旅香記Ⅹ_PVG→NRT
上海時間午後十七時。成田への飛行機が動き出した。二時間半で到着すると機内アナウンスが告げている。
飛行機が走りながら、翼の向こうの空が暮れてゆく。機内の照明も暗めで、Yは舟を漕ぎ始めた。
周りの乗客は見る限りアジア人ばかりだ。中国人か日本人かははっきり見分けられない。そういえば、アブダビ行きの便以来何の乗り物に乗っても漂っていた甘い香水の匂いは、この機内にはなかった。アジアに帰ってきた、と思う。
今回パリに行って、フランス人にとっての香水は自分を作るファッションの一部であるの