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アキレス腱。捻転×腱内圧


📖 文献情報 と 抄録和訳

運動中のアキレス腱の腱内圧は腱の捻転の程度に関係する

📕Pringels, Lauren, et al. "Intratendinous pressure of the Achilles tendon during exercise is related to the degree of tendon torsion." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 33.11 (2023): 2230-2238. https://doi.org/10.1111/sms.14467
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[背景・目的] アキレス腱(Achilles tendon, AT)の捻転は、引張強度を高めるが、引張負荷時にかかる内部圧縮が大きくなるため、捻転が大きいとアキレス腱症の危険因子にもなりうる。しかし、この仮説の根拠を裏付ける証拠は不足している。そこで我々は、ATの捻転タイプが腱内圧に及ぼす影響を調べることを目的とした。

[方法] ヒトの新鮮凍結死体脚18本を試験装置に装着し、超音波ガイド下でATの正中部に小型圧力カテーテルを挿入した。腱内圧は、模擬的な膝関節伸展でのストレッチングおよび遠心性のHeel Drop中に測定した。

その後、ATを慎重に剥離し、Type I(捻転が最も少ない)、Type II(捻転が中等度)、Type III(捻転が極端)に分類した。検査したATのうち、タイプIの捻転が9例(50%)、タイプIIが9例(50%)、タイプIIIは1例もなかった。

[結果] ATの腱内圧は、いずれの運動においても足関節の背屈に伴って指数関数的に増加し(p<0.001)、この増加は、Type Iの捻転よりもType IIの捻転を有するATにおいてより大きいことが明らかになった(p<0.05)。

[結論] 本研究は、ATに高度な捻転を有するアスリートでは、例えばふくらはぎの伸張や遠心性踵落下などの運動中に、中殿部がより内圧を受けるという仮説を支持する初めてのバイオメカニクス的データを提供するものである。この現象がアキレス腱症のリスク上昇とも関連しているかどうかは、さらなる前向きな調査が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

よい研究、よい論文の定義とは何だと思う?
読んでいて、面白いことだろうか。
それとも、科学的な見地から、報告の質が高いことだろうか。
そこには、たくさんの意見が存在することだろうと思う。

だけれども、北極星のように輝く1つの「良さ」の定義がある。
それは、『被引用』である。
そもそも、臨床研究の目的の1つは、一人の発見をみんなの武器にしていくことにある。

そう考えれば、至極当然のことだ。
後世に用いられれば、よい研究、用いられなければ、臨床研究のその目的から見ると無意味に近づく。
そういうことを、今回の論文から考えさせられた。
今回の論文のアキレス腱の捻転分類は、日本の理学療法士である江玉睦明先生の研究が源泉だ(📕Edama et al., 2015  >>> doi.)。
その発見を足場に、礎に、今回の研究のような更なる発展を遂げる。
そのようにして、人類は、学術体系は、前に進んでいくのだなぁ、と改めて感じさせられた。
江玉先生の講義は何度も聞いたことがあって、聞くたび、素直に現象を観察することの重要性や、「こういうことがしたくて、理学療法士になったんだよなぁ」と思わされる。
病態レベルを大事にした臨床を!

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