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人間らしい歩行。歩行速度との関連性

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中患者における歩行時の自己認識された一般的人間像と歩行速度の関連性。予備的研究

📕Hayashida, Kazuki, et al. "Association Between Self-Perceived General Human-Likeness During Walking and Walking Speed in Stroke Patients: A Preliminary Study." Rehabilitation Process and Outcome 11 (2022): 11795727221114464. https://doi.org/10.1177/11795727221114464
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🔑 Key points
- 脳卒中患者の歩行中の人間らしさの主観的側面を評価した。
- 主観的な人間らしさは速く歩く能力が高い人ほど感じられる

[背景・目的] 脳卒中患者と一般人の歩行速度の差は、患者の自己認識に影響を与え、自分の歩行が一般的な人間らしさに欠けていると認識される可能性がある。ここでいう歩行時の人間らしさとは、健常者と同じように意図したとおりに歩けるという感覚を指す。たとえば脳卒中患者は、歩行中の自身のことを「まるでロボットみたい」「人間ではないみたい」と訴えることがある。このようなネガティブな主観的体験は、社会参加を抑制する可能性がある。しかし、脳卒中患者の歩行速度に関連する知覚は十分に理解されていない。本研究の目的は、脳卒中患者の歩行速度と歩行中の一般的な人間らしさに対する知覚の関係を調べることである。

[方法-結果] この横断的研究では、32名の脳卒中後遺症患者を登録した。患者は快適な速度と速い速度で10m歩行テストを行い、歩行終了後に人間らしい歩行の知覚に関する質問に答えた(「自分の歩行は一般の人の歩行時の人間らしさにどの程度似ていると感じましたか?) その結果、快適速度と高速度において、歩行中の人間らしさに対する知覚と歩行速度の間に有意な正の相関があることが分かった。

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✅ 図. 歩行中の人間らしさと歩行速度との関係。脳卒中患者における歩行中の人間らしさと歩行速度に正の相関関係があることを示す。

[結論] このように、歩行速度と自己認知に相関があることを示唆する報告は、私たちの知る限り初めてである。この結果は、歩行中に人間らしさを感じにくくなる患者さんの根本的なメカニズムの解明に役立つと思われる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

歩行速度と「人間らしい歩行」の感覚が関連した。
これは、一体どのようなことを示唆するのだろうか。
多くの意見があると思う。
僕は、1つの意見として『一貫性 & 自動化 (無意識化)』をあげる。

意識的、無意識的という観点から、CPG walkingEP walkingというものを提唱している。

✅ CPG walking と EP walking
☑ CPG walking
- 感覚フィードバックを利用した、運動指令の修正が少ない
- 例. 何もない平地を歩くなど、一定した運動、修正の必要としない歩行
- 無意識下に運動が遂行される側面が強い
- 組織でいえば、大脳基底核、脊髄が主に関与しているだろう
☑ EP; external perception walking
- 感覚フィードバックを利用して、運動指令を修正する必要が出てくる課題
- 例えば、狭所や障害物を避けながら歩く、一定しない運動、司令をフィードバックの元修正する必要のある歩行
- これは、意識下、無意識下双方で遂行される側面が強い
- 組織で言えば、大脳皮質、小脳が主に関与しているだろう

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ゆっくり歩行している際には、おそらくEP walkingの側面が強くなる。
すなわち、常に身体活動を『意識』して創出している状態だ。
・足を持ち上げようとして、足を振り出す。
・膝を伸ばそうとして、膝を伸ばす。
だが、日常的な健常者の歩行は、どうだろう。
「あの場所に行こう」と思ったら、勝手に歩き出している。
すなわち、歩行時の具体的な身体活動は無意識に隠蔽されているのだ。

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この二極のうち、意識的な歩行のステージ(EP walking)にいるうちは、「人間らしい」とは認識されにくいのかもしれない。
たとえ頸部から切断されてもトレッドミル上で歩き続ける猫の『あの機能』が十分に駆動されている時、「人間らしい」歩行が姿を現すのだろうか・・・。
歩行速度が上がるほど、自動化された歩行、一貫した歩行の状態に近づくというのが、いまの僕の仮説だ。
難しいが、とても面白い。
ますます、勉強していきたい🔥

動作は「自動化」されており身体運動の「記憶」など必要としない。
このように動作を軽々とこなすとき、まさしくそれを制約する諸機能が「意識下」に沈み込んで見えなくなっているのである。

~からだの自由と不自由~

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