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転倒恐怖×バランス戦略。子ども, 大人, 高齢者の場合


📖 文献情報 と 抄録和訳

転倒恐怖が直立姿勢のコントロールに及ぼす影響(全生涯にわたって)

📕Hill, M., et al. "The influence of fear of falling on the control of upright stance across the lifespan." Gait & Posture 109 (2024): 226-232. https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2024.01.032
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🔑 Key points
🔹成人および子どもを対象に、高所に立ったときのバランスの変化を調べた。
🔹子どもと大人では、高所に立ったときにとる姿勢戦略が異なる。
🔹大人は高さによる脅威に対して「硬直」反応を示した。
🔹子どもは、高所での姿勢戦略が潜在的に不適応であることを示した。

[背景・目的] 背景高所での転倒、およびそれに続く情動状態の変化(例えば、転倒への恐怖)は、成人のバランスに強い変化をもたらす。しかし、高さによって誘発される姿勢の脅威が、小児のバランス能力にどのように影響するかについてはほとんど知られていない。子どもには、脅威や恐怖に関連する刺激の処理を抑制するのに必要な認知能力が欠けている可能性があり、その結果、成人と比べて姿勢制御においてより顕著な(そしておそらく有害な)変化を示す可能性がある。本研究では、小児の高所立位に対する情動反応とバランス反応を調査し、若年成人および高齢成人との反応を比較した。

[方法] 小児(年齢:9.7±0.8歳、n=38)、若年成人(年齢:21.8±4.0歳、n=45)、高齢成人(年齢:73.3±5.0歳、n=15)を対象に、地上と地上80cmの2つの条件下で二足立ちを行った。圧力中心(COP)の振幅(RMS)、周波数(MPF)、複雑度(サンプルエントロピー)を算出し、姿勢パフォーマンスと戦略を推定した。感情反応は、バランス自信、転倒への恐怖、不安定感の評価によって定量化した。

[結果] 若年成人と高齢成人は、COPの複雑さ(サンプルエントロピー)の増加とともに、COPの周波数の増加と振幅の減少によって特徴づけられる姿勢適応を示した。対照的に、子どもは逆の変化パターンを示した。すなわち、子どもは高所に立ったときにCOPの振幅が増加し、頻度と複雑さの両方が減少した。

[結論] 子どもと成人は、高所に立ったときに異なる姿勢制御戦略を採用した。若年および高齢成人は、高さによる脅威に対して潜在的に保護的な「硬直」反応を示したが、子どもは潜在的に不適応で非効果的な姿勢適応戦略を示した。これらの観察結果は、成人における姿勢脅威関連の既存の研究を発展させ、危険な状況で立っているときに子どもがどのように反応するかを理解するための重要な新しい洞察を提供するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

柔よく剛を制す、という言葉がある。
その意味は「柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえつけることができる」ということ。
バランスというものを思い浮かべた時、この言葉が浮かぶのだ。

一見強固な物体は、ひとたび倒れ始めると、そのまま倒れるしかない。
一方で、柔軟性の高い物体は倒れ始めたときに対側へ重心を移動する、調整ができる。
今回、転倒恐怖によって起こることの一端は、柔→剛への変化ではないかと感じた。
右へ左へ移動可能だった重心が、転倒恐怖によって硬直することで調整できず、倒れるしかなくなってしまう。

今回抄読した研究は、地面の高さに変化をつけることで「転倒恐怖」を作り出した。
この方法自体が、コロンブスの卵的な、なかなか思い浮かぶことではないと思う。
ただ、転倒恐怖というものは、単純な恐怖だけで構成されているわけではないと思うので、その部分には注意が必要そうだ(関連 note参照)。

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