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Fear - Fall Risk Model。転倒恐怖が転倒リスクを高める場合,高めない場合


📖 文献情報 と 抄録和訳

転倒の知覚制御モデル:不適応な転倒恐怖を理解し評価するための統一的枠組みの開発

📕Ellmers, Toby J., et al. "The perceived control model of falling: developing a unified framework to understand and assess maladaptive fear of falling." Age and ageing 52.7 (2023): afad093. https://doi.org/10.1093/ageing/afad093
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🔑 Key points
🔹転倒の知覚制御モデルという新しい概念的枠組みを提示する。
🔹この枠組みは、転倒恐怖が転倒リスクを高める具体的なメカニズムを説明する。
🔹転倒恐怖が最終的に保護的か不適応的かを決定する重要な因子として知覚的コントロールを特定する。
🔹我々は、転倒に対する知覚的コントロールを評価するための4項目尺度-Updated Perceived Control over Falling Scale(UP-COF)-を検証した。

[背景・目的] 転倒恐怖は高齢者によくみられ、転倒リスクを高める様々な行動に大きな影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、転倒恐怖はある種の個人にとってはポジティブな結果をもたらす可能性もある。このような対照的な結果の根底にあるメカニズムの理解が進まなければ、転倒恐怖を臨床的に管理することは困難である。

[方法] 本稿では、まず転倒恐怖、バランス、転倒リスクに関する最近の知見を要約する。具体的には、転倒恐怖が知覚、認知、運動過程にどのような影響を与え、転倒リスクを増加させたり減少させたりするのかについて述べる。最後に、転倒恐怖の不適応要素を評価するために使用できる新しい臨床ツールの開発と検証について報告する。

[結果]
■ 転倒の知覚制御モデル
・転倒恐怖が転倒リスクに影響を及ぼす具体的なメカニズムを説明する新しい概念的枠組み-転倒の知覚制御モデル-を提示する。
・重要な概念的進歩は、転倒恐怖と転倒リスク増加の関係を媒介する重要な因子として、自分のバランスを脅かす状況に対する知覚的コントロールを同定したことである。

✅ 転倒の知覚制御モデル
・このモデルの中心的な考え方は、姿勢の脅威がまず自動的な防衛的身体反応(例えば「姿勢の硬化」)を引き起こす。
・その後、転倒恐怖が生じるのは、個々人が与えられた文脈を、危害の可能性とコストが高いと認識し、自動的な防衛反応に対する評価が「恐怖スキーマ」(転倒を恐れるときに一般的にどのように感じ、行動するかについての理解)と一致したときである。
・その結果、安全性を高めることができる更なる意識的な行動適応が導かれる
・しかし、個々人が与えられた脅威的な状況に対するコントロールの認知が低い場合、パニック反応が引き起こされ、様々な形でバランスを崩し(長期的には過度の活動制限につながり)、転倒の危険性を高めることになる

■ 知覚的コントロール尺度(UP-COF)
・我々が開発した新しい4項目尺度-転倒に対する知覚的コントロール尺度(Updated Perceived Control over Falling Scale, UP-COF)-は、臨床的に知覚的コントロールを評価するための有効かつ信頼性の高いツールである。

[結論] この新しい概念化とツール(UP-COF)により、臨床家は転倒恐怖が転倒リスクを増加させる可能性の高い個人を特定し、知覚的コントロールの低さのような特定の根本的な不適応プロセスに的を絞ることができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前の文献抄読において、転倒の3要因について学んだ。

■ 内在的因子;Intrinsic Factor
■ 行動的因子:Behavioural Factor
■ 外在的因子:Extrinsic Factor

その中で、転倒恐怖は行動的因子に該当する。
さて、この転倒恐怖だが、実際の転倒リスクとの関係を考えてみると、臨床現場においては高める場合と高めない場合あるように感じる。
「転倒恐怖が強いな、でも、だからこそ転ばなそうな人」
「転倒恐怖が強いな、だから、この人は転びそう」

研究ベースでも、転倒恐怖が転倒リスクが高める人と高めない人がいることが報告されている(📕Asai et al., 2022 >>> doi.)。

転倒恐怖と身体活動量との関連においても、「転倒恐怖は、身体活動量の意図を形成するのにさほど重要ではないかもしれない」という結論を出している研究もある。

今回の研究は、「転倒恐怖が、問題となる場合、ならない場合、その違いは何?」に答えを与えてくれた。
その答えは、『知覚的コントロール』の有無(パニック反応の有無)だ。
今回のFear - Fall Risk Model(勝手に名付け)を用いて、転倒リスクを高める場合、高めない場合の模式図を作ってみた。

更に今回の研究の凄みを感じるのは、『知覚的コントロール』の評価尺度を開発しているところだ。
このツールによって、転倒恐怖が問題となりそうな個人を特定でき、活動制限が必要か、介入が必要かを判断しやすくなっている。
This is “Age and Ageing” ‼️

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