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Episode 110 「ドルトムントへの出張」

様々な出張の想い出が記憶に残っているが、それらの中でも特に記憶に残っている出張の一つとして、電通という会社(Episode102参照)に勤めていた当時の先輩であったサカタさんという人(先輩)と一緒に行ったドイツへの出張は今でも鮮明に憶えている。10年以上も前の事であるにも関わらず。

ITTF(世界卓球連盟)が主宰する世界卓球選手権がドイツはドルトムントという街で行われたのだ。2012年の事だった。尚、この大会が行われる少し前(数ヶ月前)に、本大会における試合の組み合わせが日本卓球協会から発表されるという事で、サカタさんと私の二人でドルトムントに飛んだ。

我々は、日本を発ち、ドイツはフランクフルトに降り立った(通常、出張の際は(恐らく電通の基本的な規則として) JALを使っていたのだが、この出張に関しては坂田さんの希望によりANAになったことから、JALでのマイルが貯まらずもったいない事をしたと感じた記憶がある)。

羽田を発ち、十数時間を掛け、フランクフルトに降り立った。フランクフルトからドルトムントまでは電車で向かったのだった。電車に乗り込み、我々は各自別の事をしていた。私は(本のタイトルは憶えていないが)読書をしていた。サカタさんは日本から持参したプレイボーイという漫画雑誌を読んでいた。

この様に、各々ゆったりと時間を過ごしていたところ、電車が徐々にスピードを落とし、とある駅で停止した。我々が目指していたドルトムントの駅に到着するべき時間からはかけ離れていた為、我々二入は状況を上手く理解する事が出来ずにいた。

状況を把握できてない二人

そうこうしている内に、電車の乗客が一斉に下車し始めたのだ。車内にはアナウンスが響き渡ってはいたものの、ドイツ語のアナウンスのみで英語では行われず、全く理解する事が出来なかった。

そうそう、正に、WTF

しかしながら、全員が下車していた為、我々二人も他の乗客に続く形で下車した。どうやら、(他の乗客は)反対側のホームに停止している電車に乗り換えている様子だった。

状況を明確に把握することが出来なかった我々二人は、(他に選択肢がないと判断した上で)とりあえず、向かい側に停止していた電車に、他の乗客と共に、乗り込んだのだった。

乗り換えた電車は、我々の不安を一緒に乗せ、ゆっくりと走り出した。我々は、窓越しに過ぎていく景色を追いながら静かに座っていた。どれくらい時間が経過した頃だったであろうか、サカタさんが「あぁ…この景色、なんか憶えてるわ…」と発した。

そう、サカタさんは以前にもドルトムントには出張で来たことがあるとのことであった。その発言により、我々二人は、先ほどの不安及び心配から解放されたのだった。

無事、自分たちが乗っている電車が目的地であるドルトムントに向かっている事を確認(先ほどのサカタさんの発言により)でき、胸をなでおろした。ドルトムントの駅に到着する予定時刻まで、もう少し時間があり、それぞれ、また各自読書に戻ったのだった。

ドルトムント駅への到着予定時刻の少し前から、私は本を閉じ、ソワソワし始めていた。しかし、先ほどのサカタさんの発言もあった為、特には気にする点は見当たらなかった。

しかし、予定時刻が近づいてはいたものの、我々を乗せた電車は全くと言って良いほど、止まる気配を見せなかった。まるで、電車自身が、止まる、という意識を全く持ち合わせていないかの様だった。

そして、とうとう到着予定時刻を迎えても、電車はひたすら走り続けた。我々二人は、どうする事も出きぬまま、そのまま電車に揺られ続けたのだった。

電車よ、止まってくれ。

そして、到着予定時刻を大幅に超えた時、電車がやっととある駅に停車した。我々二人は、とりあえず、その駅で下車し、駅員に質問した。「我々は、フランクフルトからドルトムントに向かうべく電車に乗り込んだのですが、どうやらドルトムントで(電車が)止まらなかったみたいなので、どの電車に乗り換えればドルトムントまで向かう事ができますか?因みに、我々がいるこの場所は、いったいどこですかね?」と。

駅員さんに訊いてみよう

この質問に対する答えは、我々が想像したそれとは異なっていた。「ドルトムントって、ドイツのドルトムントの事??因みに、あなた達、今、ブリュッセル(ベルギー)にいるわよ」という答えが返ってきた。

そう、我々はドイツの国境を越え、なんとベルギーまで来てしまったのである。この話は、約10年以上経った今(2024年)でも、サカタさんと話していると、たまに挙がる話題である。

この様に、予想もしなかったハプニングもありつつ、この出張が終了した数ヶ月後、本戦(世界卓球の大会)の為に再度、ドルトムントに向かった。

やはり中国、強し

この世界大会のテレビ放送はテレビ東京が行っていた為、現地ドルトムントでは、テレビ東京のアテンドという形で我々チーム電通(サカタさんと私)は同行した。

仕事後の一杯をサカタさんと。尚、仕事について口論をした想い出が。

尚、偶然なのだが世界卓球の大会が行われた会場のすぐ隣りに、ドイツのブンデスリーガの名門であるボルシア・ドルトムントというプロサッカーチームの本拠地であるスタジアムがあった。

ボルトムントの街中
ケルン大聖堂にも行ってみた

また、更なる偶然で、元日本代表の香川真司選手が当時ドルトムントに所属していたこともあり、当日チケットを購入し試合を観戦しに行ったのだ。相手チームはどこのチームであったかは憶えていないのだが、今でも鮮明に憶えているのは試合開始前に、機動隊(そう、ヘルメットを被り、ダークグレーの軍服の様な制服に身を纏い、盾と棍棒の様なものも持っていたと思われる)が出動しており、競技場の周りを囲い、異様な雰囲気を醸し出していた。

こんな雰囲気だった。暴動は起きなかったが。

尚、この試合の直前にサカタさんと一緒に、折角なのでKAGAWAと名前の入ったユニフォームを購入して、それを着てスタジアムに向かったのだった。因みにこのスタジアムはやはり日本の多くのスタジアムとは異なった。

少なくとも、私が小学生の頃によく足を運んだスタジアム - そう、陸上競技場と呼ばれる、観客席と芝のフィールドの間に、走るトラックが存在するタイプ – とは異なり、サッカー専用のスタジアムであることから、観客の席とフィールドが一体化しており、(観客席の最前列からは)手を伸ばせば選手に届きそうな距離感であり、選手とファンが一体化する雰囲気を作り出しているスタジアムであった。

ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントのホームスタジアム

そう言えば小学生の頃、浦和レッズの試合を大宮サッカー競技場に(数回)観に行ったが、この競技場もサッカー専用のスタジアムであり、客席と芝のフィールドの近さに興奮を覚えた。

ドルトムントのファンは熱狂的な応援を試合前から行っており、チームのオフィシャルカラーであるイエローで会場が埋め尽くされ、また張り裂けそうな程のチャント(応援、声援、歌、など)で会場はまさに異様なまでの盛り上がりを見せていた。

尚、このスタジアムの観客席の勾配には少し驚いた記憶がある。自分たちが座っている席から、反対側やゴール裏の観客席を眺めていたのだが、あまりのも斜面が急で、前につんのめる形で人が落ちないかと心配になる程であった。

この日、香川真司はゴールを決め、KAGAWAと名前の入っていたユニフォームを着ていた我々(そして、アジア人である我々は)は、周りに座っていた観客から「シンジー!!シンジー!!」と香川選手のファーストネームを叫ばれ祝福を受けたのだった。

実際に座っていた席から

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