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脳血管性認知症。その病態メカニズム


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳血管性認知症:病態生物学から新たな展望まで

📕Morgan, Amy Elizabeth, and Mark Tomás Mc Auley. "Vascular dementia: From pathobiology to emerging perspectives." Ageing Research Reviews (2024): 102278. https://doi.org/10.1016/j.arr.2024.102278
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✅ 前提知識:脳血管性認知症とは?
・脳血管性認知症とは、脳組織への血液供給が減少または途絶し、脳組織が破壊されることにより精神機能が失われる病気
・原因は通常脳卒中であり、少数の大きな脳卒中による場合もあれば、多数の小さな脳卒中による場合もある
・ 脳に血液を供給する血管が損傷される病気(通常は脳卒中)は、認知症を引き起こす可能性がある。

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[レビュー概要] 脳血管性認知症(Vascular dementia, VaD)は2番目に多い認知症である。VaDは老化と同義であり、その症状は高齢者の健康とウェルビーイングに大きな負担を与える。VaDの危険因子は数多く同定されているにもかかわらず、この疾患を支える病理学的メカニズムはまだ十分に解明されていない。そのため、VaDの発症リスクを軽減しうる修正可能な生活習慣因子を明らかにすることが、生物老年学的に求められている。本総説では、VaDリスクを調節することが明らかにされているいくつかの因子を批判的に検討する。まず、VaDの病態に関連すると考えられているメカニズムについて概説する。次に、VaDの発症リスクに影響を及ぼす要因について検討する。最後に、エピジェネティクス、腸内細菌叢、長寿のための医薬品など、新たな治療法について論じている。これらの重要なエビデンスをまとめることで、この分野における今後の実験的研究に役立てたい。

■ 脳血管性認知症の病態メカニズム
・VaDに関連する危険因子:粗食, 肥満, 高血圧, 高コレステロール血症, 持続的な多量のアルコール摂取, 糖尿病, 喫煙, 身体活動, 身体活動不足, 大気汚染
・高齢者では、血管病変は動脈硬化、脳動脈のアテローム性動脈硬化、脳アミロイド血管症(CAA)によって引き起こされる傾向がある
・動脈硬化は虚血性脳卒中を引き起こす可能性があり、その発症率はVaDと強い相関がある(📕Katon et al., 2022 >>> doi.)。
・発症機序に関しては、アテローム性動脈硬化と動脈硬化の両方が皮質脳微小脳梗塞(CMI)に関連している(📕 Hainsworth et al., 2024 >>> doi.)。
・動脈硬化とアテローム性動脈硬化が影響するいくつかの過程があり、CMIの発症に影響を与える可能性がある。
・CMIは、動脈硬化の二次的影響である脳血流障害によって引き起こされる脳低灌流によって誘発される可能性がある。
・下図には、VaDの病態に寄与する可能性のある動脈硬化の他の下流作用が示されている。
・その経路の中心は酸化ストレス、マイクロRNA(miRNA)、血行動態の変化、神経血管系の損傷、血管の形態形成である。
・動脈硬化は加齢に伴うものであり、この過程は血液脳関門(BBB)に悪影響を及ぼす可能性がある。
・酸化ストレスと炎症もまた、VaDの病態における重要な因子であると考えられている。

■ 脳血管性認知症の合併症
・VaD診断時に患者の3分の2(65.9%)が高血圧であったことが明らかにされている(📕Chung et al., 2023 >>> doi.)。
・慢性腎臓病(26.8%)、心房細動(26.1%)、脳卒中(25.3%)、うつ病(22.2%)、がん(21.8%)、糖尿病(20.3%)、狭心症(19.4%)、先天性心疾患(16.1%)、一過性脳虚血発作(15.5%)、動脈硬化性心疾患(14.7%)、甲状腺機能障害(12.9%)、心不全(12.2%)など
・さらに、VaDと診断された時点で、79.4%の人が2つ以上の合併症を有していることが観察されている(📕Chung et al., 2023 >>> doi.)。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

脳卒中後に、脳血管性認知症が生じる場合がある。
だが、当然のことなのだが、生じない場合もある。
その違いとは何だろう。
そして、そこに理学療法、リハビリテーションは何かの影響を及ぼせるだろうか。

今回抄読したレビュー論文は、その需要に対していくつかのヒントを与えてくれた。
脳血管性認知症の病態メカニズムについての分かりやすい図が示された。
特に注目したいところは、その関連図のはじまり、リスク要因である。
そのリスク要因の中に、食生活、肥満、高血圧、糖尿病、運動不足など、理学療法が影響を及ぼせる因子がたくさんあった。

脳卒中になったときに、認知症になる、ならない。
その岐路をどちらに行くか。
その部分に対して、ライフスタイルの指導、運動習慣の獲得は有効かもしれない。
その仕組みとなる背景を知れたことは、指導時の目力を少し増すかも知れない。

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