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学生/新人が持ちたい心の特性:Grit(グリット)

📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士学生のグリット、レジリエンス、マインドセット、および学業成就:横断的多施設共同研究

📕Calo, Marlena, et al. "Grit, Resilience, Mindset, and Academic Success in Physical Therapist Students: a Cross-Sectional, Multicenter Study." Physical Therapy (2022). https://doi.org/10.1093/ptj/pzac038
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[背景・目的] この研究の目的は、理学療法士の学生における非認知的特徴(グリット、レジリエンス、およびマインドセットタイプ)、学業の成功、および臨床成績の間の関係を決定すること。

[方法] 自己管理調査を使用したこの横断的研究は、オーストラリアの4つの大学に在籍する最終学年の理学療法士の学生を対象に実施されました。参加者は、グリット、レジリエンス、および考え方のタイプを測定する検証済みのアンケートに回答しました。学業成績と臨床成績を定量化するために、学業成績証明書が取得された。重回帰分析では、社会人口統計学的要因、グリット、レジリエンス、および考え方のタイプに関連して、学業の成功と臨床成績の予測因子を調査した。

✅ グリット、レジリエンス、マインドセットタイプとは? & 評価方法

■ グリット
・グリットとは、ポジティブ心理学を起源とする概念であり、粘り強さ(perseverance)と情熱(passion)の2つの特性によって定義され、失敗、逆境、停滞にもかかわらず、何年にもわたって努力と関心を維持し、課題に向けて精力的に取り組むことを意味する(Duckworth, Peterson, Matthews, & Kelly, 2007, pp.1087–1088)。
・ 8 項目スケールであるグリット S スケール(Grit-S scale)を介して測定された(📕Duckworth, 2007 >>> doi.)

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■ レジリエンス
・レジリエンスとは、「逆境、心的外傷、悲劇、脅威、あるいは家族や人間関係の諸問題、深刻な健康問題、職場や経済的なストレス要因から派生した重大なストレスに直面したときに、それにうまく適応する過程」であるとしている。さらに、レジリエンスは、必ずしも特定の人がもつパーソナリティ特性ではなく、レジリエンスには、誰でもが学習し発達させることができる行動・思考・行為が内包されているとしている(🌍American Psychological Association, 2020 >>> site.)。
・ 3 項目スケールである簡易レジリエンス スケール (Brief Resilience Scale, BRS) (📕Smith, 2008 >>> doi.)
・ 30 項目スケールであるアカデミック レジリエンス スケール (Academic Resilience Scale, ARS) によって測定された(📕Cassidy, 2015 >>> doi.)

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■ マインドセットタイプ
・マインドセットタイプは、自分の知性や能力は変更可能であると個人が信じる程度として定義され、スペクトルの一端は固定マインドセットと呼ばれ、反対側は成長マインドセットと呼ばれる(📕Dweck, 1988 >>> doi.)
・8 項目の暗黙の知性理論アンケートから採用された 16 項目の尺度 (Dweck 1999) である Dweck Mindset Instrument (DMI) によって測定された(📕Cook, 2017 >>> doi.)

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[結果] 合計266人の学生が研究に参加した(80%の募集率)。全体として、生徒の25%は回復力が低く、20%はグリットが低く、14%は固定されたマインドセットを持っていた。グリットは、学業の成功(r  = 0.24)および臨床成績(r  = 0.22)と正の相関があり、臨床配置の失敗(r  = -0.20)と負の相関があった。グリットは、全体的な学業成績(β= 0.24、 P≤.01)および臨床成績(β= 0.15)の独立した予測因子だった。グリットが低い学生は、グリットが中程度または高い学生と比較して、臨床配置に失敗する可能性が2倍だった(リスク比= 2.03、95%CI = 1.06〜3.89)。

[結論] グリットは、最終学年の理学療法士の学生の全体的な学業成績と臨床成績の独立した予測因子だった。低グリットは、大学の研究や臨床教育に関連する課題に対処する学習と学生の能力に悪影響を与える可能性がある。さらなる研究では、健康専門学生のグリットを最もよく発達させる介入と、グリットの重複する性質、回復力、および成長の考え方を調査する必要がある。

[臨床意義] この研究は、大学と教育者が理学療法士の学生の学業の成功と臨床成績を予測する非認知的要因を理解するのに役立つ。大学や臨床教育者は、成功と一般的な幸福を改善するために、グリットの低い学生にスクリーニングと積極的な戦略を提供することを検討するかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

客観評価は現在地を示す。
例えば、筋力の評価は、当たり前だが現在の筋力を示す。
主観評価は、これから向かう方向性を示す。
例えば、グリットが高いことは将来の筋力の増大を示すかもしれない。

そして、学生や新人にとって大切なものは『これから』である。
これから、どうなっていくか。成長か、停滞か。
その矢印の角度を規定するものが「心」のありようだ。
今回抄読の研究は、その心のありようにおいてグリット(Grit)が特に重要であることを示した。
このグリット、学生・新人にとっては自身が獲得したい心のありようになる。一方、ベテランにとっては人事考課や人材採用の視点の1つとして有用かもしれない。

ここから余談。
グリット、僕は『名前がかっこいい!』と思う。
大好きな名前の1つだ。
響きが良いし、リズムもあるし、歯切れがいい。
そして、事前に意味付けされていない。
例えば、海外で座位行動を減らすための身体活動量プログラムの名前に『SWAL介入(SMART Work and Life)』というものがある。
「座位行動を減らすための名前なのにスワルかい!!」、と日本人は思ってしまう。つまり、事前に真意とは異なる意味づけがなされている場合、その名前の真意を知るために抑制性制御が1つ必要になるのだ。
その点、Gritは、無着色だと思う。
まったく知らない言葉だ。
だから、よく乾いたスポンジがぐんぐん水を吸収するように、その真意 ≒ 名前となってくれやすいのだろう。

日本のことわざに「七転び八起き」というのがある。
私がもしタトゥーを入れるとしたら、この言葉を刻みたい。
何度転んでも起き上がる。それがすべてだ。

アンジェラ・ダックワース

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