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痛みの観察学習。疼痛評価,疼痛の予期に影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

他者から痛みを学習する:観察学習によって誘発されるプラセボ痛覚減退とノセボ痛覚過敏に関する研究の系統的レビューとメタアナリシス

📕Meeuwis, Stefanie H., et al. "Learning pain from others: a systematic review and meta-analysis of studies on placebo hypoalgesia and nocebo hyperalgesia induced by observational learning." Pain 164.11 (2023): 2383-2396. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000002943
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※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 介入後に疼痛が緩和したり増悪したりするのを観察すると、プラセボ痛覚減退やノセボ痛覚亢進が誘発される可能性がある。これらの効果の要因を理解することは、慢性疼痛状態の治療を最適化するための戦略開発に役立つ可能性がある。我々は、観察学習(observational learning, OL)によって誘発されるプラセボ痛覚減退とノセボ痛覚過敏に関する文献を系統的にレビューし、メタ分析を行った。

📕Tinnermann, Alexandra, Christian Büchel, and Jan Haaker. "Observation of others’ painful heat stimulation involves responses in the spinal cord." Science Advances 7.14 (2021): eabe8444. >>> doi.

[方法-結果] PubMed、PsycINFO、Web of Science、ScienceDirect、PsycARTICLES、Scopus、Academic Search Ultimateの各データベースで系統的な文献検索を行った。21の研究がシステマティックレビューに含まれ、そのうち17がメタ解析に適していた(18の実験;n = 764健常人)。主要評価項目は、OL中に関連するプラセボの合図に続く痛みの標準化平均差(SMD)であり、低痛みと高痛みの比較であった。観察学習は、痛みの評価に小~中程度の効果(SMD 0.44;95%信頼区間[CI] 0.21-0.68;P<0.01)を示し、痛みの予期には大きな効果(SMD 1.11;95%CI0.49-2.04;P<0.01)を示した。

観察の種類(対人 vs ビデオ撮影)は、プラセボによる痛覚減退/痛覚過敏の大きさを調節したが(P < 0.01)、プラセボの種類は調節しなかった(P = 0.23)。最後に、OLは、観察者の共感的関心(ただし他の共感関連因子は含まない)が高いほど効果的であった(r = 0.14; 95% CI 0.01-0.27; P = 0.03)。

[結論] 全体として、メタアナリシスは、OLがプラセボ痛覚減退およびノセボ痛覚亢進を形成しうることを示している。これらの効果の予測因子を同定し、臨床集団で研究するためには、さらなる研究が必要である。将来的には、OLは臨床場面でプラセボ痛覚減退を最大化するための重要なツールとなる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「あの人も結構大変ですね。足の骨折ですか?」
「あんなに大変そうにしている。あの人に比べると私はまだいい方ね」
「同じ怪我なのに、あまり痛くなさそうにしてますね」

患者さんと話していてよく感じることは、『比較』だ。
自分と他の患者さんの比較。
自分と一般高齢者の比較。
何かと比べたときに、今の自分がどうなのか、というような発言がしばしば聞かれる。

人の世の価値は、多くのものが相対的だ。
供給量と需要に対して、価値が決まる。
賛成の人が多ければ、賛成派につきたくなる。
そしてどうやら、疼痛に関しても同じようなことが言えるようだ。

今回の抄読研究によれば、他者の疼痛への反応を観察することで、当事者の疼痛経験に影響を及ぼすことができるらしい。
疼痛経験というのは、主観的な経験であり、カタチある実物ではない。
だから、雲のごとく、時々刻々、その姿を変えるものなのかもしれない。
その雲に望ましいカタチを与える手段の1つとして、観察学習は有効そうだ。
具体的な臨床応用方法を、考えてみたい。

𝕏におけるやり取りの中で,2つの臨床応用案が出てきたので共有ᯤ

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