PMBOK第7版の変更点について解説
今回は、PMBOKの第6版と第7版に関する記事になります。
今年の8月にリリースされたPMBOKの第7版ですが、英語版のリリース直後から大きく変わったと物議を醸しておりました。英語版でのリリースしかされていませんので不確かな情報も多く、錯綜していたように感じます。
しかし、21年10月から日本語版のリリースが開始されました。PMI日本支部会員は、PDF版が無料でダウロード可能です。(PMI日本支部HP:PMBOK®ガイド第7版日本語版 販売および出荷開始のお知らせ)
今回は、第6版から第7版へどのように変わったのか、いくつかのポイントに分けてご紹介します。徐々に議論が活発になると思いますので、第7版を理解するうえで皆さんの一助になれば幸いです。
変更点1.章構成
PMBOKは、図のように大きく2つの章から構成されます。
この2つの章タイトルは、第6版と同じです。異なるのは、章の順番です。第7版では、「プロジェクト管理の標準」が上に、「知識体系ガイド」は下に入れ替わっています。
章タイトルは同じですが、その内容は大きく変わっているので注意が必要です。全くの別物と考えたほうが無難です。以降から章内容の変更点を4つに分けてご説明します。
ちなみに第7版のページ数は、第6版から500ページほど減り、約250ページになります。1日あれば読めるボリュームです。
変更点2.プロジェクト管理の原則
「5つのプロセス」から「12の原則」になりました。第6版はプロセスベースでのアプローチでしたが、第7版では「原理原則」によるアプローチになります。
この変更は、プロジェクトの多種多様化が関係しています。
昨今のDXや市場検証プロジェクトなどはプロセスベースによるアプローチでは限界があります。これらに対応できるよう原理原則に焦点を当てることで柔軟なアプローチが可能になりました。多種多様なプロジェクトに対応できるようになったということです。
様々なプロジェクトに共通してみられる傾向や特性をもとに「原則」としているので、コンピテンシーと考え方は近いと思います。
個人的に読んでいて、SAFeやDAの原則が組み込まれているように感じました(「システム思考」や「価値重視」という記載)。底流にはアジャイルやDevOpsなどへの配慮があるのでしょう。
変更点3.パフォーマンスドメイン
「10の知識エリア」から「8つのパフォーマンスドメイン」になりました。10の知識エリアを踏襲しつつ再編成されたような内容になります(知識エリアの考え方が完全に無くなったわけではない)。
図から第6版と第7版を見比べると、いくつかの知識エリアに関して記載が消えています。ただし、実際は各パフォーマンスドメインに要素として散りばめられています。例えば、知識エリアの”コミュニケーション”は、パフォーマンスドメインの”チームやプロジェクト作業のパフォーマンス”に含まれています。
補足.原則とパフォーマンスドメインの関係性について
「原則とパフォーマンスドメインは何が違うの?」と思う方は多いように感じます。以下のように捉えると良いと思います。
変更点4.価値重視
第7版からは、「成果物」より「価値」を重視する内容に変わりました。プロジェクトの究極の成功指標とまで記載されています。実際に第7版を読み進めると頻繁に「価値」というワードが登場します。
具体的な変更点は以下の3つです。
・インプット、ツールと技法、アウトプット(ITTO)の記載はなくなった
・価値提供システムについて記載された
・価値に焦点を当てる原則が生まれた
そもそも「価値」とは何かということです。PMBOKでは以下のように記載されています。
つまり、価値とはプロジェクトの結果(成果物の結果)が、ビジネスのベネフィットにどれだけ貢献しているかということです。
”ビジネス”と”ベネフィット”というのは様々です。自社におけるビジネスや顧客におけるビジネスなどステークホルダーごとに考えられます。また、ベネフィットは、いくかの指標があります(QCDなど)。
つまり、価値は様々な立場や指標で評価することができ、一概に言えません。プロジェクトごとに提供すべき「価値」を見極める必要があります。
例えば、業務効率化を目的としたスクラッチシステムを外部へ発注した顧客の場合を考えます。
受託側がいくらコストをかけず品質を満たしたシステムをスケジュール通りに納品したところで、納品後に顧客の業務が効率化されていないのであれば、価値はゼロです。
受託側からすると、QCDが担保されているので価値は高いという評価になるかもしれませんが、顧客側の「価値」が優先されるべきなので高く評価するべきではありません。
この場合、システムを納品して終わりにするのではなく、実際に使ってもらえるような施策が必要です。たとえば、教育支援を行う、ヘルプサイトを拡充するなどです。
これが第7版で重視している「価値に焦点を当てる」ということになります。自ずとプロジェクトやチームは「価値」を正しく見極め、「価値」の最大化に努める必要が出てきます。
価値については別の記事があります。詳細を知りたい方は合わせてご覧ください。
変更点5.PMI Standards+
PMBOK6に記載されている具体的なプラクティスについては、「PMI Standards+」というデジタルコンテンツプラットフォームに移管されます。随時更新されていくWebサイトに集約されるので、最新情報をいつでも参照できるようになります。
前述した通り、PMBOKの第7版は原理原則と基本的な活動(パフォーマンスドメイン)になります(プラクティスに関する記載もありますが深く触れられていません)。したがって、具体的な部分がごっそり抜け落ちた結果、第6版から500ページも減ったということです。
具体的なプラクティスは、時代に合わせて変化するため、PMI側も書いていられないというような感じでしょうか。
基本的には「PMBOKの第7版」、詳細な方法論は「PMI Standards+」という使い分けが必要になります。2つセットで使うのが今後の「PMBOK」という新しい形です。
「PMI Standards+」のURLは以下です(PMIのHPから飛べます)
リンク:https://standardsplus.pmi.org/home
実際にアクセスすると、テンプレート、各フレームワークの詳細や事例などが確認できます。言語は、すべて英語になります。英語が強い方なら有効活用できるかと思います。
今回の第6版と第7版の違いに関するコンテツもありました。個人的には「意外と使えるかも…?」という印象です。
PMBOK第7版の変更点まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、PMBOKの第6版と第7版の変更点をご紹介しました。実際に読まれる際の参考になれば幸いです。
P.S.
PMBOK第7版の詳細については、先日プロジェクトマネジメントDAY(PMDAY)にて説明しました。ご来場いただいた皆様については、ありがとうございました。おかげさまで参加者は1,000名を超え、大盛況で終えることができました。まだまだ勉強中の身ではありますが、これからも精進してきたいと思います。
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※本記事の内容は個人の見解であり、私が所属する組織とは一切関係ありません。
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