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膝関節内転モーメント(KAM)は、 長期的な軟骨厚減少のマーカとなりうる?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

脛骨および大腿骨の軟骨厚の縦断的変化は、無症状の高齢者におけるベースラインの歩行運動および軟骨オリゴマー・マトリックスタンパク質(COMP)の測定値と関連する

Erhart-Hledik, J. C., et al. "Longitudinal changes in tibial and femoral cartilage thickness are associated with baseline ambulatory kinetics and cartilage oligomeric matrix protein (COMP) measures in an asymptomatic aging population." Osteoarthritis and Cartilage (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 早期の変形性膝関節症(OA)マーカーの必要性に応えるため、無症状の高齢者を対象に、縦方向の軟骨厚さの変化が、ベースラインテストで取得した特定の生体力学的および生物学的指標と関連するかどうかを検証すること。

[方法] デザイン→45歳以上の無症候性被験者38名を対象に、ベースライン時と平均7~9年後の追跡調査を行った。ベースライン時に歩行力学と膝のMRIを測定し、フォローアップ時にMRIを取得して軟骨の厚さの変化を評価した。また、被験者の一部(n = 12)は、ベースライン時に機械的刺激(30分歩行)に対する血清軟骨オリゴマー・マトリックスタンパク質を測定しました(mCOMP)。膝の伸展(KEM)、屈曲(KFM)、内転(KAM)の各モーメントとmCOMPを含むベースラインの測定値が、膝の特定部位の軟骨厚の変化との関連性を検証した。

[結果] 大腿骨内側顆全体(p = 0.005)および大腿骨外側部(p = 0.041)の軟骨変化は、立脚初期のピークKEMの大きさと負の関係にあった。同様に、内側大腿骨全周部(p = 0.009)と内側大腿骨外周部(p = 0.043)の軟骨変化は、第1ピークKAMの大きさと負の関係にあったが、内側脛骨前部の軟骨変化は、第1ピークKAMの大きさと正の関係にあった(p = 0.003)。また、前内側脛骨の軟骨の変化は、活動後5.5時間のmCOMPレベル(活動前のレベルに対する割合)と有意に関連していた(p = 0.011)。

[結論] リスクのある高齢の無症候性集団において、歩行、機械的刺激を受けた血清バイオマーカー、軟骨の厚さの間に見られた相互作用は、分野や規模を超えた新しいアプローチによるOAの早期発見の機会を示唆するものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

『KAM・COMPを健康診断などで計測 ▶︎ 5-10年後のOAリスク算出 ▶︎ 予防的なリハビリテーション需要の把握 ▶︎ 予防理学療法 ▶︎ OA者の減少』ができれば、TKAなどのオペ減少につながり、結果的に医療費の減少にもつながるかもしれない。また、単純に機械的な負荷量が大きい部分の軟骨厚が長期的に減少することを確認できたことも興味深い。