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認知症者の日常生活。最も重要なことは何か?

📖 文献情報 と 抄録和訳

最も重要なこと:認知症の人の日常生活を探る

📕Huizenga, Jacoba, et al. "What matters most: Exploring the everyday lives of people with dementia." International journal of geriatric psychiatry 38.8 (2023): e5983. https://doi.org/10.1002/gps.5983
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[背景・目的] 認知症者にとって何が最も重要であるかについての研究は、その人に合った介入や支援を開発する上で極めて重要である。本研究では、認知症患者が日常生活をどのように体験しているかを調査し、在宅で最良の生活を送るために何が重要であるかを明らかにした。

[方法] 現象学的アプローチに触発され、15人の認知症患者と公開面接を行い、自宅見学と歩行面接で補足した。データ収集は参加者1人につき1~3回のセッションを行った。データは記述的内容分析を用いて分析され、オープンコーディング、アキシャルコーディング、セレクティブコーディングの段階に従った。分析中、7人の認知症患者からなる共同研究者グループが、浮かび上がった所見の解釈を助けるために意見を求めた。

[結果] 日常生活で最も重要なことの6つの次元が特定された:

1) 有意義な活動に参加する:日課、家事、余暇、日中活動、ボランティアや仕事など
2) つながりの感覚を保つ:家庭内、家族、友人、グループ、近隣との関係において、つながりの感覚を保つこと
3) 帰属意識を持つ:家庭内外の愛着、大切なものへの愛着など
4) 自己とつながる:過去の経験を振り返り、今この瞬間を生き、未来を予測する能力を含む
5) 変化への適応:感覚的知覚の変化、物理的環境の知覚、対人関係のダイナミクスの変化へのナビゲーションを含む
6) 助けやサポートを受け入れる:専門家、地域社会、社会からの支援やサポートを受け入れること

[結論] 認知症の人にとって、日常生活は最も重要なことと、日々達成できることの間でバランスをとり続ける行為である。これは認知症に関連するだけでなく、生活史、人間関係のネットワーク、物理的環境といった広い視野にも組み込まれている。この研究は、人中心の支援を提供するために、認知症の人にとって最も重要なことを特定することの重要性を強調している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

“自宅復帰” って、超がつくほど重要なことだ、こと患者さんにとっては。
自宅復帰が可能かどうか、というのは入院中のリハビリテーションを貫く一本の太い柱であり、主題である。
この可否をめぐって、さまざまなドラマが起こるのだが、「どうして自宅復帰って、患者さんにとってこれほど重要なのだろう?」と思い続けてきた。

今回抄読した研究が、その答えの一端を示してくれたように思う。
今回の結果によれば、日常生活で重視していることの多くに、「自宅という場所」「自宅にいる人」「自宅の周辺環境」が関わってくる。
自宅復帰しないということは、これら重要な事柄が、ハサミでバッサリ切るように切り離される、という感覚に近いのではないか。

単なる場所、ではないのだ。
そこで生きてきた時間、人、想い、関係、習慣…。
そのすべてが、重要というか、その人を形成している一部、とまで言えるのかもしれない。
自宅復帰に躍起になっている患者さんの気持ちに、少しだけ近づけた気がした。

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