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歩行とは, 単に歩くのみにあらず。患者の多様な歩行経験を概念化


📖 文献情報 と 抄録和訳

患者の声に耳を傾ける:歩行体験の概念的枠組み

📕Delgado-Ortiz, Laura, et al. "Listening to the patients’ voice: a conceptual framework of the walking experience." Age and Ageing 52.1 (2023): afac233. https://doi.org/10.1093/ageing/afac233
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[背景・目的] 歩行はアクティブで健康的な加齢のために重要であるが、歩行障害を持つ個人の視点はまだ十分に理解されていない。目的移動に支障をきたす健康状態にある成人が経験する歩行に関するエビデンスを特定・統合し、歩行経験に関する経験的な概念的枠組みを提案すること。

[方法] 我々は、質的証拠の系統的レビューおよびメタエスノグラフィーを実施し、7つの電子データベースを検索して、様々な病因の疾患を持つ個人の歩行体験を調査した記録を探した。対象疾患は、パーキンソン病、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、股関節骨折、心不全、虚弱体質、サルコペニアなどである。データは抽出され、NICE品質チェックリストを用いて批判的に評価され、標準化されたベストプラクティスを用いて統合された。

[結果] 2,552件のユニークレコードから117件が適格であった。以下の7テーマによって表現されており、状態間で類似性があった。
①個人的な歩行経験を自覚する
②個人の活動と自意識の関連としての歩行経験:個人の自意識は, 歩行体験を通して歩行に関連する活動(例. 趣味や犬の散歩)と密接に結びついている
③身体的な歩行経験:各疾患に共通する徴候や症状 (疲労, 痛み, 脱力感, バランス低下)が歩行能力に影響を与える。
歩行速度の低下,歩幅の変化, 長時間の歩行能力の低下など
④精神的・感情的な歩行経験:否定的:恐怖, 不安, ストレス, 怒り, 苛立ち, 恥ずかしさなど。肯定的:満足感, 充実感, 達成感など
⑤社会的な歩行経験:歩行障害によって高まったり, 妨げられたりする。社会的支援の有無は参加に影響することが多く, 支援の欠如は引きこもりや社会的孤立につながる
⑥歩行経験の背景
⑦歩行経験の結果としての行動や態度適応
これらのテーマ間の相互作用に基づき、歩行経験を視覚的に表現する新しい概念的枠組みを提案する。

[結論] 多面的でダイナミックな歩行体験は、健康状態に関わらず共通であった。歩行体験の概念的枠組みは、患者を中心とした臨床実践、研究、公衆衛生に新しい理論的構造を提供する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

痛みや筋力低下によって、歩けない。
それは、単に力学的な出力低下によって、機械的に歩けないのみ、だろうか。
いや、違う。
歩けないことによって、その人には悲しみや悔しさや、ときには怒りといった感情まで、生じる場合がある。
そして、練習中にうまく歩けたことに、達成感や満足感を、強く感じている場面を見てきた。
さらに、その歩けること、歩けないことは、日常生活への参加をする、しない(できる、できない)に大きく関わる。
もっと広くみると、それによって社会的な活動が妨げられ、結果的に引きこもりや社会的孤立といった問題にも発展する。

もう一度問う。
歩行は、単に歩ける、歩けないという機械的な問題、だろうか。
いや、違う。断じて違う。
今回の抄読研究は、患者の歩行経験をたくさん束ねた上で、それを明らかにしてくれた。
今回示された図は、多分、一生使い続けるだろう。
歩行とは、単に歩くのみにあらず
歩行には、人生のあらゆる経験要素が詰まっている、・・・と信じる。

アニメーションは歩くことに始まり、歩くことで終わる。
宮崎駿

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