認知症者と移動の自由
📖 文献情報 と 抄録和訳
移動の自由が認知症患者の健康に及ぼす影響:系統的レビュー
[背景・目的] 認知症の入居者を危害から守るため、ナーシングホーム(nursing homes, NH)ではしばしば閉鎖的な方針をとっている。しかし、現在の研究では、移動の自由、すなわち、ある場所から別の場所へ独立して移動する(ことを決定する)権利が、認知症のあるNH入所者の健康に良い影響を与えることが示唆されている。このシステマティックレビューの目的は、認知症患者における移動の自由が健康に及ぼす影響について、これまでに発表された科学的証拠を照合し、要約し、統合することである。
[方法] 2021年3月までに複数のデータベースを検索した。査読のある質的、量的、混合法の研究を対象とした。健康は、身体機能、精神機能と知覚、実存的次元、生活の質、社会・社会参加、日常機能の6つの次元を包含するPositive Healthの枠組みを用いて運用された。対象研究の質は、Mixed Methods Appraisal Toolを用いて評価した。
[結果] 16の研究が含まれ、その質は良好から優れたものであった。閉鎖的なNHと比較して、セミオープンNHやオープンNHにおける移動の自由は、身体機能、精神機能、知覚、QOL、社会的・社会的参加に良い影響を与える可能性がある。日常生活機能や実存的次元への影響についてはまだ不明である。
[考察] NHの認知症患者の移動の自由は、他の要因が健康上の利益に寄与している可能性のある、より大きな文脈の一部として研究されることが多い。したがって、移動の自由が健康に及ぼすプラスの影響の根底にあるメカニズムを解明するためには、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
僕たちは、ついつい安全圏を広げがちだ。
それは、近年の公園や子どもの体育の授業などで顕著である。
この遊具は危ないから、はい撤去。
この競技は危ないから、はい除外。
だが、よくよく考えてみたいのだが、安全圏をつくることは、安全で無い体験の除外を意味する。
尊い体験・経験を、安全圏という囲いで奪うことは、許されることなのだろうか?
今回の論文は、こと認知症者の移動の自由についての話題を提供してくれた。
結果を見ると、移動の自由は多くの生長の機会であるように思われた。
だが一方で、安全性や他者のウェルビーイングには移動が制限されている方がプラス。
結局、安全圏を設けているのは、いつだって “他人”(管理者,保護者 etc) なのかも知れない。
その “他人” にとってのエゴとしての移動制限なのか、あるいは当人にとって真の意味合いをもった移動制限なのか。
いまだに、その境界線は分からないでいる。
考え続けたい、ここは。
テクノロジーが手を貸してくれる部分もあるだろうし。
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