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画像 - 症状 Blackboxの解体; 『画像 - 関節負荷』は関連している

▼ 文献情報 と 抄録和訳

3D歩行解析を用いたX線写真の測定値と膝の内転モーメントの関係

Lee, Na-Kyoung, et al. "Relationship between radiographic measurements and knee adduction moment using 3D gait analysis." Gait & Posture (2021).

[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar

[ハイライト]
- X線写真の測定値は、歩行運動データと有意に関連する。
- 0.010Nms/kgの膝関節内転モーメントは、機械的脛骨大腿角が1°大きくなると増加する。
- 0.004Nms/kgの膝関節内転モーメントは、足関節線の向きが1°変わると増加する。
- 機械的脛骨大腿角が5.7°の場合、最も高い識別性を示した。
- 足関節のラインの向きを7.5°にすると、最も高い判別性を示した。

[背景] X線写真の要素は静的な膝関節の状態を推定するものであり、これらのパラメータが動的な膝関節の状態をどの程度反映しているかは疑問である。歩行時の膝外転モーメント(KAM;詳細は添付サイト参照)は、変形性関節症の進行に寄与する運動学的変数であることが知られている。本研究では、静的なX線画像パラメータが歩行時の動的なKAMに与える影響を調べることを目的とした。

[方法] 全体で123名の患者(平均年齢65.7歳、標準偏差8.1歳、男性34名、女性89名)を対象とした。レントゲン写真でメカニカル脛骨大腿角(mTFA)、Kellgren-Lawrenceグレード、足関節線方向(AJLO)など7つのレントゲンパラメータを測定し、3次元歩行解析を用いて立脚相での最大KAMとKAM時間積分を求めた。相関分析と重回帰分析を行い、KAMに関連する有意なX線写真の測定値を特定した。

[結果] ほとんどのX線写真の測定値は、最大KAMおよびKAM時間積分値と相関していた。重回帰分析の結果、mTFA(p<0.001)とAJLO(p=0.003)はKAM時間積分値に関連する有意な因子として同定され(R2=0.450)、mTFA(p<0.001)とAJLO(p=0.003)は重回帰分析において最大KAMに関連する有意な因子として同定された(R2=0.352)。KAMの識別性は、mTFAのバリュース5.7度、AJLOのバリュース7.5度で最も高かった。

[意義] mTFAとAJLOはKAMと有意に関連していた。しかし、矯正骨切りの手術適応として使用するためには、我々が示唆したようにmTFAとAJLOの値が直接変形性関節症の進行を引き起こすかどうかを検証するための縦断的な研究が必要である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

2021年7月に「疼痛の47%を心理的要因が説明した。X線写真の重症度は1%だけ説明した。」というnoteを書いた。

画像と症状の間にあるBlackboxを心理的要因が説明しうる、という内容だった。
その理解をさらに一歩進めてくれる論文だった(まとめると下図になった)。

スライド2

このBlackbox、とても面白いので、「あり」でシリーズ化していきたいと思う。
どんどんこの図が精緻になっていくビジョンだ。

さて、改めて今回の論文が明らかにしたことは、「画像上の変化があれば歩行時の膝関節負荷は加わっている」、ということ。
すなわち、力学的には疼痛が出てもおかしくないわけだ。ところが、出ない人もいることは他の論文が明らかにしている。
「画像ー症状間のBlackbox」→「動作時の関節負荷ー症状間のBlackbox」へ。
また一歩詰めよった。霧が、また1つ晴れた。この光を喜ぼう!
さぁ、形而上が形而下になってきたぞ♪

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【あり】最後のイラスト

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