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記事一覧
【140字SS】土砂降りと喧嘩
親友と喧嘩した。思ってもない言葉で傷つけた。校門の植木にも土砂降りの雨が打つ。赤く腫れた目をして唇を噛みしめる1人の帰宅は騒々しくなく心が痛い。翌朝の植木を見ると、残った水滴が日光を反射して綺麗だった。袖で涙を拭う。心のもやもやは片付いた。勇気を出して声をかける。「あのさ、昨日は
【140字SS】朝寝坊
友達と飲んだ帰り、いろんなものを撮ってたんだ。
橋に信号に木。ガードレールや道端のたんぽぽとか。
目に入るものすべてをね、撮ってた。
それでカメラアプリ見返すと、暗くて何映ってるのかよくわかんなくてさ、2人で笑いこげてた。
え、その後どうなったって?
この後滅茶苦茶朝寝坊した。
【140字SS】ホットミルク
雨がざーざー降りしきる夜。目が覚めてしまってリビングに降りると、本を読んでいたあなたがホットミルクを入れてくれた。ソファーで2人並んでホットミルクを飲む。身体がぽかぽかする頃には目がとろみはじめた。気持ちよく眠れそう。あなたがかけた3分の魔法のおかげだ。私はあなたの肩に寄り添った。
【140字SS】雨の日の魔法
ついてない。今日は雨が強くなるって天気予報で言ってたから、透明なビニール傘を持ってきたのになくなってる。濡れずに帰れるほど雨模様は弱くない。なんでないの。もういいや、濡れちゃえ。そう思って私は走り出す。せめて家に着いたらバスタオルが迎えてくれるといいな。そんな魔法ないかな。
【140字SS】天体観測
「星を見に行こうよ」
君は突然そう言った。急にどうした?って聞くと「20歳になったから大人っぽいことしたくて」と言う。
やれやれ仕方ない。「車中泊でいい?」には「いい!」と即答。無邪気なもんだ。「天体観測」なんて歌ってる。童謡とはおさらばか。
……途中で寝るなよ、寂しいじゃねぇか。
【140字SS】一心同体
「俺が義足を作ってる理由? そうだな、お前さんRPGをやったことがあるか? RPGってのは、主人公パーティの身体能力と鍛治で強化された武器が一心同体になってラスボスを倒せるようになるだろ。義足もそうだ。アスリートと一心同体になって世界の頂上に立つ。そんな想いを抱いちまったからさ」
【140字SS】生きていたい
15年生きた。
生まれたとき、ご主人は10歳。ずっと一緒に生活してきた。
朝も夜も。暑い日も寒い日も。お風呂も入れてもらったし、旅行にも連れてもらった。
そんなご主人が一日中焼酎を飲み、悲しみに暮れている。充分生きたけど、そんな姿を見るくらいなら、いつまでも生きていたかった。