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運動誘発性痛覚低下神経メカニズムの解明-Ⅲ

📖 文献情報 と 抄録和訳

運動トレーニングは脳機能を増強し、慢性疼痛を持つ成人の痛み知覚を軽減する:介入研究の系統的レビュー

📕Palmer, Kierstyn L., et al. "Exercise Training Augments Brain Function and Reduces Pain Perception in Adults with Chronic Pain: A Systematic Review of Intervention Studies." Neurobiology of Pain (2023): 100129. https://doi.org/10.1016/j.ynpai.2023.100129
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🔑 Key points
🔹慢性疼痛(Chronic pain, CP)とは、3ヶ月以上続く痛みのこと。
🔹12週間を超える運動介入は、CPに苦しむ人々の脳機能と痛みの知覚を改善する。
🔹皮質辺縁系、デフォルトモード、背外側前頭前野が重要な脳領域であるようだ。
🔹運動介入後のCPの主観的体験の改善には、脳機能の変化が関与している可能性がある。
🔹運動は、脳機能へのポジティブな影響により、CPを管理するための費用対効果の高い治療法である可能性がある。

[背景・目的] 慢性疼痛(CP)は、世界中で身体障害の主な原因となっている。痛みは主観的な質問票によって測定されるが、脳機能などの基礎となる生理学を理解することによって、予後を改善することができる。さらに、CPの管理には、費用対効果の高いライフスタイルの修正が必要であることが分かってきた。

[方法] 成人のCP患者における脳機能および痛覚・QOLに対する運動の効果を評価するため、4つのデータベース(Pubmed、EMBASE、AMED、CINAHL)から検索した論文を用いてシステマティックレビュー(登録:#CRD42022331870)を実施した。

[結果] 検索した結果、1879件の論文が見つかり、除外した結果、10件が最終レビューに含まれた。研究参加者は、変形性関節症または線維筋痛症のいずれかと診断された。ただし、2つの研究では、「線維筋痛症および腰痛」または「線維筋痛症、腰痛、複合性局所疼痛」が含まれていた。12週間以上の運動介入(n = 8/10)は、脳機能を変化させ、疼痛および/またはQOLのアウトカムを改善した。大脳皮質-辺縁系経路、デフォルトモードネットワーク、背外側前頭前野が、介入後に変化を経験した主要な領域であった。また、脳機能の改善が報告されたすべての研究で、痛みの知覚やQOLの改善も確認された。

[結論] 本稿では、脳機能、特に皮質辺縁系、デフォルトモード、背外側前頭前野の変化が、CPの主観的体験の下流での改善に関与している可能性を示唆した。適切なプログラム(すなわち、介入期間)により、運動は脳の健康に良い影響を与え、CPを管理するための実行可能な選択肢となる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、運動誘発性痛覚低下(EIH; exercise-induced hypoalgesia)の威力とメカニズムについて、いくつかの文献抄読をしてきた。

今回のレビュー論文は、神経メカニズムの中でも「関連する脳活動」についてを教えてくれた。
レビューの結果、大脳皮質-辺縁系経路、デフォルトモードネットワーク、背外側前頭前野という領域が運動誘発性痛覚低下において重要であることが示唆された。

Exercise is Medicine、運動は薬である。
そして、運動がなぜ薬なのか、その仕組みまでもが知られつつある。
痛いから動かない?
No!痛いから、動くのだ。治すために。
EIHの概念は、僕たち理学療法士の仕事を、全肯定してくれる。

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