ、これらの関連におけるAPOE ɛ4の役割を探索することを目的とした。

[方法] 60歳以上の認知症でない1,673人の参加者を、BMI/体重の変化を検出するために最初の6年間、そして認知症の発症を検出するためにさらに6年間追跡調査した。BMIの変化([BMIfirst 6-year follow-up - BMIbaseline]/BMIbaseline) は、安定(≦5%)、中程度(5%〜10%)、大きな増減(>10%)に分類された。認知症は標準的な基準に従って診断された。データはCox回帰モデルで解析した。

[結果] 6年間の追跡期間中に、102例の認知症発症が確認された。
■ BMIと認知症リスク
・安定したBMIと比較して、認知症のハザード比(95%CI)は、BMIの増減が10%を超えるとそれぞれ2.61(1.09-5.54)および2.93(1.72-4.91)であった。

■ +α:APOE ɛ4の保有有無と認知症リスク
・認知症のリスクは、BMIが安定しているAPOE ɛ4非キャリアよりも、BMIが大きく増加(9.93[3.49-24.6])または減少(6.66[2.83-14.4])したAPOE ɞ4キャリアの方が高かった。

[結論] BMIの変化は、認知症リスクとU字型の関連を示した。体重の大幅な増加および減少は、ほぼ3倍高い認知症リスクと関連しており、これはAPOE ɛ4によって増幅される可能性がある。

📕 関連研究:BMIと認知, 壮年者と高齢者の違い
・被験者:米国39,153名、65歳未満
・結果①:BMIが高いほどその後の認知機能低下急速、高齢期での認知障害リスク↑
・結果②:65歳以上:BMIが高いほど、その後の認知機能低下が緩やかで、認知障害リスク↓
・変曲点は65歳前後

Crane, Breanna M., et al. The Journals of Gerontology: Series A (2023). >>> doi.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ふと思ったのだが、体重変動は『最終共通路』だ。
・最近、運動するようになった→体重適正化
・最近、メンタルストレスが凄い→過食→体重増大
・最近、食事量に気をつけるようになった→体重減少
etc...

すべての「最近〇〇」が、体重変動という1つの道に収束していく。
そして、その体重変動が、あらゆる健康アウトカムにリンクしている。
今回の研究も、そのアウトカムの1つ『認知症リスク』との関連を明らかにした。

体重の維持は、アメリカ心臓協会からの勧告『ライフ・エッセンシャル8』の1本の柱でもある。

健康的な体重:体格指数(BMI)は、体重コントロールや肥満の判定基準としては十分ではなく、内臓脂肪も含めて管理する必要がある。

あとは、管理の仕方だ。
ベストなのは、ウェアラブル端末とリンクした体重測定。
現時点では、体重計に乗って、それを記録して、…、面倒である。
この面倒が限りなく少なくなったとき、健康ベネフィットへの重大な最終共通路が開通することだろう。

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