運動器診療における理学療法士の予後に関する認識
📖 文献情報 と 抄録和訳
運動器診療における理学療法士の予後に関する認識と知識:探索的質的研究
[背景・目的] 筋骨格系疾患の治療に携わる理学療法士の予後に対する認識と知識はどのようなものか?
[方法] デザイン:探索的現象学的研究。参加者:運動器疾患の治療に携わる理学療法士15名。データ分析:半構造化面接によりデータを収集し、帰納的符号化と主題分析を用いて分析した。
[結果] 理学療法士が予後をどのように理解しているかは主に3つの主要な要素から構成された。
1. 基礎知識 (Foundational Knowledge):
・基礎的な教育や理論的な知識を指す。
・理学療法士は教育過程で学ぶ組織の治癒モデルなどを基礎知識としている。
・例えば、炎症期、修復期、再構築期の時間枠などである。
2. 経験的知識 (Experiential Knowledge):
・臨床経験や実践から得られる知識。
・患者を治療することで得られる洞察やスキルを指す。
・多くの理学療法士は、同様の症例を扱うことで予後に関する知識を深める。
3. 認識 (Perceptions):
・予後に対する理学療法士の個人的な見解や解釈。
・予後を「時間枠」「結果」「プロセス」として捉える視点が含まれる。
例. 予後を時間枠として捉える場合、治療が完了するまでの期間を意味する。
一方、結果として捉える場合は、治療の最終的な成果を指す。
過程として捉える場合は、患者が治癒に至るまでの全体の道筋を意味する。
・予後は主にポジティブな結果に関連付けられることが多い。
例. 理学療法士は、患者が良くなる可能性を前向きに捉え、治療の進展に対する期待を持つ。
[結論] 理学療法士が予後の概念をどのように捉え、理解しているかは、彼らの基礎知識に影響されている。理学療法士にとって、予後は生物医学的な健康モデルの中で概念化されるようである。実際、理学療法士は、予後とは治癒の組織モデルによって決定される回復のタイムラインであると認識しているかもしれない。理学療法士はまた、予後についての学習を深めるために、臨床実践、専門的な開発、仲間から得た経験的な知識に依存している。理学療法士が、予後を機能、組織の健康、痛みに関連する多因子の結果という観点から概念化することで、予後の理解が深まるかもしれない。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
目標設定において、一番難しいと感じる部分は何だろう。
ぼくは、「時間枠」の設定だと思う。
ゴールレベルにどのくらいの時間をかけて回復していくか。
この部分は、エビデンスを参照して云々・・・、ということが通じにくい。
それは、患者自身の個別性もさることながら、その病院の常識的知識の違いなどの環境因子も関わってくる。
そこに関しては、今回の抄読でも出てきたような “経験的知識” が役に立つ。
その疾患に対する基礎的な知識に基づいた上で、その病院環境における経験的知識に裏打ちされた予後を予測する。
どちらも大事だと思う。
そして、3つ目の認識、これも大切だ。
その理学療法士がポジティブな期待を持つか、ネガティブな期待を持つか、によって極端な話、自宅に帰れるか否かが分かれることだってあるのだ。
予後に対する理学療法士の認識。
それを考える上での大きく3つの主題を提供してくれたこの研究に感謝したい。
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