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子どもの脳血流、10-20秒の軽運動で増加


📖 文献情報 と 抄録和訳

小児の前頭前野における短時間軽強度運動時の血行動態:機能的近赤外分光法による研究

📕Naito, Takashi, Koichiro Oka, and Kaori Ishii. "Hemodynamics of short-duration light-intensity physical exercise in the prefrontal cortex of children: a functional near-infrared spectroscopy study." Scientific Reports 14.1 (2024): 15587. https://doi.org/10.1038/s41598-024-66598-6
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🔑 Key points
🔹41名の子どもを対象に、短時間で低強度運動中の前頭部の脳血流を測定した。
🔹単調な動きのストレッチでは脳血流はほとんど変化しなかったが、体を捻るストレッチなど、一定の身体的・認知的負荷を伴う軽運動ではそれが顕著に増加することが明らかになった。
🔹この結果が、今後、学校や塾など教育現場において、誰もが取り組みやすい脳を活性化する軽運動プログラムの開発に役立てられることが期待される。

[背景・目的] 脳血流を促進する運動の種類を明らかにすることは、認知機能を高める運動プログラムを開発する上で極めて重要である。それにもかかわらず、特に小児において、個人が容易に行える軽強度の短時間運動が脳血流に及ぼす影響について検討した研究はほとんどない。われわれは、機能的近赤外分光法を用いて、これらの運動が前頭前皮質(PFC)の血流動態に及ぼす影響を検討した。

[方法] 参加者は41名の小児(12.1±1.5歳、37%が女性)で、各運動を10秒または20秒の2パターンで行う軽強度の運動を7種類実施した。

✅ 軽運動と脳血流測定の詳細
・実験には7種目の運動を用いた。
・実験の手順は、7種目の低強度運動を1動作10秒と20秒の2つのパターンで実施した。
・各パターンとも1種目につき10秒の休憩を挟み2回の運動を行い、次の種目に移る際は30秒の休憩を挟んだ。
・対象者の前頭部に装着したfNIRSで各種目における安静時(運動を開始する0~5秒前)と運動時の酸素化ヘモグロビン(脳血流量を示す指標)を測定した。

安静時と運動中の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の変化を、性別と年齢を共変量として共分散分析により比較した。

[結果] 単調なストレッチ(種目A、B)では安静時と運動中に大きな変化は示されなかった。しかし、身体的負荷や認知的負荷が増す動的ストレッチ(種目C)、ひねり動作を加えたストレッチ(種目D)、手指の体操(種目E、F)、片足立ちバランス(種目G)では、安静時に比べ運動時に多くの領域で脳血流の有意な増加が示された。

[結論] 本研究は、短時間で軽い強度の運動は、それがある程度の認知的および/または身体的要求を伴うものであれば、PFCを活性化し、血流を増加させる可能性があることを示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「運動脳」, という用語がある。
これは、運動が脳に与えるさまざまな効果を指す。
運動をすることで、集中力や創造力、学習能力が向上することが科学的に示されている。
2022年に出版された『運動脳』という書籍に詳しい(amazon)。

さて、その運動脳だが、これまでの文献抄読中においても、そのいくつかを紹介してきた。
・1日1-2時間のスポーツ参加が最も学業成績を高める
・急性身体活動を1回行うことで、学齢期の青少年の学業成績が改善する

今回抄読した研究は、『じゃあ、運動脳はどんな仕組みで、またどんな運動種目で獲得しやすいですか?』という問いに一部光を当てた。
仕組みとしては、実行機能を司る前頭前野が活性化され、運動種目としては単調ではなく一定以上の身体的・認知的負荷を伴う軽運動が効果的であると思われた。
何にせよ、10-20秒で脳血流が有意に変わるということは驚きだ。
授業開始時、勉強開始時には、『片足立ちバランス』を組み込みたい。

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