脳科学で創造性の高い人を予測できるのか?〜クリエイティビティとニューロサイエンス〜
クリエイティビティの高い人の特徴とは何か?特徴や特性がわかれば、創造性の高い人を採用し、協業や友になれる判断基準になりそうだ。
多様性の観点、Capability、Mindset、Competencyなど様々な観点で、人材採用するが、高創造性を軸に人材を採用したいエンジニアリングや、デザイン企業もいるだろう。
神経科学や脳科学の観点で、高いクリエイティビティを見抜くことが可能か、何かと相関性があるのかをリサーチしたので共有します。
Executive summary
・fMRI(functional MRI)で脳の部位の結合状況(血流)を調べると、その人がクリエイティビティが高いかどうか予測ができる
・血流分析の結果、クリエイティヴな人の脳の特殊な使い方が判明した
・「拡散的思考」能力が、クリエイティビティと相関する
・右脳か左脳か論ではなく「脳全体の複合的」利用が肝で、複数の脳ネットワークが絡み合っている
・クリエイティブな人は(趣味や経歴などで)複数ネットワークを同時使用することに慣れている
・アイデアが湧きやすい場所があり、ネガ・ポジ感情や幸福はクリエイティビティに影響有り
・高創造性の人は新しいアイデアを生むために、脳の部位を複合的に、利用部位をスイッチングしている
以下、途中まで脳の部位や役割など、耳馴染みのない話が続くので、結論だけ知りたい方は後半の事例まで飛ばすと良いと思います。
背景
私が追求したいテーマが
・どういう人が「高いクリエイティビティ」を持っているのか?
・どういう人なら「高い創造性」を「再現性高く実現」可能なのか?
・そういう人たちに特徴はあるのか?
・どうすれば、クリエイティヴになれるのか?
この辺の疑問を、脳科学や神経科学の観点から調査
今回はクリエイティブな「人」に着目し、リサーチした。
神経科学を学ぶ前提として、脳の要素からまとめます。
脳の要素
脳は「脳(神経)細胞」から構成されている。その数は、大脳で数百億個、小脳で千億個、脳全体では千数百億個にもなる。その脳細胞たちは、電気信号を発してお互いに情報をやりとりしている。
・一つの脳細胞から長い「軸索」と、木の枝のように分岐した短い「樹状突起」が伸びている。
・これらの突起は別の脳細胞とつながり「神経回路」を形成
・「ニューロン」とは、細胞体と軸索と樹状突起からなる脳細胞
(引用:理研)
・遺伝情報が書かれたDNAを含む「核」
・エネルギーをつくり出す「ミトコンドリア」
・他の細胞との大きな違いは、細胞体から突起が出ていること
・細胞体から出て複雑に枝分かれしている「樹状突起」は、ほかのニューロンから電気信号の情報を受け取る“入力アンテナ”の役割を果たす。
・「軸索」が“出力装置”の役割を果たし、樹状突起が受け取った電気信号は、軸索を通り、次のニューロンに伝達
・ニューロンとともに脳を構成しているもう一つの細胞が「グリア」
・ヒトではューロンの数の10倍のグリアが存在
・グリアは、ニューロンに栄養を供給しその働きを助けている。
・最近の研究で、グリアは神経成長因子や栄養因子などを分泌し、ニューロンの維持や再生に重要な役割を演じている
脳は6階層
脳の巨大なネットワークは、一見、無秩序に張り巡らされているように思われるが、ニューロンは種類ごとに同じ階層に集まり、全部で6層の層構造を形作る。つまり、この秩序だった神経回路により、情報の伝達はより効率的となり、学習、記憶、運動、認知などの高度な情報処理が可能。(引用:理研)
脳の部位と役割
大脳:脳全体を覆うように存在し、脳の部位で最も大きい。総脳量の85%を占め、思考や感情などヒトの人間らしい機能を司っている。小脳:大脳に次いで大きく、総脳量の10%を占める。身体全体の平衡を保ち、知覚と運動機能を司る。表面は細かなひだ状になっている。3対の小脳脚がそれぞれ脳幹の中脳、橋(きょう)、延髄と結びついている。脳幹:中脳、橋(きょう)、延髄で構成される。脳の中央下部に位置し、生命の維持に関わる機能を司る。脊柱管内を通る脊髄へとつながっている。大脳との間に視床や視床下部などで構成されている「間脳」があり、広義には脳幹に含まれることがある。出典:脳科学メディア
出典:https://www.smilenavigator.jp/tougou/about/science/
運動野や知覚野以外のほとんどの部分は連合野とよばれる部分でしめられています。連合野では周りの大脳皮質と関連しあって、認知・判断・言語・記憶・学習・創造といったヒトの高度の精神機能を営むと考えられています。
ここでは概要のみにするが、詳細は下記に詳しい
神経伝達物質とは何か
“出力装置”である軸索の末端は「シナプス」と呼ばれている。このシナプスには数万分の1mmほどのすき間「シナプス間隙」があり、軸索を伝わってきた電気信号は、実は、このすき間を飛び越えることはできない。
では、どのようにして、電気信号はシナプスを伝わるのだろうか。
電気信号が伝わってくると、シナプスにある小胞から「神経伝達物質」という「化学物質」がシナプス間隙に分泌される。神経伝達物質が、次のニューロンの細胞膜にある受容体に結合すると、電気信号が生まれ情報が伝達される。このシナプス間隙の伝達にかかる時間は、0.1~0.2ミリ秒ほど。神経伝達物質は、グルタミン酸、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、β-エンドルフィン (笑うと出る)など、現在までに数十種類が発見されている。
神経伝達物質の種類とは
神経伝達物質は大きく分類すると以下の3つになる。
1:アミノ酸(グルタミン酸、γ-アミノ酪酸、アスパラギン酸、グリシンなど)
2:ペプチド類(バソプレシン、ソマトスタチン、ニューロテンシンなど)
3:モノアミン類(ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン)とアセチルコリン
その他一酸化窒素、一酸化炭素などの気体分子も神経伝達物質様の作用を示す。(引用:wikipedia)
Wikipediaで調べると、実に色々な神経伝達物質要素がある。
創造性を司るメカニズムの解明
創造性はリラックス時の瞬きの回数(瞬きは注意をコントロールしている)と関連があると報告されており、瞬きの回数はドーパミン生成を反映していることから、創造性とドーパミンの活動に関連があることが報告されている。
1) まばたきは注意をコントロールしており、創造性課題を思考している最中のまばたきによって、創造的思考が影響を受ける。
2) 創造性課題の成績は、脳内のドーパミン機構と関連しており、ドーパミンの生成効率が良いほど、拡散的思考が得意である。
1点目は創造性に影響を与える一過性の効果であり、2点目は創造性に影響を与える定常的な効果である。
下記書籍の医師樺沢 紫苑氏によれば、エンドルフィンは、幸せ感を与えてくれて、脳を休め、注意・集中力・記憶力・創造性など、脳の機能を高める。
神経化学物質は、大いに創造性と関係がありそうとわかる。
ここまでで、おおよその、脳の要素、役割、神経物質についてみてきた。さて、以降は実際に脳の研究結果のファクトを集めていく。
神経科学とクリエイティビティ
「よりクリエイティヴな人達は、通常は連携しない脳のネットワークを同時に働かせることができます」と解説するのは、ハーヴァード大学のロジャー・ビーティ博士だ。脳神経活動と脳を巡る血流は非常によく連動しているという知見から、研究チームは被験者がモノの独創的な使い方を考えている間に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で脳の血流状態を測定した。ここで試されたのは、既知の情報から広く考えを巡らせて新しいものを生み出す「拡散的思考」と、呼ばれる能力だ。興味深いことに、この実験で「より独創的だ」と評価された被験者たちは、クリエイティヴな経歴や趣味がある傾向がみられたという。つまり、ここで行われた拡散的思考能力の実験は、一般的なクリエイティヴィティを推し量るうえで有用だという証しだ。ビーティはこの研究で、クリエイティヴィティにまつわる「右脳・左脳」神話を払拭したかったのだという。拡散的思考能力においての脳スキャンは、確かに右脳か左脳に偏ることはなく、脳全体の複合的な性質を示している。少なくとも今回の結果で、クリエイティヴィティには、複数の脳ネットワークが絡み合っていることがわかった。ときに突飛とも思えるアイデアを出してくるクリエイターは、これらのネットワークを同時に使用することに慣れているのだ。
彼らはこれについて、創造性の高い脳のネットワークに関与する、3つの重要なサブネットワークを挙げている。
1つめは「デフォルト・モード・ネットワーク(Default mode network)」で、特に思考、関心、注意を伴わない、安静時の「基礎状態」とも呼べる脳の活動だ。これは空想に耽ったり、白昼夢を見るときなどに活動的になるといわれ、独創的なアイデアを考えつくためのブレインストーミングで重要な役割を果たすと研究者たちは考えている。
2つめは「実行機能ネットワーク(Executice control network)」。その名の通り、思い描くアイデアに集中したり、それをコントロールしたりする場合に活動する脳のネットワークだ。クリエイティヴなアイデアが実際に機能するかどうかを評価し、また目標に合わせて修正を加えたり、切り捨てるかどうかを判断する上で重要になるという。
3つめは「顕著性ネットワーク(Salience Network)」「デフォルト・モード・ネットワーク」でのアイデア生成と、「実行機能ネットワーク」でのアイデア評価を交互に行うために重要だとされている。いわゆる、ふたつのネットワークを交互に切り替えるスイッチのような役割がある。
興味深いのは、この3つの脳ネットワークは、通常は同時にオンラインにならない特徴があるところだ。「これらのシステム間の同期性は、クリエイティヴィティにとって重要である。より柔軟で、より創造的なアイデアを生み出せる人たちは、通常は連携していないネットワークを働かせ、オンラインにすることができるのでしょう」
要するに、集中君(executice control network)+ボンヤリ君(default mode network)が並走し、常にスイッチング状態(「顕著性ネットワーク(Salience Network)」を、並走させている結果、クリエイティブな人になっている。
ヒントは企画の賢人、小山薫堂、秋元康の二人の分析にあるのでは無いだろうかと思いこのノート「アイデアの作り方」にまとめた。
結論は、常に新しいアイデア、面白いこと、良い企画がないと探索しているのが共通項だった。秋元さんによれば、企画のリュックサックにストックしているイメージらしい。つまり、
・集中君(executice control network)→意図的
・ボンヤリ君(default mode network)→無目的
・が、常にスイッチング状態(顕著性ネットワーク(Salience Network)
が日常になっている様だ。そして「好きだから勝手にやっている」だけで、本人らはさして凄いことだと思っていない節がある。
fMRIでの脳の血流と創造性の実験結果
実際にWiredで記載内の下記論文を読んでみた。
概要を訳すと以下記載あり。
ネットワーク神経科学の手法を用いて、脳全体の中で各機能の様々な結びつきとして、個々の創造的思考の能力をモデル化しました(!)。研究では、デフォルト、顕著性、および実行システム内の領域に関連する、創造的能力に関連付けられた脳ネットワークを特定しました、これは、反対に説明されることが多い神経回路です。オリジナルのアイデアを生成する人の能力は、こ4つの独立したデータセットで、ネットワーク内の機能的な接続の強さから確実に予測できることを示しています。
要するに、創造性の高低の人を研究した結果、脳の部位同士の結びつきの強さから、創造性の高い人を予測できるということだ。
HIgh-CreativeとLow-Creativeの脳の利用差異
本研究は、特定の脳接続プロファイルが、高創造的思考能力を特徴付けるかどうかを発見し、このネットワーク内の機能的接続の強さから個々の創造性を確実に予測できるかどうかを判断することを目的としています。
実験では、発散的思考、比喩的な言語の生成、音楽など、創造的な認知と芸術的パフォーマンスを評価するさまざまなタスク中に、複数の分散した脳領域にわたる神経活動の協調パターン(つまり、機能的接続)を調べている。(即興、詩の作曲、ビジュアルアートの制作)
研究の仮説:デフォルト、エグゼクティブ、および顕著性の脳システムを同時に関与させる能力の個人差が、創造的思考能力の神経生理学的マーカーを提供する可能性があると仮定しました。
脳の接続モデル(つまり、高創造性ネットワークと低創造性ネットワーク内の機能的結合の強さ)をテストするために、リーブワンアウト相互検証分析(つまり、内部検証)を採用。(これは新規参加者の創造的思考能力を確実に予測)検証では、創造的思考能力の個人差は、タスク関連の脳ネットワーク内の機能的接続の強さに基づいて、新規参加者で確実に予測できることが確認されました。
要約すると、ぶっちゃけ創造力が高い人って予測できるの?、と仮定して検証したら、脳神経ネットワークの結びつき接続の強さで予測ができる。とわかったという話です。上のA図の通り、高創造性の人は、Aの様な脳の部位の結びつきをしていて、低創造性の人は、Bの様な脳の部位の結びつきで施工しているということ。
逆に考えて、Aの様な結びつきで物事を考える人であれば、創造性が高いであろう。ということがわかったということ。
高創造性ネットワークの神経解剖学は、創造的認知の最近の研究で報告された機能的接続のパターンと非常に似ています。具体的には、3つの大規模な脳ネットワークのハブに対応する有意に相関する機能的接続の最大数を示す領域がデフォルトである(デフォルト(後帯状皮質:辺縁葉の上部)、エグゼクティブ(右背外側前頭前皮質)、および顕著性(左前島))であることを発見しました。創造性などの複雑な構成は、脳全体に関与する同様に複雑な神経メカニズムの産物である可能性があります。(研究結果)
ここまでをまとめておこう。functional MRIのおかげで、脳科学と創造性に関して、以下が分かった。
・脳神経活動と脳を巡る血流は非常によく連動している
・血流の検証から、既知の情報から広く考えを巡らせて新しいものを生み出す「拡散的思考」という能力が重要と判明
・拡散的思考能力の実験は、クリエイティビティを推し量るうえで有用
・拡散的思考能力においての脳スキャンで判明したのは、右脳か左脳という考え方では「脳全体の複合的な性質」
・クリエイティビティは、複数の脳ネットワークが絡み合っている
・突飛なアイデアを出すクリエイティブな人は、(趣味や経歴などで)複数ネットワークを同時使用することに慣れている
要するに、脳を分析すればクリエイティブとわかる。では、どうやってクリエイティブなアイデアを出せる様になるかを深堀たい。
アイデアはいつ生まれるのか?
アイデア創出には、どこで考える場所にヒントがありそうだ。
(北宋仁宗から神宗期の政治家、詩人・文学者、歴史学者)である欧陽脩「帰田録」の言葉、「余、平生作る所の文章、多くは三上に在り。 乃(すなは)ち馬上・枕上(ちんじゃう)・厠上(しじゃう)なり」》によれば、文章を考えるのに最も都合がよいという三つの場面は、 馬に乗っているとき、寝床に入っているとき、便所に入っているとき。 一。
現代風に言うと、移動中(バス・電車・飛行機)、ベッド・布団、トイレだ。なんとも思い当たる節がある。中華の歴史の偉人も同じことを言っているなら、一定の再現性がありそうだ。場所はわかった、次は閃き方だ。
コロンビアMBA流 「効率的に閃く方法」
世界でも屈指の難関コロンビア大学のMBAコースとエグゼクティブコースで大人気の授業、ウィリアム・ダガンによると、
軍事戦略は、ビジネス戦略の原点である。「人生をどう生きるか」という現代人の人生戦略も、軍事戦略から生まれた。
軍人や学者は長いあいだ、目の前の状況に対処するためのアイデアをひねりだそうとして頭を悩ませてきた。定義上、戦略はつねに新たな問題に対処しなければならない。戦略とは未来の行動を指し示すものであり、未来は必ず過去とは違うからだ。そのため戦略では、絶えず新しいアイデアが求められる。アイデアを閃くには以下4つのステップが必要と言う。
第1ステップ:「歴史の先例」を集める
第2ステップ:「オープンマインド」になる
第3ステップ:「突然のひらめき」をつかむ
第4ステップ:「決意」をかためる
この4ステップを踏むことで、ひらめきをもっとも効率的に生じさせる方法を説いているのです。詳細は以下
しかし、ここで問題がある、クリエイティブなのに生産的・効率的に。という二律背反の概念が成立するのか?イケてることを量産するって矛盾していないだろうか。
クリエイティビティと 生産性をどう両立するべきか?
ハーバードビジネスレビューにこの様な問題提起がある。
ビジネスパーソンは生産性のとりこだ。集中力を研ぎ澄まし、時間内で「やることリスト」を一つでも多く消化する方法を模索している。ただし、それによって失われるのが創造性だ。創造性と生産性は対極の状態から生まれるものと指摘。生産性の追求が度を越すと創造性を殺してしまう。
脳のデフォルト・モードという概念が生まれたのは、1970年代、たとえ休憩しているときでも、脳の中では大規模な神経活動が起きていることが観察された際だった。クリエイティブな思考がもたらす独創性を本当に大切に思うなら、生産性と創造性はしばしば対極に位置することに気づいてもよい頃だ。生産性は集中することによって、創造性は脱集中によって生まれるのだ。
やることリストを取り外し、デスクから離れて、通勤時はポッドキャストのスイッチを切ろう。毎日、無目的に過ごす時間をつくろう。脳にリラックスする時間を与えることが、最高のアイデアをもたらす。創造のスキルとは、よく知っているアイデアとアイデアの間に新しいつながりを見つける能力であり、「(新しい)関連性に気がつく能力」
無目的に集中する時間こそが創造性を発揮し、新しいつながりを見つけるということだ。ここでもキーワード「つながり」という言葉が出てくる。面白いのは上記記載の脳の部位の結びつきの具合・新結合がクリエイティブな人の脳の血流状態で、うまくスイッチングしている状態だった。
ジェームスヤングが記載した名著「アイデアの作り方」でも、アイデア同士の新結合が大事と記載している。
イノベーションで著名なシュンペーターも同じことを言及している。
アイデアやクリエイティビティは物事や考え方の結合だけでなく「脳内でも日頃とは違う脳の部位同士が【新結合】」していた。アイデアも脳の部位も新結合しているのだ。閃いた瞬間の電球がぴーん!となる感じがまさにこれ。
さて、より集中し創造性を高めるために、脳科学や神経科学以外の観点の考え方もあるということを深耕しよう。
不幸なほうが人の創造性は豊かになるのか
コロンビア大学や豪ニューサウスウェールズ大学の研究によれば、
人間の創造性は「不幸」となんらかの関係がある。ゴッホは、幸せとはいえない人生を辿ったが創造的だったし、アリストテレスは紀元前4世紀に、「哲学や詩、芸術や政治にすぐれた人はみな(ソクラテスやプラトンを含めて)、憂鬱質的な気質があるし鬱病に悩んだ」と記述している。コロンビア大学ビジネススクール教授のModupe Akinolaモデュープ・アキノラは、このことをストレスホルモンと憂鬱な感情を用いて、裏付ける実験を実施。
原典:2008年『創造性のダークサイド』↓
研究の結果、憂鬱な気持ちは、なぜ芸術性を高めるのか?が判明。
これは情緒と認知の絡み合いが関係している。
悲しさはわれわれを、より注意深くし、細部に関心をもたせ、焦点を合わせやすくする。怒りや悲しみは、「要求度の高い状況に最も対処しやすい情報処理戦略」を発達させる
つまり、自分たちの感情が認識を変えて、人間の集中力と熱心さを高め、より細かなことに注意が向くようにさせる。対して幸福はその逆の効果をもたらす。
一方で、気分が良いときには「ひらめきの瞬間」(moment of insight)が出やすい傾向も20%高まる)。
これはパラドックス的な感じだが、結局は、幸せでも、閃くし、ネガティブな感情でも閃く。
人間は奥深いのでより研究が必要だが、しかし、感情の上下は大いに利用した方が良いことがわかった。
泣いて、笑って、感動して、よりハードなことにも挑戦(非難・批判されて嫌な気持ちになるから)すれば、より閃き体質になるだろう。
幸福は創造性が3倍という研究調査は下記を参照↓
まとめ
クリエイティブで、高い創造性の人は新しいアイデアを生むために、脳の部位を上手に複合的に使って、利用箇所をスイッチングしていることが、脳の血流を調査するfMRIのおかげで判明した。
意識的に利用しているのか、アイデアを湧くためにトレーニング・好きだから発想を続けたかはわからないが、fMRIで脳味噌を調べると、その人がクリエイティビティが高いのかどうかがわかる。
現実問題として、脳をスキャンするために、ドーナツ型のMRIの機械に入ろうぜ!という採用面接は現実離れしており難しいので、テクノロジーの進化を待ちより一般消費者に近いデバイスが出るのを待つか、ブレストや対話の中から、知性や創造性を共有するダイアログをしていくのが現実的だ。
目的を持ったセッション・無目的なダイアログ、双方を利用して、場所や時間、制限条件を変えながら、やりとりを重ねると、双方の創造性の理解に役に立つだろう。
面白かったのは、脳の部位の新結合がアイデアを沸かせる根源だったことがとてもスッキリしました。
クリエイティビティを高くしたい方にお使いいただければと思います。
ダクトがない部屋にクーラーをつけて快適にした話はこちら↓
参考文献
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