老化は二峰性に進む
📖 文献情報 と 抄録和訳
ヒトの加齢に伴うマルチオミックスプロファイルの非線形動態
[背景・目的] 老化は、ほぼすべての疾患と関連する複雑なプロセスである。老化の根底にある分子変化を理解し、老化関連疾患の治療標的を特定することは、健康寿命を延ばすために極めて重要である。
[方法-結果] これまでに多くの研究で老化の線形変化が探求されてきたが、特定の時点を過ぎると、老化関連疾患の有病率と死亡率リスクが加速的に上昇することから、非線形分子変化の研究の重要性が示された。本研究では、25歳から75歳までの108人のヒトコホートを対象に、包括的なマルチオミックスプロファイリングを行った。参加者は米国カリフォルニア州在住で、追跡期間は中央値で1.7年、最長で6.8年であった。3〜6カ月ごとに血液、大便、皮膚・鼻腔・口腔スワブ(ぬぐい液)を採取して分析し、その分子的な活性を測定した。13万5000種類以上に及ぶ分子(代謝産物、脂質、タンパク質、RNAなど)や微生物を調べた。分析の結果、加齢に伴う分子マーカーに一貫した非線形パターンが認められ、実質的な機能異常が、年齢にして約44歳と60歳の2つの大きな時期に発生していることが明らかになった。
また、60歳までの期間と40歳までの期間でそれぞれシフトした免疫調節や炭水化物代謝、心血管疾患、脂質代謝、アルコール代謝などの、これらの期間に関連する特定の分子や機能経路も特定された。
[結論] 全体として、この研究は、加齢関連疾患の機能とリスクが人間の寿命を通じて非線形的に変化することを示しており、これらの変化に関与する分子および生物学的経路についての洞察を提供しています。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
「〇〇代くらいから一気に・・・」という話は、患者さんとの話の中でよく聞く話だ。
僕は、この話を聞いて「まあグラデーション的に進んでいる老化に対して、ある閾値を超えたときに気がつくというものなのだろう」と思い込んでいた。
だから、今回抄読した研究の結論を見て驚いた。
患者さん達が話していた経験則は、事実を描写したものだったのだ。
老化はグラデーション的に進むわけではなくて、二峰性に一気に進む。
この事実を見たときに、理学療法士である僕としては、「じゃあ、運動による老化防止、ヘルシーエイジングへの効果も時期によって変わったりするんじゃないか?」ということを思った。
つまり、44歳と60歳の前後をターゲット期間として集中的な運動を処方すると効果が上がるのではないか、という感じのことだ。
事実(鍵穴)を真っ向から見つめると、何らかの鍵を作ることができそうだ。
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