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MoCA-H。難聴者のための認知機能評価


📖 文献情報 と 抄録和訳

聴覚障害者のためのモントリオール認知評価(MoCA-H)の開発と検証

📕Dawes, Piers, et al. "Development and validation of the Montreal cognitive assessment for people with hearing impairment (MoCA‐H)." Journal of the American Geriatrics Society (2023). https://doi.org/10.1111/jgs.18241
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🔑 Key points
🔹75歳以上の75%以上に聴覚障害がある。
🔹聴覚障害は認知スクリーニング検査の成績に影響を及ぼし、認知機能障害を過大評価する結果となる。
🔹成人の聴覚障害者のためのモントリオール認知機能検査の開発と検証を報告する。
🔹なぜこの論文が重要なのか?:MoCA-Hは、聴覚障害者のために初めて完全に検証された、感度、信頼性の高い認知スクリーニングテストである。

[背景・目的] 聴覚障害は高齢者に多くみられ、認知症の鑑別のための認知機能評価に影響を及ぼす。我々は、聴覚障害者のためのモントリオール認知機能評価(Montreal Cognitive Assessment, MoCA)を開発し、検証した。

[方法] 既存のMoCA 8.1項目を聴覚障害者用に改良し、指示や刺激を話し言葉ではなく筆記体で提示した。注意領域1項目と言語領域2項目は、代替項目による置換が必要であった。それぞれ3項目と4項目の候補を作成し、筆記体に適応させた項目とともに実地テストを行った。個々の項目分析と項目の置換を組み合わせて、MoCA-Hの最終版に含まれる代替項目を選択した。その後、人口統計学的因子に対する必要な調整を含め、最終的なツールの性能と信頼性を評価した。

[結果] 聴覚障害者159名(認知機能正常者76名、認知症患者83名)がMoCAの適合版に回答した。さらに健聴者97名が標準MoCAとMoCA-H用に開発された新規項目を記入し、既存MoCA項目と代替MoCA項目のスコア同等性の評価と聴覚障害からの独立性の評価を行った。28名の参加者は、最初のテストから2~4週間後に再テストを受けた。最適な項目セットの選択後、最終的なMoCA-Hの曲線下面積は0.973(95%CI 0.952-0.994)であった。24点以下のカットポイントでは、認知症の感度は92.8%、特異度は90.8%であった。テスト-リテスト信頼性のクラス内相関は0.92(95%CI 0.78-0.97)であった。

[結論] MoCA-Hは成人後天性聴覚障害者の認知症を同定する感度および信頼性の高い手段である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「この方は、聞こえなくて点が取れていないのか、認知機能低下により点が取れていないのか、判別が難しいです」

このような会話は、しばしばカンファレンスにおいて聞かれる。
だが、このような問題に出くわすであろうことは、もうわかっているではないか。
最近の研究によれば、高齢者の感覚障害のうち、71-79歳では51%、80歳以上では74%が聴覚障害を有している。

その聴覚障害者への認知機能検査が、なぜない!?、と感じていた。
今回の論文は、まさにその部分の扉を開ける鍵となるツールだろう。
認知機能検査の口頭試問が必要な部分を筆記にした。
なんとも簡単なこと、だがコロンブスの卵だ。

HDS-R、MMSEにおいて、このようなツールが作成されることは望ましいことだと思う。
切実なリサーチクエッションができた。

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