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アキレス腱内圧の運動特性

📖 文献情報 と 抄録和訳

アキレス腱の伸張時および遠心性負荷時の腱内圧変化: アキレス腱障害への影響

📕Pringels, Lauren, et al. "Intratendinous pressure changes in the Achilles tendon during stretching and eccentric loading: Implications for Achilles tendinopathy." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2022). https://doi.org/10.1111/sms.14285
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[背景・目的] 機械的な過負荷は、アキレス腱症の主な原因と考えられている。引張荷重に加え、アキレス腱は圧縮荷重にもさらされると考えられている。しかし、腱内圧に関するデータは不足しており、その結果、腱障害の病態生理における腱内圧の役割はまだ議論中である。そこで我々は、アキレス腱の伸張時および遠心性負荷時の腱内圧の変化を評価することを目的とした。

[方法] 12対のヒト死体脚を試験装置に取り付け、超音波ガイド下で小型圧力カテーテルをアキレス腱の4つの異なる部位(挿入部(表層と深層)、中間部、近位部)に挿入した。

腱内圧は、Bent-knee calf stretch, Straight-knee calf stretch, Eccentric heel-dropの3つの負荷条件下で測定された。

[結果] 各負荷条件において、アキレス腱の挿入部と中間部の両方で、腱内圧が指数関数的に上昇することがわかった(p < 0.001)。最も高い圧力は、挿入部深部(p < 0.001)とEccentric heel-drop(p < 0.001)で一貫して見られた。また、中間部の圧力は近位部よりも有意に高かった(p < 0.001)。

[結論] これらの観察結果は、アキレス腱症が典型的に発生する部位で高い腱内圧を示すことにより、アキレス腱症の病態生理における圧迫の役割を支持し、新しい洞察を提供する。アキレス腱症患者において、過度のストレッチを避ける、運動療法を変更する、ヒールリフトを行うなど、腱内圧の管理がどの程度有効であるかは、今後の検討が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

熟練の外科医は、レントゲン画像を見たときに、病巣や重要な箇所が浮かび上がって見えるという。
もちろん、実際にレントゲンがそのようになっているというわけではない。
それまでの経験や知識に裏打ちされたデフォルメ(強調)画像が、その外科医にだけは見えているのだ。
このように、現実への意味づけが、現実の見え方に汎化されることを『理論負荷』と呼んだりする。

✅ 理論負荷性とは?
- 科学哲学における概念のひとつ。
- 哲学者のハンソンによって提起された。
- 観察は、理論と無関係に行なわれるのではなく、理論をとおして観察が行なわれるという考え方。

さて、アキレス腱の腱内圧は目に見えるだろうか?
・・・見えない。
だからこそ、今回のような情報が重要になる。
この文献の知識を得たぼくは、カーフレイズをしている患者のアキレス腱の遠位の深いところが赤黒く見え(腱内圧↑)、近位部がブルーに見える(腱内圧↓)ことだろう。
それは、特に遠心性足関節背屈で色濃くなる。
これこそ、理論負荷。
“知は力なり”、その具体的な効能。

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