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旅香記

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#二十四歳

旅香記Ⅺ_退職 もしくはパリ編に代えて

旅香記Ⅺ_退職 もしくはパリ編に代えて

十二月二十一日から一月二日にかけての二週間、ヨーロッパを旅行した。その間の記録がこの旅香記である。
断片的ながらある程度旅の記録をまとめられた気でいるのだが、もう一章、これを書かずにこの記録を閉じるべきでないと思っていることを記す。

この旅行の間に、仕事を辞めた。

あまりにも狭い業界なので職場の仔細は省くが、そこは業界の中では世界一の仕事をするところだった。(その思いはヨーロッパ旅行を経てさら

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旅香記Ⅹ_PVG→NRT

旅香記Ⅹ_PVG→NRT

上海時間午後十七時。成田への飛行機が動き出した。二時間半で到着すると機内アナウンスが告げている。
飛行機が走りながら、翼の向こうの空が暮れてゆく。機内の照明も暗めで、Yは舟を漕ぎ始めた。
周りの乗客は見る限りアジア人ばかりだ。中国人か日本人かははっきり見分けられない。そういえば、アブダビ行きの便以来何の乗り物に乗っても漂っていた甘い香水の匂いは、この機内にはなかった。アジアに帰ってきた、と思う。

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旅香記Ⅸ_FCO→PVG

旅香記Ⅸ_FCO→PVG

疲れで無気力になっていたが、機上から見えた月が綺麗で気を持ち直せたので、筆を執る。

今はローマの時間で二十三時。フィウミチーノ空港を二十時半に離陸してから、二時間半が経っている。一時間ほど寝て、そのあと機内食を食べた。Yは私の腿に頭をのせて、また眠りに落ちている。

ローマを発つときに、ショッキングな出来事があった。
空港へのシャトルバスに乗るために中心駅の前を歩いていたら、泥棒の一味にソースの

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旅香記Ⅷ_ローマ

旅香記Ⅷ_ローマ

ローマの中心部、サンタマリアマッジョーレにほど近いホテルのベッドにいる。
家具は古びているが広くて湯船もある一室。十日ぶりに湯船に浸かってゆっくり足を休められた。パリではセージの香り・アムステルダムではマンゴーの香りだったソープは、ローマではバニラの甘い香りだった。

フィウミチーノ空港に着いたのが午後三時前。そこからシャトルバスで中心部まで移動してチェックインをしてから、五時半頃に夕食に出た。

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旅香記Ⅶ_AMS→FCO

旅香記Ⅶ_AMS→FCO

アムステルダムを離れている。
中央駅からスプリンター(国営鉄道の各停)に乗ってスキポール空港を目指す。
朝九時半、車窓の朝日が眩しい。オランダの晴れた空を四日目にして初めて見た。八時半にホテルの部屋で朝食を食べていたときは青い夜空に美しい月が出ていた。

朝食は昨夜スーパーマーケットで買ったカットマンゴー。夜のデザートに食べるつもりだったが、疲れとグリューワインの酔いで食べないまま眠りに落ちてしま

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旅香記Ⅵ_アムステルダム

旅香記Ⅵ_アムステルダム

右足の人差し指と中指が痛い。先の方はここ数日ずっと痺れたようになっている。ネットで調べたら、やはり歩きすぎによる症状らしい。ヘルスケアアプリを確認したら、旅行が始まってからの八日間で毎日二万歩前後は歩いているようだった、それだけ歩くと足にもガタが来るということか。今回持ってきた靴は二足、ショートブーツとローファーの形のレインシューズ。どちらもチャンキーヒールなので歩きやすくはあるが、スニーカーより

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旅香記Ⅴ_ユトレヒト

旅香記Ⅴ_ユトレヒト

ユトレヒトの凍風にあたっている。
二十時四十四分。約五時間のユトレヒト観光を終えて、ホテルに向かうためのバスを待っている。

指先が凍るような冷たい風で、さぞかし気温も低いのだろうとiPhoneの天気アプリを見たら、意外にも九度とあまり低くなかった。
冷たい空気で呼吸しているせいで身体の内側も冷えてきたけれど、匂いのないその空気は浄いものに思えて、厭わしくない。

ほどなくバスが来て、乗り込もうと

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旅香記Ⅳ_パリ食記

旅香記Ⅳ_パリ食記

パリで美味しかったものの記憶を、忘れないうちに記しておく。

・DALLOYAUのクロワッサン
パリでの最初の朝の朝食。東駅のDALLOYAUで買って食べた。フランス語で注文できて嬉しかった。
Navigo(IC乗車券)を買う列に並びながら食べて、パリのパンはこんなに美味しいのかと感動した。細やかな層のなす軽やかな食感とほのかなバターの香りと小麦の味、それだけでこんなにも美味しい。

・オランジュ

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旅香記Ⅲ_ヴェルサイユへ

旅香記Ⅲ_ヴェルサイユへ

ヴェルサイユへ向かうバスに乗っている。
メトロでパリを離れて三十分、セーヌにかかるセーヴル橋のたもとで西南西のヴェルサイユへ向かうバスに乗り換えた。
予約は十三時なのに三十分ほど過ぎての到着になりそうで、追い返されたらどうしようと落ち着かない。はるばる極東から来たのだと訴えるか? そうするまでもなく入れてもらえるだろうと思うのだけれど。

今夜がパリでの最後の夜だ。
シャルル・ド・ゴールに降りてか

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旅香記Ⅱ_AUH→CDG

旅香記Ⅱ_AUH→CDG

アブダビのトランジットでは、手荷物検査でベレー帽をかごに忘れかけたり、搭乗口でのチケット確認が一度で通らなかったりして何度か汗をかいたけれど、なんとか乗り込むことができた。
キャビンアテンダント以外のスタッフは笑顔を作ったりしないのだと知った。
アブダビ空港で唯一笑顔を向けてもらえたのは、トイレを使ったときに私のところで紙がなくなって(ティッシュを持っていたのでことなきを得たが)、後ろに並んでいた

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旅香記Ⅰ_NRT→AUH

旅香記Ⅰ_NRT→AUH

搭乗のタラップを渡っていたときに飛行場の銀翼たちを朱に染めていた夕陽は、機体が動き出す頃にはすっかり地平線に身を隠していたが、機体が浮き上がると、その残光が遠い山影の背で血のような色に溜まっているのが見えた。最近はずっと家にいるから沼部から多摩川の向こうに広がる夕焼けをよく見ているが、それは穏やかな薄桃色や紫色を見せていることが多いような気がする。こんな不気味な色の夕焼けはしばらく見ていない。

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