急性腰痛後、1年間の疼痛経過パターン
📖 文献情報 と 抄録和訳
急性腰痛の経過:地域ベースの初期コホート研究
[背景・目的] 急性腰痛症(low back pain, LBP)は、その再発の可能性と長期的な影響についてますます認識されるようになっている。目的:この地域ベースの初期コホート研究は、急性腰痛の1年間の経過を明らかにし、関連する生物心理社会的変数を調査することを目的とした。
[方法] 急性LBPを有する176人の参加者を52週間にわたり5つの追跡時点でモニターした。潜在クラス線形混合モデルを用いて疼痛の軌跡を同定し、多項ロジスティック回帰を用いてベースラインの生物心理社会的因子との関連を評価した。
[結果] 4つの異なるLBP軌跡が識別された:
1. Mild/Moderate fluctuating pain(黒線):
・患者数:95名(54.0%)
・特徴:軽度から中等度の痛みが時間とともに変動する。初期の痛みは高く、その後一旦減少し、中程度に増加するが、再び減少する傾向が見られる。
2. Delayed recovery by week 52(赤線):
・患者数:11名(6.2%)
・特徴:痛みが徐々に減少するものの、52週目まで完全に回復しない。このグループは最初に強い痛みを感じ、その後徐々に痛みが和らぐが、完全には消えない。
3. Persistent moderate pain(緑線):
・患者数:58名(33.0%)
・特徴:中等度の痛みが持続する。痛みの強さはほぼ一定で、時間の経過とともに大きな変動は見られない。
4. Moderate/severe fluctuating pain(青線):
・患者数:12名(6.8%)
・特徴:中等度から重度の痛みが時間とともに変動する。初期の痛みが強く、一旦減少するが、再び増加し、52週目にかけて痛みが再び強くなる傾向が見られる。
ベースラインの疼痛強度の増加およびLBPエピソードの既往は、より好ましくない経過と有意に関連していた。予想に反して、ストレス、不安、抑うつなどの心理学的変数は、好ましくない経過と有意な関連を示さなかった。
[考察] 急性LBPはさまざまな経過をたどる可能性があり、参加者の半数近くがあまり好ましくない経過をたどっていた。ベースラインの疼痛強度と過去のLBPエピソードが重要な因子として浮上したが、心理学的変数は顕著な影響を及ぼさなかった。これらの軌跡を認識することは、患者管理の改善と的を絞った介入に必要であろう。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
臨床現場において疼痛が発生したとき。
重要なことは、その病態レベルの原因を明らかにすることだ。
同じNRS5の強度の疼痛であっても、それが前日の筋トレ後の遅発性筋肉痛であることと、骨折部位に生じている骨性の疼痛であることは、大きく意味合いが異なってくる。
なぜなら、その後の経過や治療が全く変わってくることが予測されるからだ。
今回の抄読研究は、急性腰痛において、異なる4つの疼痛経過パターンがあることを示してくれた。
この4つの曲線の下に、病態レベルの正体があるのだと思うが、今回の研究ではそこまで迫ってはいない。
今後は、この疼痛経過パターンを示しうる予測因子を明らかにしていくことが重要だろう。
それらの予測因子がわかれば、未来の疼痛経過パターンがわかり、さらに進めば、治療による疼痛経過に期待される効果まで推測できるようになるかもしれない。
とても重要で、更なる研究が期待される領域である。
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