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KAMを減少させる戦略。体幹傾斜 vs. 膝内側スラスト

📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性膝関節症患者に対する最適な歩行修正戦略の決定: 体幹の傾きか、内側へのスラストか?

📕Gerbrands, T. A., et al. "Determining the optimal gait modification strategy for patients with knee osteoarthritis: Trunk lean or medial thrust?." Gait & Posture 102 (2023): 1-9. https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2023.02.017
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🔑 Key points
🔹体幹傾斜の修正は、内側スラストよりもKAM (knee addction moment)を減少させる。
🔹脛骨前面の角度の修正度合いによって、最適な戦略を決定することができる
🔹快適な歩行時のパラメータは、最適な戦略を中程度にしか予測できない。

✅ 前提知識:膝関節内転モーメント(knee adduction moment, KAM)を減少させる戦略としての体幹傾斜と膝内側スラスト
・KAMの因子を明らかにする目的で42件の研究のシステマティックレビュー
・KAMを減少させる歩行修正として、同側への体幹傾斜と膝内側スラストが明らかになった

[背景・目的] 変形性膝関節症患者において、歩行修正戦略である体幹傾斜と内側スラストは、膝内転モーメント(KAM)を低減し、疾患の進行抑制に寄与することが示されています。どの戦略が最適かは個人差がありますが、その原因となる根本的なメカニズムはまだ分かっていません。
●課題:変形性膝関節症患者個人にとって最適な歩行修正戦略を決定するのはどの歩行パラメータか?

[方法] 変形性膝関節症の症状がある47名の参加者に、快適な歩行時および2つの歩行修正戦略による3次元動作解析を実施した: 内側スラストと体幹傾斜の2つの歩行修正戦略を用いた。運動学的および運動学的変数が計算された。参加者は、KAMを最も減少させた修正戦略に基づいて、2つのサブグループのいずれかに分類された。後方消去法による多重ロジスティック回帰分析を用いて、快適な歩行中に得られる動的パラメータが、最適な修正歩行戦略に対する予測特性を調査した。

📕Gerbrands, Tim Aderik, et al. Gait & posture 51 (2017): 247-253. >>> doi.

[結果] 68.1%の参加者において、体幹傾斜はKAMを減少させる最適な戦略であった。快適な歩行中のベースライン特性、運動学、キネティクスは、サブグループ間で有意な差はなかった。体幹前方角と脛骨角の変化は、それぞれ体幹傾斜戦略および内側スラスト戦略時のKAM低減と有意な相関があった。回帰分析により、快適歩行時の脛骨前面角度の可動域(外側スラスト?)と立脚初期の膝屈曲ピーク角度が高い場合、内側スラストが最適である可能性が高いことが示された(R2Nagelkerke = 0.12)。

[結論] 自己選択による体幹傾斜の修正は、内側スラストよりもKAMを減少させる。変形性膝関節症の個々の患者にとって最も最適な歩行修正戦略を選択するためには、運動学の直接評価が最も最適な戦略であると思わる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

KAMに関しては、これまでの文献レビューから以下のような知識を得ていた。

● KAMは長期的な軟骨損傷と関連する
● KAMは画像-症状間の不一致を解消する糸口の一つかもしれない
● KAMの因子のうち、歩行修正戦略は体幹傾斜と内側スラストがある

今回の研究は、まさに巨人の肩に乗った研究と言える。
これまでの研究によって、KAMを減少させるための歩行修正戦略が明らかになっていた。
だが、それらの優先順位や、具体的な適応については不明だった。

だから、今回は対応ある調査を通じて、どの戦略が有効か、また適応は何かを探った。
その結果、体幹傾斜戦略が最も適する戦略であり、第一選択になりうること、内側スラストには良い適応があることが明らかになった。
まさに、人類のリレーである。
次にバトンを手に走るのは、誰だ。

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