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経験に基づく予後予測は,あまり当てにならないかも


📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士による腰椎固定術後1年の予後-前向きコホート研究

📕Tegner, Heidi, et al. "Physiotherapists’ prognosis of 1-year outcome after lumbar spinal fusion-A prospective cohort study." Physiotherapy Theory and Practice 39.8 (2023): 1692-1703. https://doi.org/10.1080/09593985.2022.2042880
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[背景・目的] 背景理学療法士(PT)は、腰椎固定術(LSF)後の患者のモビリゼーションの促進において重要な役割を担っている。本研究の目的は、PTがLSF直後の患者との最初の面談に基づいて術後1年の転帰を予測できるかどうかを調査することである。

[方法] 1年間の追跡による前向きコホート研究を実施した。術後数日目に、病棟のPTに術後1年後の患者のLSF転帰を予測するよう依頼した。手術1年後、患者にはOswestry Disability Index(ODI)、下肢痛と背部痛の視覚的アナログスケール(VAS)、QOL調査(EQ-5D-3 L)、global perceived effect(GPA)、手術結果に対する満足度(satisfaction with surgery outcome, SSO)を含むアンケートを実施した。単変量およびロジスティック回帰を用いて、予後と予測値との関連を算出した。

[結果] 対象は170例であった。解析の結果、PTの予後と主要アウトカムである術後1年のODI、VAS、EQ-5D-3 L、GPE(p≦0.04)との間に有意な関連(p<0.01)が認められた。しかし、PTの予後予測精度は低かった(R2≦0.09)PTの予後予測と患者のSSOとの間には有意な関連はみられなかった(p = 0.17; R2 = 0.01)

[結論] PTの予後と術後1年の障害、疼痛、健康関連QOL、グローバル知覚効果との間には有意な関連が認められたが、これらの関連は予測値としては低かった。PTの予後と1年後の患者のSSOとの間には有意な関連はなかった。PTの予後予測は、今後のリハビリテーション計画における単一の要素として使用されるべきではない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

未来についてわかっている唯一のこと、それは現在とは違うということだ
未来を予測しようとすることは、夜中にライトをつけず、後ろを見ながら田舎道を運転するようなものだ
未来を予測する最善の方法は、それをつくることである

ピーター・ドラッカー

未来は絶対的に未知である。
だが、予測しようとしたときには、そこに予測精度と呼ばれるものが生まれ、それは予測ツールによって大きく異なる。
完全な予測はない。だが、より良い予測ツールはあり得ると思っている。

その中で、今回抄読した研究によれば、理学療法士による漠然とした「よくなる、よくならない」の予後予測は、あまり当てにならないかもしれない。
多くのアウトカムに対して、有意な関連はするものの、その予測精度は良くないものだった。
やはり予後予測は、客観的な予後予測ツールによって、ある程度は機械的に、統制的になされた方が精度は高くなるのかもしれない。

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