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母趾外転筋を最も活性化する運動は?


📖 文献情報 と 抄録和訳

9種類の足部運動における母趾外転筋の活性化と内側縦アーチ角の比較

📕Katakura, Mai, et al. "A comparison of abductor hallucis muscle activation and medial longitudinal arch angle during nine different foot exercises." Gait & Posture (2024). https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2024.06.008
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✅ 前提知識:母趾外転筋が, なぜ重要なのか?
1. 内側縦アーチの支持
・母趾外転筋は、内側縦アーチを支持し、足の構造的安定性を維持する役割を果たす(📕Ridge, 2022 >>> doi.)。
・これは、歩行やランニングなどの日常的な活動において重要である。
2. 足の安定化
・母趾外転筋は、足の安定化に寄与し、バランスを保つのに役立つ。
・これは、特に不安定な地面や片足立ちなどの状況で重要である。
3. 障害の予防と治療
・母趾外転筋の機能不全や損傷は、足の変形、痛み、障害を引き起こす可能性がある。
・例えば、足底筋膜炎、偏平足(pes planus)、痛みを伴う外反母趾(hallux valgus)などと関連している。
・これらの問題を予防または治療するために、内在筋強化運動がリハビリテーションおよびスポーツ医学で推奨されている。
4. 静的足のアライメントと動的足のキネマティクスの改善
・内在筋強化運動は、静的な足のアライメントおよび歩行中の足のキネマティクスを改善する効果がある。
・特に、偏平足の人々においては、内在筋強化運動がアーチの崩壊を防ぎ、バランス能力を向上させる。

[背景・目的] 足部内在筋は、内側縦アーチ(medial longitudinal arch, MLA)を支持し、足部を安定させることが知られており、体重負荷や姿勢負荷の増加に伴って活性化する。様々なタイプの足部内在筋トレーニングが報告されているが、その中でも最も有用なものの1つであるショートフットエクササイズは、効果的に実施することが難しく、練習が必要であるため、通常の臨床現場で実施することは困難である。研究課題体重支持とバランス状態を採用した足部内在筋エクササイズを最小限の練習で実施した場合、母趾外転筋(abductor hallucis longus, ABH)の筋活動とMLA角度にどのような違いが生じるか?

[方法] 16名の健康なボランティアが9種類の足部内在筋エクササイズを1~2回練習した。

✅ 各運動の説明
a. Toe curl exercise(足指カール運動)
・参加者は可能な限り足指を曲げ、第一中足骨の頭を踵の方に引き寄せようとする。この運動は、足指の屈曲を伴わずに行う。
b. Short foot exercise(ショートフット運動)
・参加者は足を前後方向に短縮し、足指を床に押し付けることなく第一中足骨の頭を踵の方に引き寄せる。この運動は、足指の屈曲を伴わずに行う。
c. Toe spread exercise(足指広げ運動)
・参加者は足指を可能な限り広げる運動を行う。
d. Stand swing(立った状態でのスイング)
・参加者は一脚で立ち、測定対象の脚で前後方向に脚を振る。このとき、バランスを維持しながら行う。

これらの運動は、座った状態と立った状態の両方で行われた。各運動は5秒間3回行った。

ABH筋の活動は表面筋電図(EMG)センサーを用いて測定し、運動中のMLA角度は光学式モーション・トラッキング・システムを用いて捉えた。ABH筋のEMG信号の積分値を算出した。

[結果] ABH筋電図信号の積分値と最大値にエクササイズ間で差が認められた(p < 0.001)。ポストホックペアワイズ解析の結果、スイング運動中のEMG活動は、つま先開脚以外の運動、立ち上がりと立ち姿勢の両方、および立ったまま押すショートフットエクササイズ中よりも大きかった

各運動中のMLA角度の最小値は、座位でつま先を広げる運動の方が他の運動よりも小さかった(p<0.023)。

[結論] 片足スイング運動は、特に集中的な監督下での理学療法が不可能な場合に、足部内在筋のセルフエクササイズに有効である可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

是非、やってみて欲しいのだがショートフットエクササイズは、難しい!

なかなか上手くできないので、たとえば患者さんの自主トレに組み込む場合にはその効果性は落ちやすいだろう。
じゃあ、どんな運動がいいか?
そんな臨床疑問を明らかにしたのが、今回の抄読研究である。

9種類の足部運動における内側縦アーチを支持する代表的な筋である母趾外転筋の筋活動を比較した。
その結果、ショートフットエクササイズより、筋活動を賦活する運動が明らかになった。
それは、『立位でのスイング運動』である。
そして、この運動も是非やってみて欲しいのだが、簡単である!
この運動であれば、失敗は少ないだろうと感じる。
難易度が低く、効果(筋活動)は高い、是非組み込みたいエクササイズである。

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