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僧帽筋の肩甲骨回旋作用。段階的な筋切離により明らかに

📖 文献情報 と 抄録和訳

肩鎖関節の安定化における僧帽筋の役割。バイオメカニクス的評価

📕Trudeau, Maxwell T., et al. "The Role of the Trapezius in Stabilization of the Acromioclavicular Joint: A Biomechanical Evaluation." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 10.9 (2022): 23259671221118943. https://doi.org/10.1177/23259671221118943
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✅ 前提知識:僧帽筋の解剖学的知識
- 起始部:上部:後頭骨(C2-7棘突起)、中部:T1-4高さの腱膜、下部:T5-12の棘突起
- 停止部:上部:鎖骨外側1/3、中部:肩峰、下部:肩峰棘
- 支配神経:副神経、頚神経叢
- 神経高位・髄節レベル:C2-ーC4
- 作用:頸部同側側屈、頸部対側回旋、肩甲骨内転、上方回旋、挙上

[背景・目的] 肩鎖関節(Acromioclavicular joint, ACJ)損傷は一般的であり、その多くは非手術で十分な治療が行われている。生体力学的研究は主に静的な靭帯安定化機構に焦点を当てている。僧帽筋によるACJの安定化を定量化した研究はほとんどない。目的・仮説:肩甲骨の内旋および外旋(伸展および収縮)時に僧帽筋がACJに提供する安定化を解明すること。僧帽筋の切除を順次行うことで、ACJの不安定性が増加するという仮説を立てた。

[方法] 研究デザイン:対照的な実験室研究。方法生体力学的なアプローチを追求し、僧帽筋に解剖学的に正常な負荷がかかった10体の肩を使用した。次に、僧帽筋は、鎖骨欠損(clavicular defects, CD)および肩甲骨欠損(scapular defects, SD)を交互に行う8つの試行にわたって連続的に切断された;それぞれの連続した欠損は、鎖骨または肩甲骨の僧帽筋付着部の25%で構成された。各欠損後、ACJの安定性を評価するために、回転トルクの測定とともに角度制御された肩甲骨内旋および外旋(12°)で標本を試験した。

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[結果]
■ 僧帽筋切離に伴う肩甲骨『内旋』方向へのトルクに対する抵抗力
・肩甲骨内旋(プロトラクション)12°の回転トルクの平均抵抗は7.0 ± 2.0 N-mであった.
・全体として、内旋は僧帽筋の損傷によってACJの安定性が有意に減少することが示された(P < 0.001)。
・8つの連続した欠損は、以下のように、ネイティブの内旋からの回転トルクの有意な減少をもたらした。
・1.5% (25% CD; 0% SD), 5.6% (25% CD; 25% SD), 5.1% (50% CD; 25% SD), 6.5% (50% CD; 50% SD), 3.8% (75% CD; 50% SD), 7.1% (75% CD; 75% SD), 6.7% (100% CD; 75% SD) および 12.3% (100% CD 100% SD) (P<0.001)。

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■ 僧帽筋切離に伴う肩甲骨『外旋』方向へのトルクに対する抵抗力
・検体による肩甲骨外旋(後退)12°の回転トルクの平均抵抗は、7.1±1.7N-mであった。
・外旋は、僧帽筋損傷によるACJ安定性の有意な低下を示さなかった(P = 0.596)。
・8つの連続した欠損は、0%、3.8%、4.0%、3.2%、3.5%、3.4%、4.2%、0.7%と、自然外旋からの回転トルクの減少をもたらした。

[結論] 僧帽筋の損傷は、ACJの肩甲骨内旋(牽引)の設定において不安定性を増加させる結果となった。臨床的な関連性。これらの知見は、修正Rockwood分類システムに三角筋膜損傷を考慮することを検証するものである。ACJの僧帽筋挿入部の修復は、ACJ再建の設定において、より良い結果をもたらすかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

僧帽筋は、主に前額面に広く面積を持つ筋肉であり、水平面で切り取るとあまり力線を持たないように感じる。
だから、水平面での運動(回旋)のイメージがつきにくい。
本研究は、僧帽筋の水平面での作用を明らかにした貴重な研究である。

それによれば、僧帽筋は肩甲骨内旋方向に抵抗力を示す筋である。
これを野球に当てはめてみる。
翼状肩甲骨とは、しばしば投球者に生じ、これまでは前鋸筋を鍛えることが直感的な介入イメージであった。
だが、この研究を理解することで前鋸筋のみならず、僧帽筋強化の重要性のイメージを持つことができた。

筋の力線、関節軸の位置、回転トルク・・・。
力学的な現象は、理詰めで紐解いていけるから、好きだ。

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