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アキレス腱の最適化。3つの競技集団の違い


📖 文献情報 と 抄録和訳

異なる競技者集団におけるアキレス腱の材質および構造特性と定量的磁気共鳴画像法との相関性

📕Monte, Andrea, et al. "Correlations between Achilles tendon material and structural properties and quantitative magnetic resonance imagining in different athletic populations." Journal of Biomechanics (2023): 111796. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2023.111796
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:腱の弾性率(ヤング率)とは?
・ヤング率は縦弾性係数とも呼ばれ、「弾性」とは材料に外力を加えた際、その外力を取り去ると元の形状に戻る性質のこと。
・材料力学による「フックの法則」では、応力とひずみの間に比例関係があると定められ、ヤング率をEとして、垂直応力をσ、縦ひずみをεとすれば「σ=Eε」の関係式が成り立つため、材料の性質を調べる際に用いられる。
・ヤング率が大きいほど剛性の高い材料ということになり、変形のし難い材料の目安となる。

🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] アキレス腱の硬さとヤング率は、腱の機能を決定する重要な要素です。しかし、これらの評価には高度な機器と時間のかかる手順が必要である。この研究の目的は、文献で提案されている古典的なアプローチ(超音波と力のデータの組み合わせ)を用いてアキレス腱の硬さとヤング率を集団間で比較することである。

[方法] 12人の持久系・パワーアスリートと12人の健常対照者を募集した。アキレス腱の硬さとヤング率は古典的な方法(超音波とダイナモ測定の組み合わせ)を用いて評価した。

[結果]
■ アキレス腱の硬さ
・パワーアスリートは腱の硬さが最も硬かった
・パワーアスリート、持久力アスリート、健常対照でそれぞれ3064±260、2714±260、2238±189N/mm

■ アキレス腱のヤング率
・パワーアスリートは腱のヤング率が最も硬かった
・パワーアスリート、持久力アスリート、健常対照でそれぞれ2.39±0.28、1.64±0.22、1.97±0.32GPa

[結論] これらの結果は、パワーアスリートが優れたコラーゲン組織を持っていることを示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

太陽光が降り注ぐ、特定の方向にひしゃげた観葉植物。
波にもまれ、角が取れて丸みを帯びたガラス片。

最適化、という言葉がある。
現実の外部条件にもまれ、あたかも適応するように、ある物質の形態が変化していく。
物質だけではなく、無形の知識すらそうだ。
理学療法士は、学部時代に体系的に用意された全般的な知識を学ぶ。
だが、臨床現場に出ると、その現実に必要な知識だけが尖っていく。
頸部骨折患者が多ければその知識が、スポーツ選手が多ければその知識が。
そのような、現実によって鍛えられた知識を「ストリートワイズ」という。

今回抄読した論文によれば、アキレス腱の特性も競技によって最適化されているらしい。
パワー系アスリートの腱は、より強固で硬い特性となり、持久系アスリートは柔らかめの特性となっていた。どちらが優れる、というよりはその競技に必要な特性がそれを刻んだ、ということに過ぎないと思っている。

最適化された植物、石、知識、人間はある意味「イビツ」だ。
だが、用意された標準的、体系的な綺麗な、統制されたものより、
自然が、あるいはある人が現実との格闘の中で彫刻してきた「イビツ」を愛したい。

先端の波濤の要求する自己自身を最適化させ、
常に可変性を有したくば、
常に波濤に晒される彼岸にゆきたまえ

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