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ACL再建術後2~7年。下肢関節間力はどうなった?

📖 文献情報 と 抄録和訳

ACL再建後2~7年の歩行および走行時の下肢関節接触力の対称性

📕Padhye, Ankur Anand, et al. "Lower extremity joint contact force symmetry during walking and running, 2–7 years post‐ACL reconstruction." Journal of Orthopaedic Research® 42.5 (2024): 1009-1019. https://doi.org/10.1002/jor.25751
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[背景・目的] 前十字靭帯再建術(anterior cruciate ligament reconstruction, ACLR)後の早期変形性膝関節症は、アスリートによくみられる。ACLR後の膝関節接触力の低下は、おそらくこの疾患の多因子性病因に寄与している。この減少が、隣接関節や対側関節の関節接触力(joint contact forces, JCF)の代償的増加を伴うかどうかは不明である。また、代償作用が作業要求によって異なるかどうかも不明である。そこで、再建を行った患者とマッチさせた対照群との間で、歩行時およびランニング時の股関節、膝関節、足関節のJCF対称性を比較した。

[方法] 片側ACLR後2~7年(平均47.8ヵ月)の30名(女性19名)と、性別、体重、活動レベルをマッチさせた30名の対照群を募集した。歩行時と走行時の各関節について、ピーク接触力と力インパルスの四肢対称性指標を算出し、2因子(群、活動)の分散分析を用いて分析した。

[結果] ACLR群では、歩行時と走行時の膝関節JCFピーク値(p = 0.009)と膝関節JCFインパルス(p = 0.034)が低いことが観察された。股関節のピークJCFについては、グループとアクティビティの交互作用が観察され、ACLR群ではランニング中の股関節のピークJCFがより大きかった(p = 0.012)。足関節JCFと地面反力対称性指標は、群間でも課題間でも差はなかった。

[考察] ランニング中の膝関節ピークJCFの減少と同側の股関節ピークJCFの増加は、ACLR後2~7年で、特に課題要求が増加する活動中に、近位の適応が存在することを示唆している。臨床的意義 ACLR後2~7年における膝と股関節のJCFの非対称性は、そのような転帰を特定し目標とするための臨床戦略と追跡評価の必要性を強調するかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

鶴は千年、亀は万年。
生物には、その種に固有の寿命がある。
そして、寿命に応じた『成長曲線』がある。
たとえば、人間の寿命は80-100年間として、十数年かけて成長/成熟し、成人に至る。
一方、カエル(アマガエル)では寿命が数年、オタマジャクシ→カエルが1-2ヶ月。
その前提を知っているかどうかで、目の前の現象の価値づけが変わる。
「生まれて3ヶ月経った。まだ寝てるんだけど・・・」
これは、人間においては「普通」だが、カエルにおいては「間違いなく問題」である。
このように、その種固有の成長曲線を知っていることは、特に親にとって重要だ。

一方、リハビリテーション医療に関わっていると、疾患や症状固有の『回復曲線』あることを知る。
・筋肉痛なら数日
・創傷なら2週〜4週
・骨折ならその部位によって(Gurlt & Coldwell)
・脳卒中の運動麻痺なら3-6ヶ月

今回の抄読研究は、ACL再建術後の下肢関節間力に関して、2~7年後の動向を調査した。
その結果、2~7年という長期間の経過後であっても、膝関節の関節間力は術側で弱く、股関節の関節間力が代償的に増大していることが明らかとなった。
ACL再建術に留まらず、下肢外傷後の患者さんは無意識的に損傷側を保護的に使用している。
非対称性を改善するためには、外的なフィードバックを伴う練習を継続することが必要なのかもしれない。
ただ、非対称性を改善することが良いかどうか、という部分にはまた別個の考察が必要になるところである。
今回の研究の教訓として、長期的にであっても、完全に対称性は改善しない場合が多い、ということ。

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