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『5人に1人』しか、ガイドライン推奨を満たせていない

📖 文献情報 と 抄録和訳

有酸素運動および筋力強化活動のガイドラインの遵守:32カ国、330万人の参加者を対象とした系統的レビューとメタ分析

📕Garcia-Hermoso, Antonio, et al. "Adherence to aerobic and muscle-strengthening activities guidelines: a systematic review and meta-analysis of 3.3 million participants across 32 countries." British journal of sports medicine 57.4 (2023): 225-229. http://dx.doi.org/10.1136/bjsports-2022-106189
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🔑 Key points
🔹青年と成人の5人に1人しか、有酸素運動と筋力強化の複合的な活動の国際的なガイドラインを満たしていない。
🔹身体活動は、性別、年齢、肥満度、教育レベル、喫煙状況、自己評価による健康状態とは無関係に、非常に低いままである。

[背景・目的] 5 歳以上の集団における有酸素運動および筋力強化運動(muscle-strengthening activities, MSA)の WHO ガイドラインを満たす世界的な有病率を推定し,可能な限り社会人口学的およびライフスタイルの要因に応じた有病率を調査すること。

[方法] デザイン:システマティックレビューとメタアナリシス。データソース:創刊から2022年9月までに発表された研究を5つのデータベースで系統的に検索した。研究選択の適格基準:有酸素運動とMSAの両方のガイドライン(推奨事項は図を参照)を満たす有病率を報告した5歳以上の代表的なサンプルを持つ論文を対象とした。

[結果]
■ ガイドライン遵守率
32か国からなる21件の研究を対象とした。18歳以上の成人(n=3,346,723)における有酸素運動およびMSAガイドラインの遵守率は全体で17.12%(95%CI 15.42%~18.88% )であった。12~17歳の青年では、両ガイドラインの遵守率は19.74%(95%CI 14.72%~25.31%)(n=43 278)であった。5~11歳の小児についてデータを報告した研究はなかった。

■ ガイドライン遵守率に影響を与える因子
・成人では、女性、高齢、低/中教育レベル、低体重または肥満、自己評価の低い健康状態、中程度の健康状態が、身体活動ガイドラインの遵守率の低さと関連していたが(p<0.001)。
・小児および青年については、研究数が少ないため、サブグループ解析は行わなかった。

[結論] 青少年および成人の5人に1人だけが、推奨される有酸素運動とMSAを組み合わせたガイドラインを満たしていた。非伝染性疾患の関連負担を軽減するために、両方のタイプの運動を促進する大規模な公衆衛生介入が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

● 有酸素運動:150-300分/週
● 筋力トレーニング:2日/週

この二行をつくるために、どれだけの労力、どれだけの資源、どれだけの時間がかかってきたことだろう。
たくさんの人が、たくさんのお金と時間をかけてつくり上げてきたガイドライン推奨事項。
それを遵守できている人は、たった『5人に1人』だという。

そもそも、このガイドラインをどのくらいの人が知っているだろう。
少なくとも、即答できるほどに明確な知識を有している者は少ないだろうと思う。
ガイドライン推奨事項は、つくられただけで、及ぼしている変化は小さいのかもしれない。

料理は、料理人によってその料理が作られた時点では、何にもなっていない。
その素晴らしい料理を客が知って、
食べることで、
はじめて人間の血肉になる、感動を生む。
それが、創造物によって世の中が変わるということだと思う。
同じように考れば、ガイドライン推奨事項は「実践」されなければ、食べられない料理と一緒だ。

僕の大好きなTED talkの動画に『ムーブメントの起こし方』がある。
(3分間の短い動画、是非見ていただきたい)

ムーブメントは、創造者が起こすのではない。
その創造物をいの一番に利用した二番手、フォロワーが起こすのだ。
だから、ガイドライン推奨ができた時点より、その次のフェーズが重要となる。
僕たちが、その推奨事項について、どう考え、どう動くか。
啓発ポスターをつくり、入院患者や退院支援に生かし、モニタリング・フィードバックによって実践を促すか。
その推奨事項が、世の中にムーブメントを起こすか否か。
その舵は、大袈裟ではなく、僕たちが握っているのだ。

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