アスリートのTHAリスク
📖 文献情報 と 抄録和訳
エリートスポーツ後の人工股関節全置換術のリスク:3304人の元世界トップクラスのアスリート
[背景・目的] 現在、変形性関節症(osteoarthritis, OA)の治療法はないが、重度の股関節変性症には人工股関節全置換術(total hip arthroplasty, THA)が必要となることがある。 エリートスポーツ選手のOAに関する文献は限られている。 私たちは、エリートアスリートとしての活動が、その後の人生でTHAを受けるリスクを高めるという仮説を立てた。
[方法] ノルウェーの世界トップクラスの元アスリート(女性1402人、男性1902人、1936年から2006年の現役)のコホートを、ノルウェー人工関節登録(1987年から2020年のTHA実施)と関連付けた。75歳時点での標準化発生比(SIR)、1-Kaplan-Meier法、相対コックス回帰(相対HR、RHR)、95%信頼区間(CI)、およびファネルプロットを用いて、異なるスポーツ種目、スポーツ種目の関節への衝撃カテゴリー、および性別によるTHAリスクを評価した。 また、対応するノルウェーの一般人口におけるTHAリスクを基準値として用いた。
[結果] 75歳時点におけるTHAのリスクは、一般人口と比較して、元エリートアスリートでは全体的に増加していることが分かった(SIR 2.11、95%CI 1.82~2.40)。75歳時点でのTHAリスクは、女性アスリートでは11.6%、男性アスリートでは8.3%であった。SIRは女性で1.90(95% CI 1.49~2.31)、男性で2.28(95% CI 1.87~2.70)であった。男性では、関節への衝撃が大きいスポーツ種目は、衝撃が小さいスポーツ種目に比べてリスクが高かった(RHR 1.81、95% CI 1.06~3.08、p=0.029)。
この図は、Kaplan-Meier法を用いた解析によって、エリートアスリートと一般集団における人工股関節全置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)のリスクを示している。図は、性別ごとに分けられたリスク曲線が描かれており、女性(左)と男性(右)のグラフが示されている。
[結論] エリートアスリートであったことは、男女ともに一般人口と比較してTHAリスクが2倍になることと関連していた。関節への衝撃が大きいスポーツ種目は、男性アスリートにとってTHAのリスク要因であった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
本格的なスポーツを経験された人なら頷いていただける話だと思うのだが、『一番大切な関節はどこですか?』と聞かれた時には、『股関節』と答えるだろう。
股関節が使えるか、使えないか、ということはパフォーマンスや傷害リスクに大きな影響を与える。
裏を返せば、アスリートの股関節にはそれだけの負荷がかかっているかもしれない。
今回の抄読研究は、それをTHAリスクという側面から一部証明した。
エリートアスリートのTHAリスクは一般集団と比較して、約2倍となっていたのだ。
これは、股関節を酷使するスポーツにおいて仕方のない結果なのかもしれないが、理学療法士としては、何か対策を考えていきたいところでもある。
勉強を続けたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び